著者
吉松 孝 池田 美奈子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.4_33-4_42, 2021-03-31 (Released:2021-03-30)
参考文献数
24

米国・中国のシットコム番組の「笑い」がデザインされる際の表現においてどのような差異があるのかを、言語的特性の視点から分析した。米中で代表的なシットコム6 番組を分析対象とし、ラフ・トラックの性質について、「未熟性とのギャップ」「実在と虚構の混在」「エネルギーの移行」「表意と推意のズレ」「音声的要因」「先天的差異、属性差異の再認識」という大分類と、さらにシーン内容に即し詳細に作成した小分類を使用し、ラフ・トラックの数のデータ分析とテキスト分析を行った。テキスト分析では、発音されるべきところと違う発音のされ方や声真似など、言語や音声を契機として笑いが起こされたと考えられる箇所を、各番組の初めに出てくるシーンから、無作為に取り上げた。分析の結果、音声的要因により発生する笑いのポイントの割合は、両国とも3%-4%程度であり、差異として、米国シットコムでは「音の高低」による比率が高く、中国では、「同音異義語、似た音での聞き間違い」での比率が高いことが示された。
著者
吉松 孝
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.333-342, 2023 (Released:2023-12-26)
参考文献数
33

A total of 10 highly representative sitcoms from the United States and China were selected, and questions were asked about how the laugh track insertion point (L.I.P) occurred due to the factor of “mixing reality and fiction’’, and what kind of expression between the American and Chinese sitcoms. Clarified if there was a difference. As a result, it was found that there were many points of occurrence of laugh tracks caused by the major category item “mixture of reality and fiction” in China with a significant difference. In terms of small classification items, the United States has a relatively higher ratio of “insertion of real things into topics,” “logic justifying strange obsessions,” and “serious discussion of fiction” compared to China. In China, the ratio of “exaggeration”, “becoming serious after being lied to”, “lieping and making mistakes”, “strange proposal”, and “successful operation” was shown to be relatively high.
著者
吉松 孝 池田 美奈子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第68回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.286, 2021 (Released:2022-02-23)

筆者は,これまでの研究で,米中シットコムの笑い(ラフ・トラックの挿入ポイント)と言語的特性について,どういった要因が,シットコムの笑いの挿入ポイントの差異に影響を与えているのかを述べた.しかし,米中シットコムの笑いや作風の差異の背景は,言語的特性のみではない.とりわけ,制作者や視聴者といった国民性としての思考習慣(考え方)の違いも重要な要因と考えられる.そこで,本研究では,思考習慣を複数の視点に分け,米中シットコムのテキストを,分析的思考,全体的思考,演繹性,機能性,低コンテクスト,高コンテクストがどこに見られるかという視点から分析した.その結果,米国シットコムには,演繹性,分析性が見られ,中国シットコムから,帰納性は1例しか見られなかった.一つの事柄から分析的に話を展開していくのは,シットコムの特性でもあり,分析しながら話を進めていくような傾向は米中シットコムどちらにも見られた.思考習慣に関する先行研究では,中国人は分析的でないとされてきたが,中国シットコムでは,シットコムの特性から,分析的と解釈されるようなテキストも用いられていることが分かった.
著者
吉松 孝 池田 美奈子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.3_25-3_34, 2022-01-31 (Released:2022-02-05)
参考文献数
16

日本人被験者の米国と中国のシットコムに対する面白さの認識にどのような違いが生まれるのかを明らかにする。質問紙を用いて調査を行い、データ分析からどこに違いが生まれるのかについて可視化し、内容分析からなぜそのような違いが生まれたのかについて考察を行った.また,面白さを高く認識できた箇所と、面白さをほとんど認識できなかった箇所を抽出し、テキストの内容や感想から理由や背景を探った。 その結果、日本人被験者は、米国と中国シットコムを比較して、米国シットコムの方に面白さを高く認識し、また、面白さを高く認識できるラフ・トラックの挿入ポイントも米国作品の方が多かった。また、被験者は米国シットコムに対し、テンポが良い、下品、友人間の会話が多いという印象や感想を持ち、中国シットコムに対し、分かりにくい、動作が面白い、家族間の会話が多いという印象や感想を持つことが分かった。
著者
吉松 孝 池田 美奈子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第66回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.2, 2019 (Released:2019-06-27)

「シットコム・コメディ番組」という虚構空間に於いて、人名や地名に「実在する固有名詞」が挿入されるケースが見られる。著名人本人が、その著名人の名前で登場するカメオ出演のみならず、会話中に「実在人物」「ニュース性の高い話題」を挿入させる表現技法である。当技法は、米国 Big Bang Theory、中国「愛情公寓」ともに使用されており、番組に俯瞰性を与え、笑いの生成に一定の効果を生んでいると考えられる。笑いの先行研究における4つの理論を元に、笑いが起きる仕組みを7つの大分類項目、67の小分類項目を設定した。分類に、両作品のスクリプトを当てはめた結果、事前に区分された項目「実在人物の会話の話題への挿入」を中心に、主題を説明できる要因が見られる。「固有名詞の挿入」は、直接笑いを取れる効果のあるものと、設定レベルに影響を与えるものに分けられる。本研究は、シットコム番組に於ける「実在固有名詞」の持つ機能と効果についての考察と、米中作品に挿入される実在固有名詞の属性の共通性と差異の検討を目的とする。番組に「さらなる虚構」や「現実」が出現することで、メタ構造を与え、笑いのバリエーションが増加するのではないかという仮説を検証する。