著者
長尾 毅彦 井田 正博 元良 健一 新井 健史 吉澤 寿 小林 美紀 有馬 留志 石川 みずき 片山 泰朗 横地 正之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.514-518, 2006-12-25 (Released:2009-06-05)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

目的:脳梗塞急性期において, Susceptibility-Weighted Image (SWI)を用いた高分解能3D MR Venographyにより,造影剤を使用しない脳循環評価を試みた.方法:発症24時間以内の皮質を含む急性期脳梗塞21例を対象とし,3D FLASH法TE=40msecで撮像した,撮像時間は約5分30秒.この方法は,脳組織中のoxy-Hbと静脈のdeoxy-Hbの磁化率差を強調させた撮影法である.臨床情報を伏せた状態で,塞栓子による血管閉塞部位,静脈灌流障害の有無をSWI上で読影し,他の撮像方法と比較した.結果:17/21例で静脈灌流異常によるIncreased BOLD sign(IBS)を認め,misery perfusionを反映する所見と考えた.IBS所見は,T2強調画像で血管性浮腫を認める時期には消失した.13/21例で,動脈主幹部に低信号を呈する塞栓子を検出しえた.結論:脳梗塞急性期において,SWIは非侵襲的に頭蓋内の灌流状態を評価可能であり,その所見はmisery perfusionを反映するものであると考えられるため,SWIで異常を認めた症例には,perfusion imageの適応を検討すべきである.同時に,この撮像法は塞栓子検出やmicrobleeds評価に関しても有用と思われた.
著者
畦地 拓哉 平井 由児 上原 由紀 笹野 央 吉澤 寿宏 松本 博志 青嶋 瑞樹 内藤 俊夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.649-654, 2019-09-20 (Released:2020-04-03)
参考文献数
19

自然弁の感染性心内膜炎(IE)のempiric therapy としてEuropean Society of Cardiology(ESC)ガイドライン2015 ではampicillin(ABPC),cloxacillin(MCIPC),gentamicin(GM)の3 剤併用が推奨されている.本邦では黄色ブドウ球菌用ペニシリン製剤はABPC/MCIPC 合剤(ABPC/MCIPC)のみであり,これまでにIE のempiric therapy を目的としたABPC/MCIPC 投与例は報告されていない.本研究では, 2015 年1 月から2017 年8 月までに,当院でABPC/MCIPC が投与された症例のうち,改訂Duke 診断基準に基づき,自然弁によるIE と確定診断された症例を対象に,ABPC/MCIPC の感受性・安全性・アウトカムについて検討した.なお,18 歳未満の症例及びABPC/MCIPC 投与量が24g/日未満の症例は除外した.対象は8 名(男性5 名,女性3 名),年齢は34~76 歳(中央値68.5 歳),基礎疾患は自己弁弁膜症6 名,糖尿病3 名であった.対象患者の血液培養からmethicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)2 例,viridans group streptococci(VGS)属3 例,その他3 例を検出し,8 例中7 例ではABPC 又はMCIPC に感性を示した.Definitive therapy に変更するまでの投与期間は2~6 日(中央値3.5 日)であり,この期間において有害事象による中断はなかった.MSSA 2 例は中枢神経病変を合併し,definitive therapy 目的にABPC/MCIPC が継続された.うち1 例は投与開始12 日目に先行する皮疹と急性腎不全が出現しvancomycin+ceftriaxone に変更となった.IE 患者のempiric therapy として数日間のABPC/MCIPC 24g/日投与は血液培養から検出された病原体全てに感受性を示し,有害事象は認められなかった.またMSSA はIE の代表的起因菌であり,本邦でも中枢移行性が良好な黄色ブドウ球菌用ペニシリン製剤の必要性が再認識されるべきであると考えられた.
著者
吉澤 寿
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.116-121, 2007-09-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
19

神経性食思不振症(AN)を基礎疾患に有する18歳の女性の症例において,比較的稀な消化管壁内に多発性の気腫を示した腸管気腫性嚢胞症(PCI)の症例を経験したので報告する。ANに伴う自己誘発性嘔吐,無月経,甲状腺機能低下を示し,慢性的な便秘も有していた。腹部膨満感が出現したため,某院救急外来を受診した。腹部単純X線写真,腹部CT検査にて,腹腔内遊離ガスと上行結腸から脾彎曲部に線状の腸管壁内ガス像を認め,PCIと診断され,高圧酸素療法(HBO)目的で当院紹介入院となった。安静,絶飲食とし,1日170分,週5日間のHBOを開始した。自覚症状の軽減を認め,第6病日より飲食を再開した。腹部単純X線写真にて腸管壁内ガス像の改善を認めたため第17病日退院とし,外来にて1日85分,週5日間のHBOを実施した。HBO開始1ヵ月後の腹部単純X線写真にて病変は消失し,HBOを終了した。本例は,高度の便秘症と自己誘発性嘔吐から腸管内圧上昇をきたし,PCIを発症したと推察された。