著者
大松 慶子 石井 良和 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.68-80, 2015-09-25 (Released:2017-10-27)

我が国の作業療法士が使用する意味のある作業,価値を置く作業,重要な作業など(以下,意味のある作業と略)の内容と特性を,内容分析を用いて検討した。対象は国内で1995年度から2010年度に発表されたこれらの言葉を用いた26件の事例報告論文である。結果生成したのは《自ら意思表示した》《興味がある》《生活史の中にある》《心身機能と行動の改善を促す》《他者との関係に変化をもたらす》《希望をもたらす》《新たな自分につながる》の7カテゴリーであった。作業療法士はこのうち《自ら意思表示した》《生活史の中にある》《新たな自分につながる》のどれかのカテゴリーを含む作業を,意味のある作業とみなす傾向があると考えられた。意味のある作業は,クライエントの自分に対する理解と人生にかかわり新たな自分を再構築する,作業療法士が援助する作業であると考えられた。
著者
有川 真弓 繁田 雅弘 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.170-177, 2006
参考文献数
31

感覚統合療法(Sensory Integration Therapy.以下SIT)の効果研究の現状を把握し,今後の研究で望まれる標的集団や方法を検討することを目的とし,わが国で発表されたSIT効果研究論文のレビューを行った。医中誌Webにて検索語を感覚統合として検索した結果,121論文が該当した。そのうち,SITを行っていない69編,総説や解説14編,会議録や海外の報告5編,対象が小児以外の6編,効果の記載がない4編,行動の観察のみで検討した10編を除外し,13編を対象に検討した。その結果,レベルIVおよびVのエビデンスが示され,SITは「行うよう勧められるだけの根拠が十分でない」(勧告C)にあたると考えられた。今回検討した論文では,学習障害などの疾患で効果があったとする見解に統一が見られ,今後は,まずはこれらの疾患を対象に,研究デザインを工夫した,レベルの高いエビデンスの蓄積が望まれる。
著者
清水 準一 長内 さゆり
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.177-183, 2014-03-25

目的:2012年に診療報酬上評価された緩和ケアについて専門性の高い看護師(NHPCS)が行う訪問看護師との療養者宅への同行訪問の実施可能性を地理情報システム(GIS)により検討した。方法:都道府県別にNHPCSの分布や養成機関の位置との関連を検討し,NHPCSが少ない都道府県について,所属医療機関と訪問看護ステーションの位置等の関連をMANDARAにより分析した。結果:老年人口あたりのNHPCSの分布は都道府県間で2.6倍の差があり,近隣にがん関連認定看護師養成課程の定員が多い県で多くなっていた。NHPCSが少ない県では,訪問看護ステーションの半径10km圏内にNHPCSが所属する医療機関がない割合が高かった。考察:GISの利用によりNHPCSと養成機関の偏在や実施困難な地域の存在が明らかになり,国内及び都道府県内の人的資源の均てん化のため同行訪問の取り組みの必要性が示唆された。
著者
長谷 龍太郎 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.256-267, 2007-03-25
被引用文献数
1

作業療法は治療における推論を重視し,クリニカルリーズニングとして教育している。この概念の実践場面における利用についての文献研究を行った。我が国における1983年から2005年までの検索では,クリニカルリーズニングに言及した論文は4篇あり,精神障害と発達障害の症例に対する介入変更をリーズニングの類型から分析したものと教育方法の影響に関する調査研究であった。欧米における1956年から2005年までの検索の結果,該当した論文数70編であった。 93年までの論文はクリニカルリーズニングの概念や類型を議論するものであって,それ以降は新たなクリニカルリーズニング概念の概念枠組みは提示されておらず,従来のものが継続して用いられていた。論文は,作業療法の教育と臨床に関するものが過半数をしめており,クリニカルリーズニングが作業療法教育と臨床に関連していることが示されていた。特にPBLやEBPにおいてクリニカルリーズニングが重要であると考えられていた。一方で作業療法の教育および臨床に関連する論文を領域別に比較すると,精神障害領域の論文が少なかった。
著者
有川 真弓 繁田 雅弘 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.170-177, 2006-12-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
31

感覚統合療法(Sensory Integration Therapy.以下SIT)の効果研究の現状を把握し,今後の研究で望まれる標的集団や方法を検討することを目的とし,わが国で発表されたSIT効果研究論文のレビューを行った。医中誌Webにて検索語を感覚統合として検索した結果,121論文が該当した。そのうち,SITを行っていない69編,総説や解説14編,会議録や海外の報告5編,対象が小児以外の6編,効果の記載がない4編,行動の観察のみで検討した10編を除外し,13編を対象に検討した。その結果,レベルIVおよびVのエビデンスが示され,SITは「行うよう勧められるだけの根拠が十分でない」(勧告C)にあたると考えられた。今回検討した論文では,学習障害などの疾患で効果があったとする見解に統一が見られ,今後は,まずはこれらの疾患を対象に,研究デザインを工夫した,レベルの高いエビデンスの蓄積が望まれる。
著者
國方 弘子 豊田 志保 矢嶋 裕樹 沼本 健二 中嶋 和夫
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.30-37, 2006-06-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
17
被引用文献数
5

本研究は,地域で生活する統合失調症患者を対象とし,精神症状が自尊感情を規定するのか,それとも自尊感情が精神症状を規定するのか,それら因果関係モデルのデータへの適合性を明らかにすることを目的とした。分析対象は,横断的研究には109名,縦断的研究には61名のデータを用いた。精神症状の測定には,信頼性と妥当性が支持された9項目版BPRSを用いた。横断的研究の結果,反応が低下した症状である「鈍麻・減退因子」が,自尊感情と有意な負の関連があった。縦断的研究の結果,1年後の追跡調査時点において9項目版で測定した精神症状は自尊感情に有意な負の効果を示し,時間的先行性を検証できたことから,精神症状が自尊感情に影響を及ぼすといった因果関係が示された。以上より,統合失調症患者の鈍麻・減退に伴う感情をサポートすることは,彼らの自尊感情を回復させることに繋がると示唆された。
著者
大松 慶子 石井 良和 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.68-80, 2015-09

我が国の作業療法士が使用する意味のある作業,価値を置く作業,重要な作業など(以下,意味のある作業と略)の内容と特性を,内容分析を用いて検討した。対象は国内で1995 年度から2010 年度に発表されたこれらの言葉を用いた26 件の事例報告論文である。結果,生成したのは《自ら意思表示した》《興味がある》《生活史の中にある》《心身機能と行動の改善を促す》《他者との関係に変化をもたらす》《希望をもたらす》《新たな自分につながる》の7 カテゴリーであった。作業療法士はこのうち《自ら意思表示した》《生活史の中にある》《新たな自分につながる》のどれかのカテゴリーを含む作業を,意味のある作業とみなす傾向があると考えられた。意味のある作業は,クライエントの自分に対する理解と人生にかかわり新たな自分を再構築する,作業療法士が援助する作業であると考えられた。
著者
出貝 裕子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.76-85, 2014-09-25

英文献の認知症ケアにおけるcomfortの特徴を明らかにすることを目的として概念分析を行った。Rodgersの概念分析方法を用いて分析した結果,概念の5つの「特性」,2つの「先行要件」,および2つの「帰結」が明らかになった。Comfortの属性には,【外部・内部の刺激を契機に生じる反応】【多次元構造】【個人特有の表現方法と変動性】【ケア提供者が目指すべき成果】【表現の困難化の可能性とケア提供者による観察可能性】が含まれた。先行要件には,認知症者側の要件である【comfortニードがあること】とケアの要件である【comfortに焦点化したケア】が含まれた。Comfortの帰結として【可能性の拡大】と【周囲への波及】が含まれた。
著者
岩上 さやか 杉原 素子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.151-158, 2014-12-25

本研究は,回復期リハビリテーション病棟に入院した脳血管障害患者がその入院生活時に何をきっかけに自身の生活に再び目を向けることができたのかを探ることを目的とした。入院生活時に自身の病前生活に目を向けていたと判断され,現在地域生活を行っている3名に対し,半構造化面接を行い得られた資料の分析を行った。資料の内容分析を通して5つの共通項目が得られた。それらは「病前生活での自身の役割の明確な再認識の機会」と「作業療法場面での家事活動」が,生活に目を向けるきっかけとして,「病前の具体的な役割の存在」「前向きな考え方」「病気の体験を今後の生活にプラスに活かす姿勢」が,きっかけを導く背景の項目として挙げられた。このことから,患者一人ひとりの病前の役割や習慣的な活動を訓練に活かす事が,生活に目を向けるきっかけとなる可能性が示唆された。今後,患者の病前生活の情報を得る技能が必要になると思われた。
著者
鈴木 健太郎 菊池 恵美子 木之瀬 隆
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.23-33, 2007-06-25
被引用文献数
3

車いす移送車両の安全性と快適性の現状と課題を明らかにすることを目的に,利用する障害当事者にアンケート調査を実施した。回答者は119名で,その中で65歳以上の高齢層の症例は79名(66.4%)であった。結果,利用時の事故遭遇者は11名(9.2%),ヒヤリ・ハット体験者は11名(9.2%),乗り心地に何かしらの問題を感じる症例は66名(55.5%)であった。得られた回答を,年齢,身体障害の程度,使用している車いすの種類,添乗者の有無,乗り心地の状況で分析した結果と記述意見から,車いす移送車両やその利用における課題は,車いすを車いす移送車両に固定する方法,車いすと利用者との適合,車体や道路状況の改善とそれに応じた運転の配慮,運転手や添乗者の気配りや理解,対応方法や安全確認にあることが示唆された。
著者
永見 倫子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.16-21, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
9

3 歳以下の乳幼児を育児中の女性115 名に対しアンケート調査を行い,産後,特に 産褥期以降の乳幼児の育児にあたる時期の不調・疼痛の実態把握を目的に調査を行った. 産後の疼痛は腰部71.3%で最も多かった.また頸部38.3%,肩56.5%,手首31.3%など では妊娠中と比較し有意に増加していた(P < 0.01).最も疼痛の強い時期は子の定頚前 33.0%が最多で,疼痛の出る動作は抱っこや授乳など育児関連の動作が選択された.産後 の身体のケアについての指導は産科で行われることが多く,理学療法士の介入は0%だっ た.一方,正しい身体の使い方や疼痛予防のための運動指導などの希望は多かった. 産褥期のみならず育児期にかけて多くの女性が疼痛に悩まされていること,介入や対策 は不十分であることが明らかとなった.疼痛は特に乳児を支える時期や動作で多く,育児 の負荷が原因である可能性が高い.疼痛予防のための運動指導や育児の動作指導など,理 学療法士介入の必要性が示唆された.
著者
廣島 拓也 新田 收
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.86-91, 2016 (Released:2018-10-06)
参考文献数
8

片側股関節屈曲制限症例の座位において,左右骨盤に高低差が観察される。しかし,片側股関節屈曲制限と座位時の左右骨盤の高低差の関係について述べられた報告はほとんどない。そこで片側股関節屈曲制限を有する症例の座位における,股関節角度と左右骨盤の高低差の関係を検証した。対象は,片側THA 術後症例9 名とした。対象者には採型器上に座らせ,前額面から静止画を撮影し,rysis(座位姿勢計測用ソフトウェア)を用い骨盤側方傾斜角度を計測した。計測した値より,ASIS 高低差を算出した[ASIS 高低差= ASIS 間距離× sin(骨盤側方傾斜角度)]。80 ─制限側股関節屈曲角度とASIS 高低差の2変量を,相関分析にて検討した結果,2 変量間に強い相関が示された(r = 0.86,p < 0.05)。片側股関節屈曲制限角度が大きい症例ほど,制限側骨盤の挙上が大きいことが示唆され, 片側坐骨部分の座圧集中が生じる座位となる可能性が示唆された。
著者
三輪 聖恵 志自岐 康子 習田 明裕
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.211-220, 2010-03-25
被引用文献数
1

本研究は,新卒看護師の職場適応に関連する要因を明らかにすることを目的とし,首都圏の15の医療機関に所属する新卒看護師を対象に自記式質問紙調査を実施した。職場適応を測定するために,看護職へのアイデンティティ尺度を用い,187名の新卒看護師を対象として,個人特性5項目(看護技術への自信と成長の実感,患者からの感謝,患者の回復,燃え尽き状態,など)と環境特性5項目(職務満足度,プリセプターシップ,周囲からの支援など)との関連を分析した。その結果,職場適応と関連が見られたのは,看護技術への自身の程度,患者からの感謝,患者の回復,燃え尽き状態,職務満足度,プリセプターからの支援,周囲からの支援であった。これらの要因について重回帰分析(step-wise法)を行ったところ,燃え尽き状態,患者からの感謝,先輩看護師のロールモデルの3つの変数によって,新卒看護師の職場適応の41.4%が説明された。
著者
小林 幸治 吉野 眞理子 山田 孝
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.31-40, 2009-06-25
被引用文献数
1

病院の作業療法で行われている,脳血管障害者の心理社会面への具体的な支援の内容と支援における問題点を探索的に明らかにするため,病院勤務の作業療法士(OTR)を対象に自由記述式設問を含んだ質問紙調査を行った。434名を無作為抽出し,129の回答を得た。KJ法を用いたカテゴリー化から,支援の内容5項目,支援上の問題点5項目,他職種との連携で配慮する点4項目の大カテゴリーを見出した。支援の内容は[治療的な関わり方],[個人・環境因子への関わり],[心理面の専門的支援],[チームでの関わり],[作業活動・集団の活用]の大カテゴリーがあり,OTRは[治療的な関わり方]を最も重視していると思われた。支援上の問題点は[クライエント側の問題],[障害受容を促す],[OTR側の問題],[環境・制度上の問題],[OTR-クライエント関係における問題]があった。これより,OTRにはナラティブリーズニングを用いての,クライエントの主観的側面に着目したモデルや評価法を用いることや,クライエントとの協業や他職種との連携における実践技術が必要になると思われた。
著者
朴 志先 金 潔 近藤 理恵 桐野 匡史 尹 靖水 中嶋 和夫
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.160-169, 2011
参考文献数
39

本研究の目的は,未就学児の父親の育児参加と本人の心理的ウェルビーイングの関係を明らかにすることであった。調査対象はK県C市とO県K市内の保育所を利用している1000世帯とした。調査項目は父親の年齢,収入,就業形態,育児参加,家族・家庭に対する貢献感の認知,夫婦関係満足感,精神的健康,健康関連QOL,母親の年齢,児の数,末子の年齢,就業形態で構成した。本研究では実証すべき因果関係を,父親の育児参加と本人の心理的ウェルビーイングの関係において,父親の育児参加は,本人の家族・家庭への貢献感の認知を通して夫婦関係満足感と精神的健康に影響を与え,また夫婦関係満足感は直接的または精神的健康を通して間接的に健康関連QOLに影響すると仮定した。前記因果関係モデルのデータへの適合性と変数間の関係は回収された412世帯のうち,319世帯のデータを用いて,構造方程式モデリングで解析した。その結果,1)父親の育児参加は家族・家庭への貢献感から健康関連QOLに直接的に影響すること,また2)夫婦関係満足感ならびに精神的健康を通して健康関連QOLに間接的に影響することを明らかにした。以上の結果は,父親の育児参加を促進することの重要性を示唆している。
著者
京極 真 山田 孝 小林 法一
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.225-235, 2008-12-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
6

非構成的評価(UA)の確かさを担保するとされる4条件((1)第3者が評価者の想定した暗黙の前提を共有しやすい,(2)提示された事実は面接や観察から得られたもので,作業遂行を通して変化が認められる,(3)事実の表記は省略が少なく,概念が明確である,(4)判断は作業有能性に焦点を当てており,論理的に適正で明瞭である)を満たすよう作成したUA結果が,確かさの担保されたUA結果であると判断されるかどうかを検討した。その結果,作業療法士は,4条件を満たしたUA結果を確かさの担保されたUA結果であると判断することが明らかとなった。一方,4条件のうち1条件でも欠けると,確かさが担保されたUA結果ではないと判断することが示唆された。4条件を満たしたUA結果は,良質なUA結果を学ぶ教材として利用できるため,教育者は本研究の結果を参考に学習者に教育的指導を行うことができると考えられた。
著者
浅井 葉子 金子 誠喜 大津 慶子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.51-58, 2005-06-25 (Released:2017-10-27)
被引用文献数
2

椅子からの立ち上がり動作における体幹前傾角度の下肢関節モーメントへの影響を検討した。健常成人男性10名を対象に, 1)通常の立ち上がり, 2)できるだけ体幹を前傾しない立ち上がりを課題運動として設定し三次元動作解析装置を用いて計測を行った。体幹前傾角度の影響はすべての関節モーメントで認められ, 殿部離床時の体幹前傾角度と股関節最大伸展モーメントにもっとも大きな相関があった。2)では股関節伸展モーメントの減少と膝関節伸展モーメントの増加, 最大股関節・膝関節伸展モーメントの発揮の位相ずれ, 身体重心の後方化が認められた。そのため膝関節伸展筋の負担が増加すると思われた。さらに体幹の分節的運動性も関節モーメントに与える影響があることが示された。よって立ち上がり動作における体幹の分節運動獲得の必要性も示唆され, 各症例の機能障害にあわせた動作指導方法について確立していくことが今後の課題と考えられた。
著者
跡見 友章 則内 まどか 大場 健太郎 跡見 順子 菊池 吉晃
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.149-160, 2015 (Released:2018-09-07)
参考文献数
47

二足での身体バランス制御の神経機構は,転倒回避など,ヒトの生存戦略において重要である。一方,方法論的制限により,身体バランスが不安定な状態の脳活動に関する研究は少ない。我々は,身体バランスの不安定性に応答する自己特異的な神経機構を検討するために,動作観察および自他比較の手法が有効であると考えた。本研究では,健常男性13 名に対し3 条件のバランス課題(動的不安定,動的安定,静的安定)を実施し,被験者自身と他者による刺激動画を作成し,機能的磁気共鳴画像法により脳活動を計測した。各課題での自他比較による解析の結果,動的不安定条件でのみ側頭頭頂接合部や頭頂島前庭皮質などの前庭関連領域,島皮質や前前頭前野などの情動関連領域に自己に有意な脳活動が認められた。以上より,身体バランス不安定性認知における脳活動においては,明確な自他の差異が存在し,その脳活動は適応などの高次な神経機構と関連することが示唆された。
著者
篠原 広行 坂口 和也 橋本 雄幸
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.234-245, 2006-03-25 (Released:2017-10-27)

表計算ソフトウエアのExcelを用い1次元畳み込みの計算法を考案した。本研究で作成したプログラムは1周期のデータ数を32として離散化し畳み込みを行う。線形不変性システムの入力と応答関数を計測すれば,これらをExcelのワークシートに入力することによって出力の計算が可能である。計算機シミュレーションによる研究にも利用可能である。プログラムの使用にはExcelについて特別な知識を必要とせず,紙と鉛筆を用いた感覚で畳み込みの計算を行える。プログラムの信頼性は連続畳み込み(解析解)との比較によって検証した。また,プログラムによる畳み込みとExcelに組み込まれている高速フーリエ変換を用いた畳み込みとの比較を行い,両者が一致すること,すなわち"畳み込み定理"を確認した。作成したプログラムは畳み込みの数学的な基礎と実際の計算法の理解を支援し,線形システムの入出力の関係を解析する教育研究に役立つ。