著者
川端 博子 秋廣 ひとみ 吉澤 知佐
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.153-161, 2009-02-15

快適な空調環境と発汗を伴う暑熱環境を想定した状況下で,サマーウールのワンピースの下に着用する裏地キャミソールを例とする着用試験をもとに春夏向け衣料にふさわしい裏地に関する知見を得た.(1)ウール素材のワンピースの着用試験から,快適環境下では,裏地キャミソールを使用することによって肌触りとやわらかさを向上させ,快適感を高めることが明らかとなった.しかし,発汗の生じる暑熱環境下では,貼りつきや蒸れ感が高まり,快適感は低下する傾向がみられた.(2)付与水量を違えた裏地の貼りつき抵抗試験から,フィラメント無撚糸で構成される平滑な一般裏地では,貼りつき抵抗は大きくなるが,擬麻加工糸やスパン糸のもので抵抗は小さいことが示された.(3)着用評価から,空調された快適な環境下で発汗のない場合にはやわらかく,肌触りがよく,吸湿性のよい一般型のキュプラ裏地のキャミソールが好まれた.一方,暑熱環境で発汗のある状態では,貼りつき感の小さい裏地キャミソールの評価が高く,擬麻加工糸やスパン糸で構成される凹凸のある裏地がふさわしいことが明らかとなった.中でも,スパン糸のキュプラ裏地では,2環境下での快適性評価に有意な差はみられず,発汗の有無に関わらずともに高い評価が得られた.
著者
川端 博子 松本 あゆみ 吉澤 知佐
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.139-146, 2007
参考文献数
7

セミフレアスカートにおける裏地の効果について,着用評価とスカートの裾線形状から追究した.3種の裏地(キュプラ,差別化ポリエステル,ポリエステル一般裏地)に,2種の異なるパターン(スカートと同型でフレア状に裁断したものと脇スリット入りのストレートな形状のもの)を組み合わせた6枚のスカートについてテストした.13人の女子学生が着用評価を行った結果,フレア形状の裏地をつけたスカートは快適と感じられ,中でも動作性に優れていた.また,キュプラ裏地のものは肌ざわりにおいて他より優れていた.動作分析法により,マネキンに着せたスカートの裾線の形状を静的・動的状態で観察した.静的状態においてフレア形状の裏地のスカートの裾面積は大きく,かつ裾線形状は左右対称であった.スカートの動きの観察から,フレア形状の裏地のスカートは裾面積および裾の移動距離が大きかった.また,フレア形状の裏地のスカートでは表地と裏地の間隙が少なく,一体となって動く様子が捉えられておりこのことも動作性を高める要因と考えられる.キュプラ裏地のものは裾面積が小さく広がりの少ない形状を呈したが,もっとも移動量が多く躍動感のある動きを示していた.このことは裏地のかたさと動的振動係数とかかわると推察される.これらのことから,スカートの快適性と形状は裏地のパターンと種類の両方から影響を受けることが明らかとなった.
著者
川端 博子 藤田 佳穂 吉澤 知佐
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.514-522, 2020 (Released:2020-09-02)
参考文献数
7

ジャケットの裏地の用い方が, 動作機能面での快適性に及ぼす影響について考察することを目的とし, ジャケットの着用感評価と衣服圧計測を行った. Mサイズの4枚のジャケット (素材と伸び率の異なる裏地をつけた3枚と裏地なし) で, 裏地の効果を比較した. 次に, MとSサイズのジャケットの着用実験より, 動作性を維持する裏地の条件について考察した. 結果は, 以下のとおりである. (1) 裏地なしジャケットでは衣服圧は最も低いにもかかわらず, 動作のしやすさ, 着脱のしやすさ, 質感のよさで裏地つきのジャケットより評価が低かった. (2) Mサイズで裏地違いの3枚のジャケットの比較より, 柔らかく平滑なキュプラレギュラー裏地のジャケットでは, 衣服圧の低減とともにすべりの良さ, 動きやすさで高い評価が得られた. ポリエステルストレッチ裏地を用いたジャケットの評価が低かったのは, 伸長性よりも袖すべりのよさが動きやすさに効果を与えるためと考えられる. (3) キュプラレギュラー裏地のSサイズジャケットとポリエステル裏地のMサイズのジャケットには, 着用感評価と衣服圧に差は見られなかった. ジャケットの動作快適性を維持し, 衣服圧を抑えるには, 伸縮性よりもすべりがよくせん断特性の小さい裏地の使用がふさわしいことが明らかとなった.