著者
松澤 利明 吉田 俊夫 堺 俊治 塩原 有一
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement1, pp.267-277, 1982-04-20 (Released:2011-08-04)
参考文献数
14

Cefotetan (CTT, YM09330), Cefazolin (CEZ) およびCephalothin (CET) をNZW雌ウサギに静脈内投与し腎毒性を検討した。投与量は600または1, 200mg/kgで, 1投与量当り6匹 (対照は8匹) のウサギに1回投与し, 臨床検査を実施し, 投与3日後に屠殺し, 病理検査を行った。Cefotetan: 600および1, 200mg/kgの両群に食欲不振が認められたが, 死亡例はなかった。BUNおよびクレアチニンの上昇は認められなかった。尿蛋白は1, 200mg/kg群の1匹にみられた。腎を肉眼的に観察すると1, 200mg/kg群の1匹に灰白色結節, 他の1匹に小さいcystが認められた。600mg/kg群の1匹に小さなcystが認められた。腎の組織学的な検査では, 1, 200mg/kgの1匹に認められた灰白色結節はnephroblastomaと診断された。600mg/kg群の1匹に腎皮質近位尿細管上皮の壊死が認められた。Cefazolin: 1, 200mg/kgの1匹が投与後約6時間で死亡した。600および1200mg/kgの両群で食欲不振がみられた。1, 200mg/kg群では, BUNおよびクレアチニンの上昇が認められた。尿糖および尿蛋白は600および1, 200mg/kg群の両群にみられた。腎の肉眼的所見では, 1, 200mg/kg群の全例が褪色し, 大きくなっていた。また, 小さいcystがみられるものもあった。600mg/kg群の3匹に微細な灰白色点が密在しているのがみられた。腎の組織学的な検査では, dose dependenceに皮質近位尿細管上皮の壊死が認められた。Cephalothin: 600および1, 200mg/kg群に食欲不振がわずかに認められた。1, 200mg/kg群の1匹に尿蛋白が認められた。血漿生化学的所見では異常が認められなかった。腎を肉眼的に観察すると, 600mg/kg群の2匹が黄褐色化し, 小さいcystが認められた。腎の組織学的検査では, 薬物に関連する異常は認められなかった。Cefotetanの投与群にみられた腎の組織学的異常所見はdose dependenceがないことから, 本剤のウサギに対する腎毒性は, ほぼCETと同程度で, CEZよりも, かなり弱いものと考えられる。