著者
大矢 恭久 増崎 貴 時谷 政行 渡辺 英雄 吉田 直亮 波多野 雄治 宮本 光貴 山内 有二 日野 友明 奥野 健二
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.319-324, 2014-06

本レビューではプラズマ対向材料として注目されているタングステンの試料を,大型ヘリカル装置(LHD)の15サイクル実験(2011年)および16サイクル実験(2012年)期間中にLHD真空容器内に設置してプラズマ環境に曝露した際の水素同位体滞留能変化を調べた.これにより磁場閉じ込め装置の実機環境下での水素同位体滞留の基礎過程を理解するとともに水素同位体滞留能の変化がLHDにおける水素同位体挙動にどの程度影響を与えるのかを評価した.タングステン試料を約5000~6000ショット程度の水素プラズマ,300~800ショット程度のヘリウムプラズマおよび壁調整のためのグロー放電洗浄に曝した後に真空容器から取り出して観察したところ,表面には炭素堆積層が形成されており,その厚さは,堆積が多い場所の試料(DP試料)で4μm程度,熱負荷の高い場所の試料(HL試料)では100nm程度であった.これらの試料に重水素イオンを照射した後,昇温脱離ガス分析を行ったところ,重水素放出特性は純タングステンとは異なり,主要な放出ピークは800K-900Kに見られた.特にDP試料では900Kに大きな脱離ピークが見られた.純タングステンでは400K-600Kに脱離ピークが存在することから,LHDでプラズマに曝されたタングステン試料の重水素捕捉は純タングステンでの重水素捕捉とは状態が異なることが示唆された.LHDプラズマに134ショットだけ曝した試料の表面を観察すると,堆積層と表面近傍に転位ループが高密度に集積していることから,曝露初期には照射損傷導入と堆積層形成がダイナミックに進行し,これらに重水素を捕捉する能力が高いことが示唆された.
著者
下村 義治 吉田 博行 吉田 直亮 桐谷 道雄
出版者
広島大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

前年度迄に開発製作した極低温中性子照射した金属試料の電子顕微鏡用の4.2Kクライオ・トランスファー・ホルダーを改良して現在9K迄試料装填部の温度を下げる事に成功し4.2Kに今一歩に迫る性能向上をはたした。更に本年度はこのホルダーの先端試料部にクライオ・トランスファー時に取り付ける真空チェンバーの製作を完了した。これらホルダーおよび真空チェンバーを装備して中性子照射済の試料を中性子極低温照射用クライオスタットからホルダーに極低温にて移し変えてクライオ・トランスファー・チェンバーで真空引きしたままのせて電子顕微鏡試料室まで移動するための車およびそれに関連する装置も完成した。回転ターゲット核融合中性子源(RTNS-【II】)にて照射のための装置を総て開発完了後,日米科学技術協力事業(核融合)の実験の実施のため本試験研究にて開発した装置は昭和61年4月米国ローレンス・リバモア国立研究所に送り昭和61年6月及び昭和62年1月の二度にわたり本研究代表者らが派遣されて極低温核融合中性子照射した金属試料の極低温クライオ・トランスファー電子顕微鏡観察法による中性子照射損傷の基本単位である変位カスケード損傷欠陥の形成直後の観察に成功して、損傷過程の基礎過程の解明に大きく寄与した。核分裂中性子による極低温照射した試料のクライオ・トランスファーのための試料クライオ移送室の開発も考え方の点ではほぼ終了しているが、一部装置の製作を経費不足の点で残している。現在米国より送り返されているクライオ・トランスファー装置の日本への致着を待って残りの装置の製作を完了して京都大学原子炉実験所にて核分裂中性子照射実験をスタートする予定である。また重イオンによる低温照射した電子顕微鏡試料の極低温クライオ・トランスファー電子顕微鏡観察可能な照射試料室も今後製作して変位カスケード損傷過程の研究を行うよう続いて計画している。