著者
吉留 敬
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第46回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S12-3, 2019 (Released:2019-07-10)

以前に不整脈治療薬であるフレカイニドの過剰摂取による死亡が疑われた事例を経験し,生前の血中薬物濃度と死体内の薬物濃度の比較を行うことができた。その際,死後の左心血中のフレカイニド濃度は,生前血の17.7倍という著しく高い値を示していた。そこで,動物を用いた実験などを行うことで,フレカイニドは死後その心臓血中濃度,特に左心血中濃度が上昇すること,また,この上昇の原因が,フレカイニドの著名な肺への蓄積と死後の血液の酸性化であることを明らかにした。 ところで,覚せい剤であるメタンフェタミンは心臓血中濃度が死後上昇することが以前より知られており,覚せい剤はフレカイニドと同様に塩基性の薬物であることから,その心臓血中濃度の死後上昇機構はフレカイニドと同様のものであると考えられた。そこで,覚せい剤の検出された剖検事例について,その末梢血中濃度と心臓血中濃度の比較検討を行い,血液の流動性などが,末梢血と心臓血中濃度に影響を与えていることを明らかとしてきた。 その後,死体の各種体液中の覚せい剤濃度の比較を行なったところ,胃内で著しく高濃度を示すことが明らかとなった。覚せい剤は法規制対象の薬物であり,乱用者はしばしば第三者によって飲まされたと主張する。そのような主張を生前にしていた場合,その摂取経路の特定は死者が生前に自ら静注により摂取したのか,それとも経口的に飲まされたのかを鑑別する上で重要なものとなる。そこで,動物実験および事例の検討を行うことで,覚せい剤の摂取経路の鑑別法の構築を行なっている。
著者
石川 隆紀 宮石 智 土井 裕輔 高田 智世 今林 貴代美 稲垣 幸代 吉留 敬 山本 雄二 石津 日出雄
出版者
Okayama Medical Association
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.114, no.3, pp.303-308, 2003-01-31 (Released:2009-03-30)
参考文献数
11

We encountered two cases of unnatural death occurring indoors in early spring in Okayama Prefecture. The two cases were both females aged 31yearsold and 88yearsold. Autopsies revealed death from hypothermia as the cause of death. The diagnosis of death from cold was not based solely on the characteristic findings of the dead body. After confirming that there were no other accidents and diseases that may cause death, an overall evaluation should be made considering the conditions surrounding occurrence of death from cold. We describe these procedures using these two autopsy cases of death from hypothermia.