著者
三浦 文子 吉野 正代 富岡 光枝 長谷川 美彩 田中 康富 嶺井 里美 尾形 真規子 佐藤 麻子 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.865-870, 2009-10-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
8

簡易血糖測定器は,糖尿病患者が自己管理に用いるだけでなく,臨床現場での迅速な血糖測定に活用されることも多い.安定性については今までにも報告されているが,近年,測定時間の短縮化,血液量の微量化などの改良がなされてきている.そこで,環境・検体要因が血糖測定の安定性に支障をきたすことがないか,5機種の簡易血糖測定器を用いて,高低3濃度の血糖値について検討を行った.5機種とも同時再現性と希釈直線性は良好であった.静脈血血漿と指尖血全血の相関は各機種とも良好であったが,測定環境,患者因子,共存物質の影響で測定原理の違いや機種により測定値にばらつきが認められた.特に,環境因子の影響は血糖濃度により差異が認められ,使用方法や測定環境と共に,血糖実測値の高低による各因子の影響を含め測定値の評価をする必要のあることが示された.
著者
河原 玲子 雨宮 禎子 古守 知典 吉野 正代 平田 幸正
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.585-590, 1984
被引用文献数
1

糖尿病におけるglycosylated hcinoglobin (HbAI) の増加がヘモグロビン酸素解離能 (P<SUB>50</SUB>) に障害をおよぼし酸素親和性低酸素症 (hypoxia) をひきおこすか否かを検討した.対象はHbA<SUB>I</SUB>の増加している未治療糖尿病37名でアシドーシスや腎不全は含まなかった.37名中14名に非増殖性網膜症を有したがその他は網膜症を有しなかった.正當対照には糖尿病のない健常ボランチア31名を用いた.ヘパリン加静脈血を採取後直ちに酸素解離能とpHを測定した.また同時血液で赤血球2, 3-Diphosphoglyccrate (2, 3-DPG), HbA<SUB>I</SUB>, 血漿無機リン (Pi) を測定した.糖尿病群のP<SUB>50</SUB> <I>in vivo</I> pHは25.1±1.4mmHgで対照群の23.9±1.9mmHgに比し有意に増加した (p<0.01).P<SUB>50</SUB> pH7.4, Vcnous pH, 2, 3-DPGもそれぞれ糖尿病で有意に増加したがヘモグロビン濃度とPiは両群間で差がなかった.糖尿病群における2, 3-DPGはP<SUB>50</SUB> <I>in vivo</I> pHとr=0.42, P<0.01, P<SUB>50</SUB> pH7.4とr=0.46, p<0.001で各々有意な相関がみられた.また2, 3-DPGは両群でそれぞれヘモグロビン濃度と有意な負の相関があった.一方全例でみた場合にはHbA<SUB>I</SUB>はpH, 2, 3-DPG, P<SUB>50</SUB> <I>in vivo</I> pHとそれぞれ軽度ではあるが有意の相関関係があった.以上より細小血管症をもたないかまたは非増殖性網膜症を有する糖尿病でHbAIの高い未治療の時には, 2, 3-DPGの増加に伴うP<SUB>50</SUB>値の高値がみられ酸素放出能の低下はないと考えられた.