- 著者
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大場 茂
向井 知大
- 出版者
- 慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
- 雑誌
- 慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
- 巻号頁・発行日
- no.55, pp.21-37, 2014
研究ノート先が尖った六角柱状の透明な水晶で, 底面がc軸(伸長方向)に垂直にカットしてあれば, 右水晶(右旋性の水晶)か左水晶かを光学的に見分けることができる。ガラス製三角プリズムを水で濡らして水晶の先端の斜面に密着させ, 水晶の底面からc軸方向へ直線偏光をあて, 三角プリズムおよび円偏光板を通して見ると, 虹色の渦巻き(エアリースパイラル)が見える。その渦巻きが右巻きならば右水晶, 左巻きならば左水晶である。この干渉像は水晶の複屈折と旋光性に起因する。水晶中では複屈折により, 光の進行方向がc軸から傾くと, 正常光に対して異常光の位相が遅れる。光の通過距離が長くなればなるほど, この位相差δが大きくなる。しかし, c軸に対して光線の角度が少し小さくなるだけで, 位相差δが減少し, 通過距離の違いによる影響が解消される。このため, 干渉縞がほぼ同心円状に見える。ただし, エアリースパイラルを明瞭に観察するには, 割れや濁りがなく, 光学的に質の高い水晶に限られる。