著者
向井 知大 大場 茂
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.55, pp.1-19, 2014

研究ノート野外における放射線強度を, 車での走行あるいは歩きながら調査するシステムを試行した。これは簡易型ガイガーカウンター(インスペクター)をPCにつないで放射線強度を3秒ごとに記録し, またGPSアンテナで位置情報も同時に取り込むものである。定点観測ならびに走行・歩行実験を行い, 測定条件やデータの解析方法について検討した。その結果, 統計変動を抑えるためには, 30秒間の積算計測数を用いてγ線にもとづく空間線量率を求めるのが妥当であること, また検出器の高さを地上1mから0.35mに下げても, 空間線量率は8%程度しか増えないことがわかった。
著者
向井 知大 小畠 りか 大場 茂
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.50, pp.61-75, 2011

慶應義塾大学日吉キャンパスにおける文系学生を対象とした化学実験のテーマの1つに, アセトアニリドの合成に関する実験がある。無水酢酸と氷酢酸の混合液を用いてアニリンをアセチル化する反応である。しかし, 反応条件(加熱還流の強さや時間など)について不明確な点があった。そこで実験条件を変えて合成を行ってみた。その結果, 収量は加熱の強さや加熱時間にほとんど依存しないこと, 並びに使用する無水酢酸の鮮度が収量にかなり反映することが明らかとなった。なお, アニリンが空気中で酸化されて赤くなるが, これはフェナジン骨格をもつオリゴマーが生成するためである。これと関連して, ポリアニリンの生成機構について文献を調べて要点をまとめた。50号記念号研究ノート
著者
大場 茂 向井 知大
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.55, pp.21-37, 2014

研究ノート先が尖った六角柱状の透明な水晶で, 底面がc軸(伸長方向)に垂直にカットしてあれば, 右水晶(右旋性の水晶)か左水晶かを光学的に見分けることができる。ガラス製三角プリズムを水で濡らして水晶の先端の斜面に密着させ, 水晶の底面からc軸方向へ直線偏光をあて, 三角プリズムおよび円偏光板を通して見ると, 虹色の渦巻き(エアリースパイラル)が見える。その渦巻きが右巻きならば右水晶, 左巻きならば左水晶である。この干渉像は水晶の複屈折と旋光性に起因する。水晶中では複屈折により, 光の進行方向がc軸から傾くと, 正常光に対して異常光の位相が遅れる。光の通過距離が長くなればなるほど, この位相差δが大きくなる。しかし, c軸に対して光線の角度が少し小さくなるだけで, 位相差δが減少し, 通過距離の違いによる影響が解消される。このため, 干渉縞がほぼ同心円状に見える。ただし, エアリースパイラルを明瞭に観察するには, 割れや濁りがなく, 光学的に質の高い水晶に限られる。
著者
大場 茂 向井 知大
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.56, pp.21-34, 2014

研究ノート慶應義塾大学日吉キャンパスにおける文系学生を対象とした化学実験のテーマの1 つとして, ナイロン66 の合成と染色に関する実験を2000 年以前から行っている。合成後のナイロンについて, 機器分析の1 つとして, ATR 法(全反射減衰分光法)による赤外スペクトル測定を2008 年から開始した。それは, 吸収される赤外線のエネルギーから, 化合物に含まれている官能基を簡単に同定できるというメリットがある。本稿では, その背景ならびに実験準備上の注意を述べる。また, すべての吸収帯の帰属についても文献を調べ, 環状単量体のデータとも比較して検討した。なお, アジポイルクロリドの溶媒としてヘキサンを用いているが, これとヘキサメチレンジアミンの水酸化ナトリウム溶液との界面重合により生成したナイロン66 の糸が弱いのは, 重合度ならびに結晶化度が低いためである。冷延伸法によりナイロンの糸を強化できることが知られているが, ナイロン66 は熱安定性が悪いため, 空気中での溶融紡糸が困難であることを確認した。