著者
池田 威秀 足立 朋子 鈴木 真理子 秋山 豊子
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.57, pp.11-46, 2015

教育挿図資料近年, 当大学で発生した飲酒事故の重要性に鑑み, 飲酒事故を未然に防ぐことを目的に事業を展開した。生物学の分野から, 学生個々人のアルコールのパッチテスト, その後のアンケート調査, その解析, 意識調査, 自分の遺伝的体質の解析(アルコール分解酵素の遺伝子鑑定)や, 肝臓におけるアルコールの分解作(酵素反応)の理解を進める授業などを展開した。また, 授業用資料(PPT)やパンフレット作成を行なった。生物学を履修している学生には, これらを用いて授業を展開し, 飲酒事故防止のための理解を進める。生物学を履修していない学生には, これらの資料をウェブで公開して閲覧できるようにする。加えて, 将来的なアルコール中毒や肝機能障害のリスク回避, さらに最近多様化してきた他の薬物中毒に対しても, その危険性を広報していく。以上のことから, 全塾的・長期的に, 学生がアルコールと他の薬物への対応の仕方を習得し, 将来的に心身ともに健康維持できるよう, 教育支援を行なった。
著者
向井 知大 大場 茂
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.55, pp.1-19, 2014

研究ノート野外における放射線強度を, 車での走行あるいは歩きながら調査するシステムを試行した。これは簡易型ガイガーカウンター(インスペクター)をPCにつないで放射線強度を3秒ごとに記録し, またGPSアンテナで位置情報も同時に取り込むものである。定点観測ならびに走行・歩行実験を行い, 測定条件やデータの解析方法について検討した。その結果, 統計変動を抑えるためには, 30秒間の積算計測数を用いてγ線にもとづく空間線量率を求めるのが妥当であること, また検出器の高さを地上1mから0.35mに下げても, 空間線量率は8%程度しか増えないことがわかった。
著者
大場 茂 向井 知大
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.55, pp.21-37, 2014

研究ノート先が尖った六角柱状の透明な水晶で, 底面がc軸(伸長方向)に垂直にカットしてあれば, 右水晶(右旋性の水晶)か左水晶かを光学的に見分けることができる。ガラス製三角プリズムを水で濡らして水晶の先端の斜面に密着させ, 水晶の底面からc軸方向へ直線偏光をあて, 三角プリズムおよび円偏光板を通して見ると, 虹色の渦巻き(エアリースパイラル)が見える。その渦巻きが右巻きならば右水晶, 左巻きならば左水晶である。この干渉像は水晶の複屈折と旋光性に起因する。水晶中では複屈折により, 光の進行方向がc軸から傾くと, 正常光に対して異常光の位相が遅れる。光の通過距離が長くなればなるほど, この位相差δが大きくなる。しかし, c軸に対して光線の角度が少し小さくなるだけで, 位相差δが減少し, 通過距離の違いによる影響が解消される。このため, 干渉縞がほぼ同心円状に見える。ただし, エアリースパイラルを明瞭に観察するには, 割れや濁りがなく, 光学的に質の高い水晶に限られる。
著者
大場 茂 向井 知大
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.56, pp.21-34, 2014

研究ノート慶應義塾大学日吉キャンパスにおける文系学生を対象とした化学実験のテーマの1 つとして, ナイロン66 の合成と染色に関する実験を2000 年以前から行っている。合成後のナイロンについて, 機器分析の1 つとして, ATR 法(全反射減衰分光法)による赤外スペクトル測定を2008 年から開始した。それは, 吸収される赤外線のエネルギーから, 化合物に含まれている官能基を簡単に同定できるというメリットがある。本稿では, その背景ならびに実験準備上の注意を述べる。また, すべての吸収帯の帰属についても文献を調べ, 環状単量体のデータとも比較して検討した。なお, アジポイルクロリドの溶媒としてヘキサンを用いているが, これとヘキサメチレンジアミンの水酸化ナトリウム溶液との界面重合により生成したナイロン66 の糸が弱いのは, 重合度ならびに結晶化度が低いためである。冷延伸法によりナイロンの糸を強化できることが知られているが, ナイロン66 は熱安定性が悪いため, 空気中での溶融紡糸が困難であることを確認した。