著者
向坊 隆 雨宮 武男 西宮 辰明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.497-500, 1962-04-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
4

フッ化水素酸に侵されにくい透明材料を得ることを目的として,新しいフッ化物ガラスを研究した。フッ化物ガラスとしてはフッ化ベリリウムを主成分とするものが知られているが,吸湿性なので他のフッ化物について調べた結果,フッ化アルミニウム- フッ化ナトリウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化マグネシウム- フッ化ナトリウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化アルミニウム- フッ化マグネシウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化アルミニウム- フッ化マグネシウム- メタリン酸カリウム系のガラス化組成範囲を決定した。フッ化アルミニウム-フッ化マグネシウム-メタリン酸ナトリウム系の試作ガラスに比較的よく無水フッ化水素酸に耐えるものが得られた。その一例はフッ化アルミニウム32.5mol%,フッ化マグネシウム27mol%,メタリン酸ナトリウム40.5mol%の組成のものである。この系で組成を変えたガラスについてはフッ素対酸素の原子比の大なるほど,フッ化水素酸に対する耐食性が大であり,この比が1付近でこの影響の著しいことを見出した。またフッ化水素酸中の水含有量がこの系のガラスの腐食に大きい影響を与えることが見出された。前記組成のガラスは無水フッ化水素酸による腐食は非常に少ないが,90%あるいは80%のフッ化水素酸では腐食速度は約10倍になる。ケイ酸塩ガラスではフッ化水素酸濃度の高いほど腐食速度は大きく,無水フッ化水素酸には激しく侵される。