著者
河本 昌志 大澤 恭浩 藤井 宏融 弓削 孟文 向田 圭子
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

日本国内での悪性高熱症(MH)を発症した患者やその血縁者およびMHと関連性が疑われる疾患の患者を対象とし,骨格筋小胞体のCa-induced Ca release(CICR)機構の以上亢進と,CICRチャネルであるリアノジン受容体(RYR1)の遺伝子の異常との関連性について研究した.方法は,対象者の同意を得て末梢血からDNAを抽出し,RYRl遺伝子領域のPCRプライマー7組を用いて増幅し,制限酵素断片長多型(RFLP)による解析と同近傍領域のマイクロサテライトプローブを用いた解析を行った.また,骨格筋を生検してサポニン処理して化学的にスキンドファイバーを作製し,遠藤らの方法でCICR速度を測定した.これまでの2年間に26家系72名よりDNAを抽出した.また筋生検によるCICR速度の測定は26名で行った.このうち臨床的に劇症MHを発症した4名とその家系の3名でCICR速度の異常亢進が認められたが,C1840Tの変異はいずれの対象者にも認められなかった.しかし,1家系でRFLPとマイクロサテライト法により,RYRl遺伝子領域の異常とMH素因(CICR速度異常亢進および劇症MH)との関連性がより明らかになった.従ってこの家系では末梢血採血という最低限の侵襲で,より広範囲の遺伝子検索ができる可能性が高くなった.さらに従来報告された遺伝子変異を検出するためのPCRプライマーを作製中で,これを用いて広範囲のDNA異常を検討する予定である.MHは希な疾患であり,しかも筋生検は侵襲的であるために,承諾を得てCICR速度測定を実施できる症例数は限られる.今後はこのプライマーを用いて最低限の侵襲で広範囲のDNA異常を検討する必要があると考えている.