著者
森脇 克行 Syafruddin GAUS 須山 豪通 弓削 孟文
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.127-136, 2003-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
51

複合性局所疼痛症候群 (CRPS) では, 疼痛, 温度上昇, 浮腫, 関節可動域制限などの症状に伴って骨関節病変がしばしば認められる. 組織損傷後の骨病変として歴史的には Sudeck の骨萎縮と Charcot 関節が知られているが, これらの骨病変はCRPSの骨病変と同一の発生メカニズムによる可能性がある. 近年, 骨代謝の分子生物学が進歩し, CRPSの骨病変を分子生物学的に解明する糸口が見えてきた. 本稿では, 新しい知見をもとに, 骨病変と感覚神経から神経原性に放出されるニューロペプチド, 交感神経活動, 組織障害後に放出されるサイトカインや不動化との関係について考察した. 骨病変のメカニズムの解明はCRPSの病態生理学の理解と治療法の開発に有用と思われる.
著者
河本 昌志 大澤 恭浩 藤井 宏融 弓削 孟文 向田 圭子
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

日本国内での悪性高熱症(MH)を発症した患者やその血縁者およびMHと関連性が疑われる疾患の患者を対象とし,骨格筋小胞体のCa-induced Ca release(CICR)機構の以上亢進と,CICRチャネルであるリアノジン受容体(RYR1)の遺伝子の異常との関連性について研究した.方法は,対象者の同意を得て末梢血からDNAを抽出し,RYRl遺伝子領域のPCRプライマー7組を用いて増幅し,制限酵素断片長多型(RFLP)による解析と同近傍領域のマイクロサテライトプローブを用いた解析を行った.また,骨格筋を生検してサポニン処理して化学的にスキンドファイバーを作製し,遠藤らの方法でCICR速度を測定した.これまでの2年間に26家系72名よりDNAを抽出した.また筋生検によるCICR速度の測定は26名で行った.このうち臨床的に劇症MHを発症した4名とその家系の3名でCICR速度の異常亢進が認められたが,C1840Tの変異はいずれの対象者にも認められなかった.しかし,1家系でRFLPとマイクロサテライト法により,RYRl遺伝子領域の異常とMH素因(CICR速度異常亢進および劇症MH)との関連性がより明らかになった.従ってこの家系では末梢血採血という最低限の侵襲で,より広範囲の遺伝子検索ができる可能性が高くなった.さらに従来報告された遺伝子変異を検出するためのPCRプライマーを作製中で,これを用いて広範囲のDNA異常を検討する予定である.MHは希な疾患であり,しかも筋生検は侵襲的であるために,承諾を得てCICR速度測定を実施できる症例数は限られる.今後はこのプライマーを用いて最低限の侵襲で広範囲のDNA異常を検討する必要があると考えている.