著者
周 雯婷
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.183-204, 2014-05-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究では,上海の古北地区における日本人集住地域の形成・変容過程を,空間的側面と社会的側面から明らかにした.1990年代の中国では,外国人政策により,日本人を含めた外国人は外国人住宅地に居住を強いられた.2003年以降は,外国人政策の緩和の中で,以前の外国人住宅地とその周辺には日本人のみが多く居住するようになった.それが現在の古北地区である.日本人向けの生活関連施設の集積が進むにつれ,日本人の新規居住者が増加した.日本人の属性は,1990年代には駐在員がほとんどであったが,2000年代以降,駐在員,現地起業者,現地採用者など多様になった.日本人の居住パターンは,日本人が他の外国人と混在する形態から多様な日本人の集住が進む形態へ変化したといえる.以上の分析から,日本人集住地域の形成・変容要因は,諸外国とは異なる社会主義体制下の中国特有の外国人政策の影響,および日本人向けの生活関連施設の集積であることが指摘できた.