著者
辻本 拓司 和南城 伸也 石垣 美歩 西村 信也 戸次 賢治 Gerhard Hensler
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

金やプラチナに代表される中性子を素早く捕獲して形成されるr過程元素の天体物理学的起源については、未だ同定できていない。2017年の夏、連星系にある2つの中性子星の合体がその起源であるという極めて有力な手掛かりを我々は掴むこととなったが、まだ断定できる状況には程遠い。さらに、中性子星合体が唯一の起源であることに対し、複数の観測事実が疑問を呈している。本研究は星の化学組成という独自の視点からr過程元素の起源に迫ろうとするものであり、我々は中性子星合体が支持されること、しかし一方で銀河形成初期では特殊な超新星(磁気駆動型超新星)が出現していたことを突き止めた。
著者
伊藤 直紀 和南城 伸也 野澤 智
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

当該研究期間の研究成果は以下のとおりである。1.銀河団におけるSunyaev-Zeldovich効果に対する多重散乱の寄与の研究標記の寄与について、Fokker-Planck展開を用いた方法、およびBoltzmann衝突項を数値積分する方法の両方により計算を行った。その結果、通常の銀河団については、多重散乱の寄与は1%よりはるかに小さいことが明らかとなった。この研究成果により、本研究代表者たちが以前に発表した1回散乱のみを考慮した計算結果が、通常の銀河団については十分適用できることが判明した。この研究により、銀河団における相対論的Sunyaev-Zeldovich効果の研究は、真の意味で精密科学の段階に到達した。1998年Astrophysical Journalに発表された論文に始まる本研究代表者たちの一連の研究の基礎が最終的に確立したのである。この事実は、宇宙物理学のみならず、統計物理学としての本研究の価値を大いに高めるものである。この研究論文はMonthly Notices of Royal Astronomical Societyに発表された。2.超高温銀河団におけるSunyaev-Zeldovich効果の研究近年25keVを超える超高温ガスを含む銀河団が発見されている。われわれはこれまでのわれわれの計算方法を用いて、このような超高温銀河団における、相対論的Sunyaev-Zeldovich効果を精密に計算した。この際に、結果を詳細な数表と解析的なフィット式によって表現した。これらの結果は将来の観測結果の解析に大いに有効であると考えられる。この研究結果は、Astronomy and Astrophysicsに掲載された。
著者
伊藤 直紀 野澤 智 和南城 伸也
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,相対論的Sunyaev-Zeldovich効果に関して,十分な成果を上げることができた。相対論的Sunyaev-Zeldovich効果は,銀河団内部の高温電子の熱運動による熱的効果と,銀河団全体が宇宙背景放射に対して運動することによる,運動学的効果の二つの効果がある。本研究において,われわれは,この両方の効果に関して,非常に精度の高い結果を導出することに成功した。われわれの理論的研究の成果は,すでに,世界各国で始まっているSunyaev-Zeldovich効果の精密観測の結果の解析に取り入れられている。本研究の過程で,研究代表者は,各国のこの分野の研究者を訪問し,非常に有意義な討論を行うことができた。2004年には,5ケ月にわたって,Cambridge大学Cavendish研究所に滞在し,同研究所の多くの研究者たちとSunyaev-Zeldovich効果に関して詳細な討論を行うことができた。その後,同研究所の定期的な訪問者として,2005年,2006年,2007年の夏に同研究所を訪問して,討論を継続している。また2005年9月と2007年4月に,ドイツ国GarchingのMax-Planck-Institut fuer Astrophysikを訪問し,所長のSunyaev教授と,懇談する機会をもつことができた。Sunyaev教授は,言うまでもなく,Sunyaev-Zeldovich効果の研究の創始者であり,同教授と2回にわたって懇談できたことの意義は,計り知れないほど大きい。これ以外にも,本科研費により,Princeton大学,Roma大学,CERN研究所を始めとする,多くの研究機関を訪問し,招待講演を行った。このことにより,本研究は国際的に非常に高い評価を受けるにいたった。