著者
野澤 智 原 良紀 木下 順平 佐野 史絵 宮前 多佳子 今川 智之 森 雅亮 廣門 未知子 高橋 一夫 稲山 嘉明 横田 俊平
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.454-459, 2008 (Released:2008-12-31)
参考文献数
9
被引用文献数
5 9

壊疸性膿皮症は,稀な原因不明の慢性皮膚潰瘍性疾患で小児例もわずか4%であるが存在する.クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患,大動脈炎症候群(高安病),関節リウマチなどに合併する例もあるが,本症単独発症例が約半数を占める.壊疽性膿皮症の標準的な治療であるステロイド薬,シクロスポリンに抵抗を示す難治例に対し,近年タクロリムス,マイコフェノレート・モフェチール,そして抗TNFαモノクローナル抗体の効果が報告されている.今回,壊疽性膿皮症の12歳女児例を経験した.合併する全身性疾患は認められなかったが,皮膚に多発する潰瘍性病変はプレドニゾロン,メチルプレドニゾロン・パルス,シクロスポリンなどの治療に抵抗性で長期の入院を余儀なくされていた.インフリキシマブの導入をしたところ潰瘍局面の著しい改善を認めた.最初の3回の投与で劇的な効果をみせ,投与開始1年3ヶ月後の現在,ステロイド薬の減量も順調に進み,過去のすべての皮膚潰瘍部は閉鎖し,新規皮膚病変の出現をみることはなく,経過は安定している.壊疽性膿皮症にインフリキシマブが奏効した小児例は本邦では初めての報告である.本症難治例に対するステロイドの長期大量投与は,小児にとっては成長障害が大きな問題であり,長期入院生活は患児のQOLを著しく阻害する.本報告により小児壊疽性膿皮症の難治例に対する治療に新しい局面を切り開く可能性が示唆された.
著者
野澤 智行
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.103-112, 2022 (Released:2023-04-22)
参考文献数
10

In conducting an exploratory data analysis to study the hit mechanisms of manga and anime works with appealing supporting characters, the author began by assessing the volume and content of Twitter posts on Demon Slayer and observed that SNS not only facilitated communication between devoted fans, but also served to fulfill the desire to own merchandise and to provide a place for publication of derivative works. Furthermore, in an analysis using the Character Quantitative Survey unaided recall data, the top unaided recall works were classified into four types based on supporting character popularity patterns. The results obtained by creating a composite variable of unaided recall weighted by simple total based on the number of recall of the work's name or character and assessing the mean values and correlations of each variable measured for each work showed that the composite variable of unaided recall had a strong correlation with the indices of tie-in merchandise purchase and purchase intention, and with the indices of ‘high spirit and fun’ and ‘attention and impersonation’ in the field of offered experience.
著者
菊地 雅子 野澤 智 佐藤 知美 西村 謙一 金高 太一 櫻井 のどか 原 良紀 山崎 和子 横田 俊平
出版者
一般社団法人 日本小児リウマチ学会
雑誌
小児リウマチ (ISSN:24351105)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.26-31, 2014 (Released:2020-12-15)
参考文献数
10

当科では,若年性線維筋痛症 juvenile fibromyalgja:JFM)に対して,環境分離を主軸とする入院治療 を行ってきた.入院の適応は,重症例もしくは社会的因子が病状に強く影響している場合である. 入院では,規則正しい生活と院内学級通学,リハビリテーションが治療の中心であり,同時に環境調 整(家族や学校との面談)を進め,必要に応じて薬物療法を併用する. 2001年3月~2012年12月までの期間に,当科で入院加療したJFM患児32例について,その効果と 実際について検討した.結果は,臨床症状と重症度において,退院時のステージが17例(53%)で改 善し増悪は1例のみだった.また,入院中9例(31%)に圧痛点の減少があり,うち6例(19%)は退 院時に圧痛点が消失した.入院時に不登校の患児は25例(78%)で,うち9例(36%)が退院後3か月 の時点で登校可能となった. 入院治療による多面的なアプローチは,JFMの症状改善に有効と考えられた.
著者
池川 健 山崎 和子 西村 謙一 金高 太一 菊地 雅子 野澤 智 原 良紀 佐藤 知実 櫻井 のどか 横田 俊平
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.176-182, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は14歳男児.1か月以上続く弛張熱,紅斑,関節痛,筋痛を認め,抗菌薬投与では改善せず,全身型若年性特発性関節炎(JIA)を疑われた.メトトレキサートの内服,メチルプレドニゾロン(mPSL)・パルス療法2クールが行われたが,効果不十分であったため当科へ転院となった.骨髄検査で悪性所見なく,positron emission tomography(PET)で椎体骨,骨盤骨,上腕骨近位端など赤色髄への18F-FDG集積を認めた.また弛張熱,発熱時の紅斑,関節痛,筋痛があり,血液検査では白血球増多,顆粒球増多,CRP高値,フェリチン高値,IL-6高値を認めた.以上から全身型JIAと診断した.きわめて強い全身炎症があり,mPSLパルスをさらに2クール追加後,トシリズマブ(TCZ)を導入した.その効果は著しく,症状は改善した.激しい全身炎症を有する全身型JIA重症例には,トシリズマブ導入を早めることで早期に炎症を沈静化でき,ステロイドの副作用を軽減できる可能性がある.トシリズマブ治療のさらなる検討を行い,時期を違えずにトシリズマブを導入する適応の検討が必要であろう.
著者
伊藤 直紀 和南城 伸也 野澤 智
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

当該研究期間の研究成果は以下のとおりである。1.銀河団におけるSunyaev-Zeldovich効果に対する多重散乱の寄与の研究標記の寄与について、Fokker-Planck展開を用いた方法、およびBoltzmann衝突項を数値積分する方法の両方により計算を行った。その結果、通常の銀河団については、多重散乱の寄与は1%よりはるかに小さいことが明らかとなった。この研究成果により、本研究代表者たちが以前に発表した1回散乱のみを考慮した計算結果が、通常の銀河団については十分適用できることが判明した。この研究により、銀河団における相対論的Sunyaev-Zeldovich効果の研究は、真の意味で精密科学の段階に到達した。1998年Astrophysical Journalに発表された論文に始まる本研究代表者たちの一連の研究の基礎が最終的に確立したのである。この事実は、宇宙物理学のみならず、統計物理学としての本研究の価値を大いに高めるものである。この研究論文はMonthly Notices of Royal Astronomical Societyに発表された。2.超高温銀河団におけるSunyaev-Zeldovich効果の研究近年25keVを超える超高温ガスを含む銀河団が発見されている。われわれはこれまでのわれわれの計算方法を用いて、このような超高温銀河団における、相対論的Sunyaev-Zeldovich効果を精密に計算した。この際に、結果を詳細な数表と解析的なフィット式によって表現した。これらの結果は将来の観測結果の解析に大いに有効であると考えられる。この研究結果は、Astronomy and Astrophysicsに掲載された。
著者
伊藤 直紀 野澤 智 和南城 伸也
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,相対論的Sunyaev-Zeldovich効果に関して,十分な成果を上げることができた。相対論的Sunyaev-Zeldovich効果は,銀河団内部の高温電子の熱運動による熱的効果と,銀河団全体が宇宙背景放射に対して運動することによる,運動学的効果の二つの効果がある。本研究において,われわれは,この両方の効果に関して,非常に精度の高い結果を導出することに成功した。われわれの理論的研究の成果は,すでに,世界各国で始まっているSunyaev-Zeldovich効果の精密観測の結果の解析に取り入れられている。本研究の過程で,研究代表者は,各国のこの分野の研究者を訪問し,非常に有意義な討論を行うことができた。2004年には,5ケ月にわたって,Cambridge大学Cavendish研究所に滞在し,同研究所の多くの研究者たちとSunyaev-Zeldovich効果に関して詳細な討論を行うことができた。その後,同研究所の定期的な訪問者として,2005年,2006年,2007年の夏に同研究所を訪問して,討論を継続している。また2005年9月と2007年4月に,ドイツ国GarchingのMax-Planck-Institut fuer Astrophysikを訪問し,所長のSunyaev教授と,懇談する機会をもつことができた。Sunyaev教授は,言うまでもなく,Sunyaev-Zeldovich効果の研究の創始者であり,同教授と2回にわたって懇談できたことの意義は,計り知れないほど大きい。これ以外にも,本科研費により,Princeton大学,Roma大学,CERN研究所を始めとする,多くの研究機関を訪問し,招待講演を行った。このことにより,本研究は国際的に非常に高い評価を受けるにいたった。