- 著者
-
元 炳〓
禹 漢貞
咸 奎晃
尹 茂夫
- 出版者
- Yamashina Institute for Ornitology
- 雑誌
- 山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.6, pp.405-444, 1966-12-31 (Released:2008-11-10)
- 参考文献数
- 25
- 被引用文献数
-
1
4
本論文は,1963年6月から1966年12月までの期間に,韓国に於て京畿道を中心として標識放鳥した結果と併せ,この放鳥過程で観察した主に渡り鳥の季節的分布並びに其の生態に就いて纒めて報告した。1.1963年6月6日から25日までの20日間に,3種(及び亜種)99羽,1964年7月3日から1966年12月31日までに124種(及び亜種)123,242羽を放鳥した。22種(及び亜種)196羽(144羽再帰)が国内(標識放鳥した以外の場所)で回収されており,5種(及び亜種),7羽が国外から回収された。2.1964年8月12日から1966年9月30日までの3年間に亙ってSeoul東北方泰陵墨洞所在の梨畑でホオジロハクセキレイ11,680羽とツバメ9,013羽を放鳥した。a.ホオジロハクセキレイは3月初めにツバメは4月上旬,韓国に渡来し5月~6月に繁殖を終え,10月下旬南下移動するまで梨畑で集団就眠する。b.ホオジロハクセキレイとツバメは,同じ塒で就眠するが,帰眠,離眠時間及び照度が違い,その行動にも差異があるのみでなく塒の一部が重複(overlap)するけれども,其の地位(roosting niche)が違っている。ホオジロハクセキレイの大群が塒周囲に集結すると同時に入塒を始める頃,ツバメは上空に現われ始め,ホオジロハクセキレイの群が入塒完了後ツバメ小群が大群をつくりながら就眠地域上空を時計針と反対方向に飛び廻る。次いで低空を飛びながら,素早く入塒を完了する。ツバメが離塒した後,ホオジロハクセキレイが出始める。c.帰眠,離眠(塒)は晴,曇天に依って時間的差はあるが照度(Lux)には,殆んど差がなかった。d.ホオジロハクセキレイは塒から20km半径以上の距離から小群で帰眠飛翔を始める。e.ホオジロハクセキレイとツバメの一部は1~2年後回帰(return)する。再捕獲(repeat)が少いが,これは両種共南下移動中の群であるためであろう。3.1964年7月から1966年10月まで,主に京畿道で放鳥したホオジロ属鳥類は12種(及び亜種)78,170羽である。Emberiza rutila, E. spodocephala, E. tristrami, E. aureola ornata及びE.rusticaは春秋通過する優占種であり,秋には大豆,トウモロコシ,キビ畑を好み,特にEmberiza rutila集団は粟畑に集結する。E.rustica集団は前記4種とは違い,開けた土地の藪,疎林又は森林の下木や灌木等に集結する第一位の優占種である。シマノジコEmberiza rutila秋の渡りは,8月上旬から10月下旬まで,春は5月に韓国を通過する。性比は155:100(17761♂,11674♀)であるが,9月(1964年と1965年両年共)だけは38:100である。渡りの初めには雄群が先立ち,以後雌群が渡来し,次いで若鳥と雌雄の混成群が通過する。アオジEmberiza spodocephala秋は,9月下旬から10月下旬まで,春は4月下旬から5月中旬まで,韓国を通過する。性比は140:100(551♂,392♀)である。シロハラホオジロEmberiza tristrami9月下旬から10月下旬まで韓国を南下通過し,翌年4月下旬から5月中旬まで北上通過する。性比は140:100(551♂,392♀)である。シマアオジEmberiza aureola ornata8月上旬から10月下旬まで,韓国を南下通過し,翌年4月下旬から5月下旬まで北上通過する。カシラダカEmberiza rustica10月上旬南下渡来し始め,前記の4種が韓国を通過完了する頃の10月下旬から大群が南下し,11月下旬から渡来最盛期をあらわす。12月上旬から漸次渡来数が減少しながら通過を終えるが,一部は残留越冬する。越冬群の滞留期間は10月上旬から4月下旬までであり,性比は191:100(25687♂,13450♀)である。チョウセンコジュリンEmberiza yessoënsis continentalis10月中旬頃韓国に渡来するが一部は越冬し一部は南下する。滞留期間は10月中旬らか2月中旬までであるが数は少い。チョウセンホオジロEmberiza cioides周年見かける繁殖種であるが,冬大群が南下し,翌年春北上する。性比は1964年と1965年の調査では159:100(792♂,497♀)である。ミヤマホオジロEmberiza elegans elegans数少く繁殖する留鳥であるが,10月下旬頃大群が南下し,翌年4月北上する。性比は280:100(962♂,462♀)である。ホオアカEmberiza fucata fucata4月中旬韓国に渡来繁殖し,9月大部分南下する夏鳥である。キマユホオジロEmberiza chrysophrys5月と9~10月に極めて数少く韓国を通過する。コホオアカEmberiza pusilla春秋韓国を通過するが数は稀で少ない。厳冬にも数少く南下し漂行しているようである。シラガホオジロEmberiza leucocephala leucocephalaいままで5回6羽が採集され迷鳥として知られていたが,厳冬の1月下旬頃極めて少数南下し,翌年3月まで越冬する冬鳥である。