著者
陳 建耀 福嶌 義宏 唐 常源 谷口 真人
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.555-564, 2004 (Released:2004-11-19)
参考文献数
32
被引用文献数
3 2

1970年代に黄河から河川水の取水量が増えるにつれて,下流域に断流,地下水汚染及び塩分集積など水環境問題が深刻になってきた.山東省禹城と斉河県の研究地域を例として,自然変化と人間活動を総合してこれらの問題を解析した.まず文献による年代ごとの黄河流域の主な気候・植生変化と人間活動の影響を整理し,三段階の史的区分を行った.つぎに水資源量・人口・耕地の比率と長期間の降水・流量の時系列資料より断流現象を分析した結果,その主な理由が人間活動に由来するのではないかと考えられた.地下水流動系からみると黄河下流域は流出域であり塩分集積が起こりやすいという特徴を持つが,黄河断流が発生しない限り,すなわち黄河からの水が灌漑に利用可能である限り,下流域の農業は持続可能であろう.下流域の浅い帯水層でのみ硝酸が検出されたが,その主な理由は1.2mのZFPの存在,および上向きの地下水流動である.また,窒素同位体の結果に基づき硝酸汚染は化学肥料,人間廃棄物および家畜し尿によるものと思われる.
著者
吉村 雅仁 今泉 眞之 佐倉 保夫 唐 常源
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.19-40, 2003

割れ目の幾何(パターン)が岩盤の透水性や内部の物質挙動に与える影響について明らかにすることを目的とした.アクリル製の角柱ブロックを水槽内に異なるパターンで並べることによって,6種類の模擬割れ目岩盤を作り,トレーサー試験を行った.トレーサーの挙動は,最大64箇所の割れ目交差部でトレーサーの電導度を計測することによって把握した.解析の結果,割れ目パターンの違いは流路長や有効間隙率を変化させ,異なる透水性やトレーサープルームの形状を示すこと,平行板からなる割れ目内における機械的分散現象が生じていることを明らかにした.トレーサープルームの形状の成因については,交差部における流線と拡散ゾーンの概念を導入して考察した.