著者
谷口 真人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.725-738, 1987-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
18 16

新潟県長岡平野における地下水温の形成機構を解明するために,地下水温の時空間分布の観測と熱移流を考慮:した数値解析を行なった.その結果,地下水温鉛直分布の季節変化パターンは特徴的な4つのタイプに分類され,その分布域も地域的な特徴を持つことが明らかになった.また,地下水流動による熱移流を考慮した数値解析により,これらの地域的差異が,地下水の涵養・流出・移流・揚水によって生じたものであることが明らかになった。地下水流動系の涵養域および流出域に出現するタイプは,それぞれ年間を通じた0.01m/dの下向きおよび上向きのフラックスの存在により,恒温層深度が鉛直一次元の熱伝導による計算値より約5m下方および上方へ移動する.河川近傍に出現するタイプは,水平熱移流の影響を受けて全層一様に温度変化する.市街地中心部に出現するタイプは冬期の消雪用揚水により,浅層の高温な地下水が水塊状に下方へ移動することにより説明できた.
著者
陳 建耀 福嶌 義宏 唐 常源 谷口 真人
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.555-564, 2004 (Released:2004-11-19)
参考文献数
32
被引用文献数
3 2

1970年代に黄河から河川水の取水量が増えるにつれて,下流域に断流,地下水汚染及び塩分集積など水環境問題が深刻になってきた.山東省禹城と斉河県の研究地域を例として,自然変化と人間活動を総合してこれらの問題を解析した.まず文献による年代ごとの黄河流域の主な気候・植生変化と人間活動の影響を整理し,三段階の史的区分を行った.つぎに水資源量・人口・耕地の比率と長期間の降水・流量の時系列資料より断流現象を分析した結果,その主な理由が人間活動に由来するのではないかと考えられた.地下水流動系からみると黄河下流域は流出域であり塩分集積が起こりやすいという特徴を持つが,黄河断流が発生しない限り,すなわち黄河からの水が灌漑に利用可能である限り,下流域の農業は持続可能であろう.下流域の浅い帯水層でのみ硝酸が検出されたが,その主な理由は1.2mのZFPの存在,および上向きの地下水流動である.また,窒素同位体の結果に基づき硝酸汚染は化学肥料,人間廃棄物および家畜し尿によるものと思われる.
著者
谷口 真人
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.725-738, 1987
被引用文献数
17

新潟県長岡平野における地下水温の形成機構を解明するために,地下水温の時空間分布の観測と熱移流を考慮:した数値解析を行なった.その結果,地下水温鉛直分布の季節変化パターンは特徴的な4つのタイプに分類され,その分布域も地域的な特徴を持つことが明らかになった.また,地下水流動による熱移流を考慮した数値解析により,これらの地域的差異が,地下水の涵養・流出・移流・揚水によって生じたものであることが明らかになった。地下水流動系の涵養域および流出域に出現するタイプは,それぞれ年間を通じた0.01m/dの下向きおよび上向きのフラックスの存在により,恒温層深度が鉛直一次元の熱伝導による計算値より約5m下方および上方へ移動する.河川近傍に出現するタイプは,水平熱移流の影響を受けて全層一様に温度変化する.市街地中心部に出現するタイプは冬期の消雪用揚水により,浅層の高温な地下水が水塊状に下方へ移動することにより説明できた.
著者
徳永 朋祥 浅井 和見 中田 智浩 谷口 真人 嶋田 純 三枝 博光
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.279-287, 2001-11-30
被引用文献数
2 3

沿岸海底下からの地下水採取技術の開発を行った.ここでは.潜水作業を行うことができるダイバーによって調査が可能な水深(約30から40m)程度までの領域において.海水との混合を防ぎ.かつ大量の地下水採取を可能にすることを目的とした.具体的には.海底下に長さ60cm程度の採水用針を刺し.複数の三方コックとプラスチックシリンジ.マイラーバッグを組み合わせることにより.1回の作業で1リットル以上(最大2リットル程度)の採水を行うことを可能にした.この手法を.黒部川扇状地沖合の淡水湧水地点において適用した.その結果.本手法では.海水との混合をすることなく淡水の地下水を採取することが可能であることを確認した.また.今回の採水では.採水地点(2個所)から各々約1リットルの地下水を採水することができた.採取された地下水の主成分組成および安定同位体の値は.今までに黒部川扇状地の陸域で報告されている値と調和的であった.
著者
谷口 真人
出版者
The Japanese Society of Limnology
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.261-267, 1995
被引用文献数
10

琵琶湖野洲川河口あやめ浜沖において,周辺地下水から琵琶湖へ漏出する地下水量の連続測定を,自記地下水漏出量計を用いて行った。観測期間は1994年3月から1994年10月までであり,合計17,747個の地下水漏出量データと,湖水位及び湖底・周辺地下水の水理水頭のデータを得た。降水量の減少に伴う湖底地下水の動水勾配の低下により,1994年4月から1994年8月にかけて,地下水漏出量の大幅な減少が確認された。また,地下水漏出量と湖底地下水の動水勾配の長期測定により,観測地点の湖底付近の地下水帯水層の透水係数が9.0×10<SUP>-4</SUP>cm・sec<SUP>-1</SUP>程度であることが推定された。今回得られた地下水漏出量および1990年・1991年に得られた漏出量とそれぞれの時期の雨量との関係から,琵琶湖への地下水漏出量は,流域への入力である降水量に大きく依存していることが明らかになった。
著者
谷口 真人
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

地下温暖化が桜の開花にどのような影響を与えるかを明らかにするために、開花の変化トレンドと、地温の経年変化トレンドを明らかにした。桜の開花は日本の103箇所の平均で過去50年に5日開花が早まっており、特に大都市の東京、大阪、名古屋でその開花早期化の傾向は強く、都市化によるヒートアイランド現象が大きな要因であることが明らかになった。桜の開花変化トレンドに最も相関性が高いのは、深度50cmの地温であることが明らかになった。またその開花の違いにおよぼす土壌水分および土壌水質の違いについても調査した。
著者
田原 大輔 杉本 亮 富永 修 谷口 真人
出版者
福井県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

小浜湾への地下水湧出量を222Rn・塩分の収支モデルから推定したところ、地下水は、全淡水流入量の4~44%を占めており、河川流量の低下する夏季にその割合が高くなる傾向にあった。また、地下水から供給される溶存無機態の窒素、リン、ケイ素は、全陸水由来の栄養塩輸送量の平均で39%、58%、37%を占めていた。特に小浜湾の一次生産はリン制限下にあるため、地下水によるリン供給は小浜湾の生物生産において重要な役割を果たしていると考えられた。