著者
岡村 正紀 平井 英治 松岡 信明
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.87-93, 1993-06-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
16
被引用文献数
3 4

The tritium concentrations in rain water collected in Fukuoka, Japan, from April 1987 to July 1991, were measured with the combination of low-level liquid scintillation counting and electrolytic en-richment of tritium in water. The tritium concentration of each rainfall (264 samples) showed the large fluctuation from 0.06 to 3.39 Bq/l. The tritium concentration in rain was significantly affected by the weather conditions. The frequency distributions of tritium concentrations in rain water were shifted to higher side in March, April, May and December. Higher tritium concentrations than 2.0 Bq/l were observed only in March, April and May, when air mass moved dominantly from the Asian Continent to Fukuoka. The annual average concentrations were no longer decreased after 1987 in Fukuoka.
著者
川西 亮太 井上 幹生
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.157-167, 2018-05-31 (Released:2018-08-31)
参考文献数
58
被引用文献数
1 4

水域間のつながりを表す水文学的連結性は河川生態系を理解する上で重要な要素であり,魚類の生活史や生息環境にも密接に関連している。河川と海との縦断方向や河道と氾濫原や陸域とを結ぶ横断方向の連結性については魚類に対する意義が広く認識されている一方,河床の地下部(河床間隙水域)を介した河川表流水域と地下水域との鉛直的なつながりの重要性は理解が遅れている。そこで本稿では,魚類の生活史において,この鉛直的なつながりや河床間隙水域がどのような役割を果たしているのかを概説すると共に,著者らが対象としてきた底生魚ヒナイシドジョウでの事例を紹介する。また,今後の展望についても言及した。
著者
中嶋 博 金子 紘士 土田 稔
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.35-47, 2010 (Released:2012-02-01)
参考文献数
8
被引用文献数
4 9 1

東京都では、大正の初め頃から地盤沈下が起きており、戦後の復興とともに地盤沈下が進行した。特に、昭和30年代から40年代にかけて、地盤沈下は激しくなってきた。このような状況に対し、都は、法律や条例に基づき、地下水揚水規制や地下水位の観測、雨水浸透の推進などの地下水対策に積極的に取り組んできた。その結果、現在東京都における地盤沈下は沈静化傾向にあるが、完全には終息しておらず、地下水位も微増から横ばいで頭打ちの状況にあり、現行の揚水規制を緩和すれば地盤沈下が再発する可能性がある。そのため、地盤沈下を未然に防止する観点から、揚水規制を引き続き維持するとともに、地下水のかん養量を増加させるための施策の推進を一層図る必要がある。本稿では、都における地盤沈下の状況やその対策を振り返りつつ、今後の課題等について概説する。
著者
益田 晴恵
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.295-313, 2000-11-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
89
被引用文献数
3 3

地殻表層付近の水とその周辺環境におけるヒ素の挙動を概観し.ヒ素汚染地下水の形成過程を説明した.ヒ素は.一次的には地殻深部から熱水や火山ガスなどに伴って還元的な物質として供給される.それが.熱水からの直接流入やヒ化鉱物や硫化鉱物の風化作用を含む酸化的化学反応にともない.一部は環境水中へ溶出する.環境水中のヒ素は懸濁粒子に吸着されたり生物遺骸として堆積物中に固定される.堆積物中に固定された物質からの脱着反応と分解反応は地下水中の溶存ヒ素を規制する要因となる.地下での生物化学的作用もヒ素の挙動を規制する重要な要因である.各地で問題になっているヒ素汚染地下水の汚染拡大の要因は単一ではなく.さまざまな現象が組み合わさったものであることが多い.ヒ素は自然循環過程で環境基準を超える濃度を環境水中にもたらすが.人為的作用は汚染の拡大に寄与する.特に.人為的汚染物質の放出は.局所的に高濃度のヒ素汚染層を形成し.その後長期間にわたって汚染を拡散する.
著者
大島 洋志
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.257-281, 2020-05-28 (Released:2020-08-21)
参考文献数
36

筆者は,当時の国鉄に就職し,鉄道技術研究所地質研究室に配属されて以来,これまで55年以上に渡って山岳トンネル,とくに地下水が関わる様々な問題の解決に携わってきた。日本地下水学会誌の特集号に論文を投稿する機会を得たことから,筆者の知見の集大成として,トンネルと地下水に関してこれまでに学んだことを事例とともに紹介する。トンネル内に湧出する地下水を「トンネル湧水」と呼ぶ。論文では,まず,「トンネル湧水のイロハ」として,トンネル湧水の処理および区分,トンネル恒常湧水量の考え方や経緯,トンネル工事の難易は湧水と地圧で決まる理由を事例とともに概説する。そして,「トンネルと地下水との関係について調査・研究したこと」として,水文調査法等の体系化,路線選定,施工法や湧水の有効活用,湧水量実態調査,近接するダムとトンネルとの相互関係,トンネル湧水の水質等の各項について述べることとする。この論文が,トンネルに関わる研究者や技術者の一助になれば,幸いである。
著者
藤縄 克之 飯塚 宏栄
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.139-146, 1990-08-31 (Released:2012-12-11)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1
著者
盛田 耕二
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.243-257, 1994-09-20 (Released:2012-12-11)
参考文献数
32
被引用文献数
2

The realization of heat extraction from magma has long been one of the dreams of mankind because of its huge potential as an energy source. However, current levels of technology, materials and understanding of magma seem to be far from the levels needed. On the other hand, several potential geothermal resources including Hot Wet Rock, Super Hot Rock and magma origin fluid systems lie on the way toward magma. These potential resources should provide suitable places for developing or improving technologies or materials, and for acquiring a deeper understanding of magma.The author's strategy is to begin an R&D program with easier or shallower potential resources, and realizing power generation with them, progressing toward magma step by step. In order to achieve this strategy, the development of a closed system downhole heat exchanger is essential. The author has been proposing the Downhole. Coaxial Heat Exchanger (DCHE) system and carrying out studies on it assuming Hot Wet Rock as the first target.By means of an experiment carried out in Hawaii, it was proved that a highly efficient DCHE is technically feasible and works as predicted. Also, it was indicated by a feasibility study that the. possibility of the practical use of the DCHE system is very high. The next step is to demonstrate the DCHE's ability to produce more than 5 MW / DCHE (the criterion for economical power generation from a middle to long term point of view) with a 3,000m long DCHE at Hot Wet Rock and at the same time to proceed with the development of technologies necessary for the realization of the practical use of the system.On the other hand, there is another possible application of the DCHE. A combined DCHE-heat pump space heating system makes possible the utilization of generally distributed shallow and low quality geothermal resources. This system is applicable for wherever space heating is needed. Hence, huge amounts of thermal energy can also be supplied with the combined heating systems. The author intends to initiate studies regarding the space heating system.Thus, the degree of contribution of the DCHE system in energy and environmental issues may be the greatest among the various heat extraction methods and conventional geothermal steam or brine extraction methods.
著者
村上 裕晃 田中 和広
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.415-433, 2015-11-30 (Released:2016-02-01)
参考文献数
49
被引用文献数
1 3

島根県津和野地域では,塩濃度の高い鉱泉水がガスを伴い自噴している。この鉱泉水とガスについて,湧出箇所と地化学的特徴を調査した。津和野地域の鉱泉水は最大で海水の約半分程度の塩濃度を示す。自噴するガスは二酸化炭素が主成分である。これらの特徴に加え,鉱泉水の水素・酸素同位体比は天水線から外れる組成を示し,希ガス同位体比からマントル由来のヘリウムの混入が示唆される。これらの地化学的特徴と周辺の地質構造から津和野地域の高塩濃度流体の成因を考察すると,津和野地域の高塩濃度流体には地下深部から供給される流体が含まれていると考えられる。しかし,津和野地域の高塩濃度流体に深部流体が含まれているとしても,その寄与量は最大でも4分の1程度である。また,高塩濃度流体の指標となる塩化物イオンのフラックスが活断層周辺で最も高いことから,高塩濃度流体は活断層を主要な水みちとして移動していると推測される。ただし地表付近において,高塩濃度流体は活断層周辺の亀裂も利用していると考えられる。
著者
梁 熙俊 嶋田 純 松田 博貴 利部 慎 董 林垚
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.187-205, 2015-05-29 (Released:2015-06-25)
参考文献数
35
被引用文献数
9

沖縄県南大東島における淡水レンズは貴重な水資源として用いられており,その形状と成因を明らかにするため,本研究では,15ヶ所の観測井における電気伝導度の観測結果を用いて淡水レンズの形状を推定し,地形,地質,地下水位の時系列解析によりその成因を評価した。本地域の地下水位は,潮汐の主要5分潮の周波数で高いシグナルを示し,潮位変動の影響を受けることが明らかになり,島の南側に位置する観測井で相対的に高い透水性がみられ,西側と北東側で低い透水性がみられた。本地域における淡水レンズ(電気伝導度2000μS/cm以下)は,西側と北東側で確認でき,淡水レンズの厚さは,中央低地で10~13m,西側で5~8m,北東側で3~6mであった。なお,透水性の違いや島の西側に多くの池沼・湿地が分布する地形的な理由から,西側の淡水レンズにおいて季節変動がみられた。
著者
西垣 誠
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.283-301, 2020-05-28 (Released:2020-08-21)
参考文献数
83

トンネルや地中構造物を施工することによって地下水環境に与える影響,また,地下水がトンネル施工時に与える影響について,過去の事例を踏まえながらその対応の歴史を解説した。さらに,トンネル施工が地下水環境へ及ぼす悪影響を防ぐために,これまで開発されてきた新しい施工技術の歴史についても概観した。特に,止水方法,水抜き方法それぞれの様々な施工方法とその難しさ,また現場の状況に応じてどのように使い分けるべきか等の考え方について述べた。
著者
小林 正雄 島野 安雄 利部 慎
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.363-375, 2013-11-30 (Released:2014-01-09)
参考文献数
15
被引用文献数
2