著者
喜田 大三 川地 武
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, 1979-09-15

従来, 泥水の調合・管理は主として泥水掘削時の逸泥を含む崩壊防止に重点がおかれていたが, 地中壁体の構造体への利用度が高まると共に, 良質な地中壁体の築造という見地から泥水管理を見直す必要性が生じてきた。特にスライム処理の問題は構造体の性能に重大な影響を与えるものであるので, その点を考慮して室内実験を行い, 各種泥水中のスライム粒子の沈降や堆積の挙動を調査し, 以下の知見を得た。スライム粒子の泥水中における沈降速度はストークスの沈降式に従い, 堆積後に自重圧密を受けて平衡状態に至るが, 自重圧密に要する時間は堆積厚や粘度の増大につれて長くなる。堆積後一夜経過したスライムの間隙比はファンネル粘度の低い泥水中では0.9前後であるのに対し, 粘度が高くなると1.0を越え流動化しやすくなって重錘が容易に沈下する。スライムの沈降促進, 堆積スライムの自重圧密促進や密度増加などを考慮すると, 泥水の粘度は低いことが好ましく, 特にベントナイト泥水の場合にはファンネル粘度の上限値を30秒前後とすることが望ましい。
著者
喜田 大三 川地 武
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, 1982-03-15

地中壁の止水性低下の代表的な要因である, ジョイント部のスライム, マッドケーキについてその発生状況と止水性への影響について検討した。マッドケーキのコンクリートへの付着はベントナイト泥水で著しく, 泥水への浸積時間とともに厚くなり, 2日後には10〜20mmにも及ぶ。ポリマー泥水では付着量は比較的少なく2日後でも1〜2mmである。付着するマッドケーキはコンクリート表面から浚出するCaイオンによるベントナイトあるいは掘削土粒子の凝集によるものであり, 単なる物理的な付着によるものではない。付着したケーキの透水係数は10^<-5>cm/sのオーダーであり, 掘削面に形成されるマッドケーキのそれより大きいが, ケーキを通しての漏水は微々たるものである。ジョイント部のマッドケーキの防止法として行われているブラシなどによるケーキの除去はコンクリート打設の直前でなければ効果は薄く, むしろ, 先行パネルの端部を炭酸塩や炭酸ガスで中性化する方法のほうがより効果的である。