著者
真栄田 裕行 鈴木 幹男 上里 迅 島袋 拓也 仲吉 博紀 嘉陽 祐紀 照喜名 玲奈 金城 秀俊 安慶名 信也 又吉 宣
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.278-283, 2019

<p>食道穿孔は日常診療において時に経験する病態であるが,多くの場合生じた穿孔は頸部や縦隔内と交通するため,頸部感染症や縦隔炎を誘発し,時に重篤となることがある。また開胸を伴う胸部外科手術と頸部手術の併施は,術直後の縦隔炎発生の可能性が高まるため,一般には敬遠されている。</p><p>今回われわれは胸骨正中切開を伴う大動脈弁置換術直後に,歯科用補綴物による頸部食道穿孔をきたした1例を経験した。症例は66歳の女性で主訴は頸部異物である。開胸手術直後に頸部に迷入した異物が確認され,直ちに頸部外切開による異物摘出術および瘻孔閉鎖術が施行された。異物は歯科用補綴物(クラウン)であり,金属製の突起を歯根に埋め込むタイプのものであった。本症例は開胸手術直後であったにもかかわらず頸部外切開手術を全身麻酔下に施行できたこと,異物を速やかに発見・除去できたこと,頸部創と胸部創が連続しないようにしたこと,気管切開を施行せずに術後も気管内挿管のまま気道管理をしたことが重篤な合併症を誘発しなかった理由としてあげられた。</p>
著者
真栄田 裕行 嘉陽 祐紀 金城 秀俊 上里 迅 安慶名 信也 又吉 宣 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.30-37, 2019

<p>今回われわれは気管内壁に再発した頸部気管支嚢胞腺癌の1例を経験した。症例は71歳の女性。甲状腺全摘術および頸部郭清術後ほどなく気管内壁に再発した。腫瘍切除後の気管再建には肋軟骨と歯科用印象材を用いた。構造体としての強度を得るため肋軟骨片により気管外枠を作成した。また歯科用印象材を充填した手術用ゴムグローブを気管内にステントとして留置した。術後3年目腫瘍の再発は認められず,十分な強度と呼吸道としての内腔が保持された気管が再建できた。歯科用印象材は気管内腔を形成するためのステントとして有用な材料である。</p>
著者
真栄田 裕行 比嘉 朋代 嘉陽 祐紀 鈴木 幹男
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.245-250, 2018

<p>抗腫瘍薬の一種であるメトトレキサート(MTX)は,現在では関節リウマチのうち予後不良群に対する第一選択薬として広く用いられている。メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders: MTX-LPD)は,MTX投与中の患者に発生するリンパ増殖性疾患であるが,今回われわれは外耳道に腫瘤を形成したまれなMTX-LPDの一例を経験した。当科においては本例以外に3例のMTX-LPDを経験しているが,原発部位は副鼻腔,上咽頭および頸部リンパ節であり,外耳道発生の報告は国内外の文献を渉猟しても見当たらない。</p><p>症例は66歳の女性。主訴は耳漏,耳痛および耳下部の腫脹である。初診時,右外耳道は線維性瘢痕様の表面平滑な腫瘤で占拠されていた。CTおよびMRI画像所見では,右外耳道入口部に造影効果のある内部不均一な腫瘤が確認された。さらにPET画像では腫脹部位に一致してFDGの高集積が認められ,加えて右頸部リンパ節の多発性腫脹も見られたことから外耳道悪性腫瘍が疑われた。外耳道腫瘤および腫大リンパ節の細胞診のいずれにおいても悪性所見は認められなかったが,外耳道腫瘤の生検でReed-Sternberg細胞が確認された。患者がMTX使用歴を有していたことから,最終的にMTX-LPDと診断された。MTXを中止したのちは一連の所見は速やかに消退した。本疾患とEBVとの関連が示唆されているが,本例においてもEBV感染が示された。</p>