著者
喜友名 朝則 喜瀬 乗基 真栄田 裕行 又吉 宣 比嘉 麻乃 鈴木 幹男
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.24-30, 2016-06-01 (Released:2016-10-28)
参考文献数
38
被引用文献数
3

A laryngeal papilloma is a benign tumor that occurs due to human papilloma virus infection. Although basically benign, the lesions often recur and grow in size. Furthermore, they sometimes show malignant transformation and often suffer from treatment. We performed a retrospective clinical analysis of 15 patients with laryngeal papilloma who were treated at our department over the past ten years. As with previous reports, most cases involved adult males and occupied the glottis. Canceration only occurred in one patient. Human papilloma virus infections were detected in 14 patients. All of the cases involved with type 6 or type 11(benign types)infections. Canceration occurred in one patient who did not show infection. The treatments performed at our center included, surgical resection and/or transpiration by a CO2 laser. Recurrence was observed in some cases. This was treated with multiple surgeries. Remission was achieved by the combination of treatment under local anesthesia and adjuvant therapy. It is difficult to cure laryngeal papilloma radically because it is a viral disease. Thus, we treat the disease as follows; we first confirm the lesion with a laryngeal endoscope under general anesthesia and perform a biopsy; and then conduct resection and/or transpiration using CO2 laser. When recurrence is observed, we immediately attempt extraction or laser transpiration under local anesthesia while the lesion is small. As the number of cases increases, it will be necessary to examine surgical method and postoperative adjuvant therapies.
著者
真栄田 裕行 金城 秀俊 上里 迅 安慶名 信也 又吉 宣 鈴木 幹男
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.112, no.6, pp.397-403, 2019

<p>Introduction</p><p>Although many tumors arising from parapharyngeal space are benign, we sometimes find malignant tumors. We have attempted to examine the clinical findings of parapharyngeal tumor in our institution and to consider how to deal with malignant tumor.</p><p>Materials</p><p>There were 29 cases of parapharyngeal space tumors involving malignancies in our institution.</p><p>Results</p><p>There were 20 benign cases composed of 7 cases of schwannoma, 6 cases of pleomorphic adenoma, 3 cases of paraganglioma, and one case each of cavernous haemangioma, cyst and meningioma, basal cell adenoma. On the other hand, there were 4 malignant tumors composed of one case each of malignant schwannoma, carcinoma ex pleomorphic adenoma, adenoid cystic carcinoma and malignant paraganglioma. We presumed that one cases out of the 4 malignancies cases was a malignant tumor from the preoperative image findings. However, it was difficult to diagnose the other 3 cases with malignancies by investigation.</p><p>Discussion</p><p>Malignant tumors occurring in the parapharyngeal space were distributed salivary gland tumors and others. Because salivary gland tumor grow earlier and invade muscles, nerves and vessels rapidly, it is difficult to treat them radically. On the other hand, because the tumors arising from the salivary gland have a specific pathology, and exhibit slow growth, patients can expect a long life term despite having such tumors. In our examination, death occurred in one case only, the carcinoma ex pleomorphic adenoma.</p>
著者
真栄田 裕行 杉田 早知子 山城 拓也 崎浜 教之 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.53-58, 2019

副咽頭間隙原発の腺様囊胞癌の報告は少なく,本邦の過去の報告は 8例のみであった。今回われわれは副咽頭間隙発生の早期腺様囊胞癌を経験した。患者は63歳の女性。左副咽頭間隙に発生した腫瘤は画像所見からは多形腺腫も考慮されたが,形状や耳下腺との非連続性から神経鞘腫と診断した。経頸部アプローチにより腫瘤が摘出され,術後に腺様囊胞癌と判明した。副咽頭間隙に腺様囊胞癌が生ずる認識があれば,術前に細胞診やFDG-PET検査を施行して正確な診断がついた可能性もある。また治療に関しても腫瘍を明視下に置いた種々の術式により,完全切除も可能であったと思われた。再発時には拡大切除および術後照射が現実的な治療方針ではないかと考える。
著者
上里 迅 真栄田 裕行 金城 秀俊 安慶名 信也 平川 仁 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.233-238, 2020

肺癌患者において開胸下の右上葉切除術と,頸部アプローチによる巨大な腺腫様甲状腺腫(AG)摘出術の同時施行例を経験したので報告する。患者は頸部圧迫感を主訴とする70歳の男性。精査の結果,右肺上葉S2区の肺癌と同時に上縦隔におよぶ右甲状腺腫瘤が発見された。甲状腺腫瘤は気道を圧排し,頸部圧迫感の主因であると考えられたため,肺癌と同時に甲状腺腫瘤摘出が計画された。AGは頸部操作のみで摘出可能であった。術後の経過は極めて順調であったが,縦隔炎や膿胸,胸骨骨髄炎など合併症の発症リスクを抑えるため,気管切開を併施せず,気管内挿管による気道管理を選択したことが理由として考えられた。
著者
金城 秀俊 安慶名 信也 金城 賢弥 喜瀬 乗基 上里 迅 喜友名 朝則 平川 仁 真栄田 裕行 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.331-337, 2020

<p>耳鼻咽喉・頭頸部外科医にとって前頸部腫瘤の症例にはよく遭遇するが,同腫瘤が上縦隔を超えて開胸に至る例は稀である。われわれは頸部から縦隔に連なる巨大成熟奇形腫の1例を経験したため報告する。症例は15歳,男性。当院受診2カ月前に左頸部痛を自覚した。受診1カ月前の学校検診で前頸部腫脹を指摘され前医を受診し,CT検査で頸部から縦隔に連なる腫瘤を認めたため当院紹介となった。腫瘤は可動性不良であり,気管は右に偏位していた。喉頭内視鏡検査では上気道狭窄や声帯麻痺は認めなかった。CT,MRI検査で腫瘤内部に脂肪組織を疑う部分や石灰化を認める嚢胞性病変を認めた。血液検査所見ではSCC抗原が6.8 ng/mlと上昇していた。上記所見より成熟奇形腫と判断したが精査中にも増大傾向にあり,窒息や悪性転化の可能性も否定はできず準緊急的に手術をした。頸部襟状切開とtransmanubrial approachにて腫瘤を摘出した。手術中はECMOをスタンバイしていたがECMOを使用せずに手術は終了した。術後病理は成熟奇形腫で悪性所見は認めなかった。術後一過性に左反回神経麻痺を認めたが,4カ月後には改善した。</p>
著者
金城 秀俊 安慶名 信也 上里 迅 真栄田 裕行 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.67-72, 2020

転移性甲状腺腫瘍は稀であり,特別な画像所見がないため術前に診断をつけることが難しい。われわれは腎細胞癌の甲状腺転移例を経験したので報告する。症例は55歳,女性。当科初診11年前に腎細胞癌により右腎摘出を受けた。受診9年前に膵頭部に再発し同部位を摘出された。受診3-4年前に右甲状腺腫大を認め増大傾向にあった。穿刺吸引細胞診で濾胞性腫瘍疑いの診断を受け,当科を受診した。甲状腺以外に頭頸部領域に腫瘍性病変を認めず,原発性甲状腺悪性腫瘍として葉峡切除術(右葉)+右気管傍郭清術を施行した。術後病理で腎細胞癌の転移と判明した。術後21か月で肺転移を認め追加治療中であるが,頭頸部には明らかな再発を認めていない。
著者
真栄田 裕行 金城 秀俊 安慶名 信也 崎浜 教之 鈴木 幹男
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.176-181, 2019

<p>縦隔内腺腫様甲状腺腫(Adenomatous Goiter:AG)のうち,頸部甲状腺との連続が見られないものは迷入型AGとして扱われている。</p><p>今回われわれは58歳女性で,甲状腺両葉の比較的巨大なAGと縦隔内迷入型AGの同時性発生例を経験した。腫瘤最大径が約8cmの,頸部AGと連続性のない迷入型AGであることに加え,高度の肥満,短頸・猪首例で,頸部を過伸展させても腫瘤が頸部方向に挙上されない例であったため,迷入腫瘤の頸部からの摘出は困難と判断した。ただし悪性腫瘍の可能性は否定されており,手術侵襲を最小限に留めるため頸部外切開とvideo-assisted thoracic surgery(VATS)を組み合わせた摘出術を選択した。</p><p>一般に胸骨下型AGおよび迷入型AGの経頸部アプローチによる摘出限界は,それぞれ大動脈弓上縁,および腕頭動脈上縁であるとの報告が多く見られるが,本症例においても過去の報告に準じて胸骨下AG腫瘤については経頸部法で摘出した。一方迷入腫瘤に対しては安全性を考慮しVATS法を用いて摘出した。VATS法は鎖骨や胸骨の展開を伴うアプローチより低侵襲であり,悪性腫瘍が否定される場合には積極的に併施するべき術式と考えられた。</p>
著者
真栄田 裕行 鈴木 幹男 上里 迅 島袋 拓也 仲吉 博紀 嘉陽 祐紀 照喜名 玲奈 金城 秀俊 安慶名 信也 又吉 宣
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.278-283, 2019

<p>食道穿孔は日常診療において時に経験する病態であるが,多くの場合生じた穿孔は頸部や縦隔内と交通するため,頸部感染症や縦隔炎を誘発し,時に重篤となることがある。また開胸を伴う胸部外科手術と頸部手術の併施は,術直後の縦隔炎発生の可能性が高まるため,一般には敬遠されている。</p><p>今回われわれは胸骨正中切開を伴う大動脈弁置換術直後に,歯科用補綴物による頸部食道穿孔をきたした1例を経験した。症例は66歳の女性で主訴は頸部異物である。開胸手術直後に頸部に迷入した異物が確認され,直ちに頸部外切開による異物摘出術および瘻孔閉鎖術が施行された。異物は歯科用補綴物(クラウン)であり,金属製の突起を歯根に埋め込むタイプのものであった。本症例は開胸手術直後であったにもかかわらず頸部外切開手術を全身麻酔下に施行できたこと,異物を速やかに発見・除去できたこと,頸部創と胸部創が連続しないようにしたこと,気管切開を施行せずに術後も気管内挿管のまま気道管理をしたことが重篤な合併症を誘発しなかった理由としてあげられた。</p>
著者
真栄田 裕行 嘉陽 祐紀 金城 秀俊 上里 迅 安慶名 信也 又吉 宣 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.30-37, 2019

<p>今回われわれは気管内壁に再発した頸部気管支嚢胞腺癌の1例を経験した。症例は71歳の女性。甲状腺全摘術および頸部郭清術後ほどなく気管内壁に再発した。腫瘍切除後の気管再建には肋軟骨と歯科用印象材を用いた。構造体としての強度を得るため肋軟骨片により気管外枠を作成した。また歯科用印象材を充填した手術用ゴムグローブを気管内にステントとして留置した。術後3年目腫瘍の再発は認められず,十分な強度と呼吸道としての内腔が保持された気管が再建できた。歯科用印象材は気管内腔を形成するためのステントとして有用な材料である。</p>
著者
真栄田 裕行 又吉 宣 安慶名 信也 上里 迅 金城 秀俊 鈴木 幹男
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.280-284, 2018
被引用文献数
1

固有鼻腔に発生した平滑筋肉腫の一例を経験した。症例は60歳の女性である。初診時の主訴は右鼻閉および鼻出血であった。初診時所見では右鼻腔内に,固有鼻腔を占拠する表面平滑で赤白色の充実性腫瘤が認められた。腫瘤は易出血性であったため外来での生検は施行されなかったが,肉眼および画像所見より悪性腫瘍が予想されていたため,安全域を十分に確保できる拡大デンケル手術が施行された。術後の免疫組織学的検査により平滑筋肉腫と診断された。切除断端は陰性であった。また術後のアジュバント治療として放射線全量照射70GyおよびVAC療法(vincristine 1.5mg/m<sup>2</sup>,cyclophosphamide 1,200mg/m<sup>2</sup>,actinomycin-D 1.35mg/m<sup>2</sup>)を7クール施行された。現在治療後約5年が経過したが,再発転移は認められず,また整容的にも患者共々満足できる結果が得られた。
著者
金城 秀俊 又吉 宣 安慶名 信也 真栄田 裕行 鈴木 幹男
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.214-218, 2018

<p>73歳,女性。当院受診1週間前にインフルエンザに罹患した。4日前に咽頭痛が出現し,近医で咽頭後壁の腫脹を認めたために,咽後膿瘍疑いで当科紹介となった。</p><p>初診時所見としては,呼吸苦や開口障害は認めなかったが,頸部腫脹・圧痛・嚥下痛を認めた。喉頭ファイバー検査では上咽頭から下咽頭にかけて後壁が全体的に腫脹し,粘膜下血腫の様な色調を認めたが,気道は開存していた。血液検査所見ではWBC:5,900/<i>μ</i>l,CRP:5.36mg/dlであり,CTでは膿瘍を疑うような所見を認めなかった。咽後部の腫脹は血腫であると判断し,保存的加療で症状は軽快した。出血源は画像結果から甲状腺左葉の腫瘤からと判断し,待機的に腫瘤を含め甲状腺左葉切除術を行った。しかし,病理結果からは副甲状腺腺腫からの出血と判明した。</p>
著者
真栄田 裕行 比嘉 朋代 嘉陽 祐紀 鈴木 幹男
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.245-250, 2018

<p>抗腫瘍薬の一種であるメトトレキサート(MTX)は,現在では関節リウマチのうち予後不良群に対する第一選択薬として広く用いられている。メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders: MTX-LPD)は,MTX投与中の患者に発生するリンパ増殖性疾患であるが,今回われわれは外耳道に腫瘤を形成したまれなMTX-LPDの一例を経験した。当科においては本例以外に3例のMTX-LPDを経験しているが,原発部位は副鼻腔,上咽頭および頸部リンパ節であり,外耳道発生の報告は国内外の文献を渉猟しても見当たらない。</p><p>症例は66歳の女性。主訴は耳漏,耳痛および耳下部の腫脹である。初診時,右外耳道は線維性瘢痕様の表面平滑な腫瘤で占拠されていた。CTおよびMRI画像所見では,右外耳道入口部に造影効果のある内部不均一な腫瘤が確認された。さらにPET画像では腫脹部位に一致してFDGの高集積が認められ,加えて右頸部リンパ節の多発性腫脹も見られたことから外耳道悪性腫瘍が疑われた。外耳道腫瘤および腫大リンパ節の細胞診のいずれにおいても悪性所見は認められなかったが,外耳道腫瘤の生検でReed-Sternberg細胞が確認された。患者がMTX使用歴を有していたことから,最終的にMTX-LPDと診断された。MTXを中止したのちは一連の所見は速やかに消退した。本疾患とEBVとの関連が示唆されているが,本例においてもEBV感染が示された。</p>
著者
喜友名 朝則 真栄田 裕行 比嘉 麻乃 鈴木 幹男
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 = The Larynx Japan (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-5, 2012-06-01
参考文献数
15

Objective : The aim of the present study is to clarify central phonation control during high pitch vocalization.<BR>Subjects and methods : The participants were 16 right-handed, healthy adults. Functional magnetic resonance imaging (fMRI) was employed to detect brain activity in response to vowel phonation (&frasl;i:&frasl;) with high pitch. The sparse sampling method for MRI scanning was used to reduce body movement artifacts due to phonation and acoustic artifacts due to scanner noise. The brain activity in response to phonation with comfortable pitch as well as high pitch was measured using the statistic parametric mapping 5 software.<BR>Result : Brain activation specific to high pitch phonation was observed in the anterior cingulate cortex and cerebellum. There was however no specific motor cortex activity during high pitch phonation.<BR>Conclusion : In the central phonation control system proposed by Symonyan et al, subsystem II (periaqueductal gray matter, anterior cingulate cortex, and limbic input structures) is involved in regulating vowel phonation with high pitch.
著者
安慶名 信也 金城 秀俊 真栄田 裕行 鈴木 幹男
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.47-52, 2018

<p>当科にて治療を行ったStageⅣの甲状腺進行癌に関して臨床的検討を行った。25例(男性14例,女性11例)あり,病理型は乳頭癌16例,濾胞癌1例,髄様癌1例,低分化癌1例,扁平上皮癌2例,未分化癌4例であった。乳頭癌はAMES分類において全例ハイリスク群の進行癌であり,根治手術を施行した。5年疾患特異的生存率は83.3%であった。扁平上皮癌と未分化癌症例は早期に原病死しており,全25例の5年粗生存率は48.4%と低かった。乳頭癌16例中9例で反回神経を切除し,4例で神経再建を施行した。再建例はいずれも良好な発声を維持できていた。反回神経非切除例の無病生存率は反回神経切除例より有意に高かった。甲状腺乳頭癌の反回神経浸潤例は遠隔転移のリスクが高いだけでなく,局所再発の指標となりうるため,十分な治癒切除と再発・転移の早期発見・治療が重要である。</p>
著者
饒波 正史 喜友名 朝則 喜瀬 乗基 杉田 早知子 近藤 俊輔 又吉 宣 真栄田 裕行 我那覇 章 古波蔵 健太郎 鈴木 幹男
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-6, 2018

<p>IgA腎症に対し口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法を併用し6年以上の長期経過観察を実施しえた44症例を対象に,長期腎機能予後と遺残扁桃・ワルダイエル輪の代償性肥大・炎症所見について調査した。低・中リスク群では27例中26例で腎機能が保持されていた。一方,高・超高リスク群では,腎機能保持は8例,腎機能低下は8例(2例の末期腎不全・透析導入)となっていた。腎機能維持のためには腎機能が保たれている早期に口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス治療を行うことが重要と推定された。口蓋扁桃遺残は9%であった。アデノイド肥大は軽度が多いが,舌扁桃は19%に肥大を認めた。しかし,口蓋扁桃遺残,アデノイド肥大,舌扁桃肥大と腎機能予後には明らかな関係を認めなかった。炎症所見はアデノイドでは発赤,びらん,膿汁付着を陽性所見とし,舌扁桃では膿栓があるものを陽性所見とした。鼻咽腔ファイバー検査を実施できた42例中,23例は両方に炎症所見なし,5例で上咽頭のみ炎症所見あり,7例で舌扁桃のみ炎症所見あり,4例で上咽頭及び舌扁桃に炎症所見ありであった。透析に至った2例中1例では上咽頭に炎症所見を認めた。上咽頭,舌扁桃の炎症所見の有無と腎機能予後に明らかな関連を認めなかった。IgA腎症における口蓋扁桃摘出術後の長期予後と,上咽頭炎の関係を明らかにするためにさらなる調査が必要である。</p>
著者
山城 拓也 真栄田 裕行 又吉 宣 安慶名 信也 喜瀬 乗基 鈴木 幹男
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.25-31, 2017

<p>頭頸部領域外に発生した悪性腫瘍が、頭頸部領域のリンパ節や臓器に転移する例をしばしば経験する。しかし転移性腫瘍のほとんどは孤発性であり、本症例のように頭頸部の複数の臓器やリンパ節へ同時性に転移する例はそれほど多くはないと思われる。今回われわれは頭頸部領域に多発転移した胃腺癌の 1 例を経験した。本症例では下顎骨、喉頭蓋、複数の頸部リンパ節に転移が認められた。多発転移もまれだが、特に胃癌の喉頭蓋を含む喉頭への転移は文献上報告されていない。患者は 80 歳の男性。主訴は下顎骨歯肉部の腫瘤であった。初期の病理診断が低分化癌であり、また腹部症状を認めなかったため腫瘍を含む下顎骨切除術がまず施行された。その後に胃癌の転移であることが判明し、化学療法による根治治療を図ったが、胃癌の進展に伴う全身状態の悪化により、初見から 6 カ月目に死亡した。</p>
著者
真栄田 裕行 安慶名 信也 金城 秀俊 上里 迅 平川 仁 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.396-402, 2017

<p>甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患として知られており,治療の有無にかかわらず確定診断後1年以上の生存を見ることはまれである。近年新たな治療法としてレンバチニブやソラフィニブ等の分子標的薬が登場したが,現状では手術が根治治癒の期待できる第一選択であることに変わりはない。2012年甲状腺未分化癌コンソーシアムにおいて,未分化癌に関する予後規定因子およびそれに基づいた個別化治療指針が提唱された。今回当科で経験した未分化癌症例の治療と,コンソーシアムにおける治療指針がどの程度合致するか検証した。その結果,個別化治療指針の内容はかなりの程度で許容できるものであり,未分化癌治療方針決定の一助となり得ると思われた。ただし現状の予後不良因子該当数のみですべての治療方針を決定するのは困難であり,実際には患者ごとの検討が必要であることは言うまでもない。</p>
著者
山城 拓也 真栄田 裕行 又吉 宣 安慶名 信也 喜瀬 乗基 鈴木 幹男
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.113-117, 2017
被引用文献数
1

<p>Compensatory hypertrophy of the lingual tonsil can develop after extraction of the palatine tonsil, causing dyspnea and a feeling of suffocation. Sometimes, such patients present with physical airway obstruction, and in some cases, surgical treatment is warranted for the enlarged lingual tonsil. Our patient reported herein presented with inspiratory dyspnea caused by compensatory hypertrophy of the lingual tonsil 20 years after she had undergone enucleation of the palatine tonsil passed after palatine tonsil. We performed extraction of the lingual tonsil using an FK-WO retractor and obtained good results. We present the case herein.</p><p>The patient was a 54-year-old woman who presented to our department with the chief complaint of dysphagia, mild dyspnea and dysphonia. The patient had undergone bilateral palatine tonsil enucleation as treatment for sleep apnea syndrome 20 years earlier. The endoscopic findings at the initial diagnosis consisted of a markedly enlarged lingual tonsil with constriction of the pharyngeal cavity at the site. Moreover, a portion of the enlarged tonsil hung down like a pendulum and invaginated into the glottis during inspiration. The patient was diagnosed as having airway stenosis due to compensatory hypertrophy of the lingual tonsil. Because of the difficulty in intubation caused by the enlarged lingual tonsil, we undertook airway maintenance by tracheotomy and induced general anesthesia of the patient. Then, we carried out resection of the enlarged tonsil by Transoral Video-Laryngoscopic Surgery (TOVS) using the FK-WO retractor. We also resected a portion of the epiglottis, because the transformed epiglottis has already become useless. At present, one year since the surgery, there has been no recurrence of the symptoms and the airway continues to be maintained well too.</p><p>There have been no other case reports of inspiratory airway obstruction caused by hanging down into the airway, like a pendulum, of a part of an enlarged lingual tonsil.</p>
著者
真栄田裕行
雑誌
耳喉頭頸
巻号頁・発行日
vol.70, pp.179-182, 1998
被引用文献数
4