著者
國弘 保明
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
日本橋学館大学紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.19-28, 2012

大学入学以前と以後では生活や学習のスタイルが全く異なり、大学に於ける初年次はそれまでの学校とのギャップに悩む学生が少なくない。また、留学生は入学するまでに学んできた外国語としての日本語で高度な専門科目を受講する必要があり、二重の困難を感じることとなる。実際に留学生を対象としたインタビューでは、専門科目の学習に困難を訴える学生が数多くいた。本稿は上記の訴えを念頭に、日本橋学館大学で開講されている講義のうち、1 年生を対象としている科目に於いて教科書として指定されている書籍の日本語を語彙面から分析した。これにより、入学直後の留学生がどのような日本語に触れているか、その一端を把握し、留学生の学習の手助けを志したいと考えたためである。分析の結果、教科書の理解には、日本語能力試験の旧基準によるところの「旧2 級語彙」の理解が定量的な観点から必要であることがわかった。また、日本語能力試験の旧基準に含まれない「級外語彙」が頻出することもわかった。この級外語彙は日本語教育では扱いにくく、留学生になじみがないものではあるが、傾向として頻出するものとそうでないものがあることもわかった。この頻出する級外語彙こそ重要な専門用語といえるだろう。今後の課題として、頻出する級外語彙を日本語教育の場でいかに扱うか、他分野との連携を視野に入れて考察する必要がある。また、講義中の教員の発話といった異なる場面の日本語の分析や、文型面からの分析も有効であると思われる。
著者
北澤 正志 橋本 美香 國弘 保明 根来 麻子
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.165-173, 2019

社会変動の激しい現代社会においては,確かな情報収集と論理的思考力に基づく課題解決能力の育成が重視されている.こうした学力の育成に,高等学校の学習指導要領で示されている「論理の構成や展開を工夫し,論拠に基づいて自分の考えをまとめること」という意見文の学習は有効である.「書くこと」に関する学習活動は「思考力,判断力,表現力」を鍛え,課題解決に対する資質・能力の向上に繋がる.しかし,大学に入学した時点では,主体的に情報収集を行うという姿勢が身についておらず,事実と意見を区別する表現さえあいまいである.そこで,本稿では,高等学校の「書くこと」に関する学習活動について,具体的にどういう点に課題があるのかを明らかにすることを目的とした.このための方法として,本学の必修科目「文章表現」の受講者を対象としてアンケートを実施し,高等学校の「書くこと」に関する指導の現状と学生の実態を分析した.その結果,高等学校においては,主体的な情報収集,客観性の高い資料に基づいて書くという経験が少ないことが明らかとなった.このことから,大学の初年次教育においては,こうした現状をふまえて指導しなければならないことが示唆された.また,課題解決能力の育成のためには,高等学校の「書くこと」の学習活動における情報収集から推敲にいたるまでの学習過程を具体的に構成する必要があるという今後の課題が明らかとなった.