著者
圓口 智子 湯川 夏子 中西 洋子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.166-171, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究の目的は,乾燥米麹から調製した自家製塩麹のカゼイン分解活性の特性を明らかにすることである。本研究により以下のことが明らかになった。 1) 塩麹のカゼイン分解活性は24℃,7日間の発酵・熟成で84%に低下したが,以後冷蔵庫保存2ケ月間,同レベルの活性を維持した。一方,塩麹の糖度は7日間の発酵・熟成で10%から20%に増加し,以後微増した。塩濃度は調製・保存の全期間を通じて約11%であった。 2) 活性測定に用いた塩麹10倍希釈液によるカゼインの分解は,少なくとも6時間は反応時間に比例して進行した。SDS-PAGEでも,カゼインタンパク質の分解を確認した。 3) 塩麹原液のカゼイン分解活性は,50℃,30分間放置では変化が認められなかったが,さらに高温に放置することにより活性の低下が認められた。 4) 塩麹のカゼイン分解活性は,生姜の約3倍,キウイフルーツの約1/8であった。
著者
圓口 智子 湯川 夏子 中西 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】近年、「万能調味料」として塩麹が注目を集めており、塩麹を利用した料理レシピ本が数多く出版されている。塩麹には食材に塩味を付けるだけでなく、麹の持つタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)やデンプン分解酵素の作用による栄養素の吸収促進や素材のうま味を引き出す効果が期待されている。塩麹は家庭において、麹に食塩と水を加え、約1週間室温で発酵・熟成させて作ることができる。また、購入後すぐ使える塩麹も市販されている。これら塩麹を効果的に利用するためには、含まれる酵素の性質を理解する必要がある。本研究の目的は、自前で調製した塩麹および市販塩麹の持つプロテアーゼの諸性質を明らかにすることである。<br>【方法】塩麹は、乾燥米麹「みやここうじ」((株)伊勢惣)を用いて調製した。また、メーカーの異なる市販塩麹を購入し、使用した。プロテアーゼ活性は、カゼイン消化法(37℃)により測定し、1分間に280nmの吸光度を1.0増加させる活性を1unitとした。<br>【結果】塩麹10倍希釈液を用いた測定では、少なくとも反応時間4時間までは反応時間に比例してカゼインの分解が進行した。しかし、10倍希釈液を50℃30分間放置することで、プロテアーゼ活性(カゼイン分解活性)は42%に低下した。発酵・熟成前(調製0日目)のプロテアーゼ活性は0.15&plusmn;0.017unit/g原液であり、24℃、7日間の発酵・熟成で0.12&plusmn;0.011unit/g原液(残存活性84%)となった。以後、冷蔵庫保存1ケ月間、同レベルの活性を維持した。一方、食塩無添加の場合、24℃、7日間でプロテアーゼの残存活性は20%に低下した。市販塩麹の中にはプロテアーゼ活性の検出できないものがあった。