著者
田中 勝博 土田 恭史 今野 裕之 丹 明彦
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.49-61, 2008

本研究は,卵画と洞窟画における描画内容および対象者の自己印象評定と自己イメージとの連関について検討した。その結果,自己イメージの違いによって,卵画や洞窟画に投影される描画アイテムが異なることが示唆された。自己イメージ高群は明るく,構成的な描画を行うのに対して,低群は暗く非構成的な描画を行うことが多い傾向が認められた。描画に対する印象評価は,描出された描画の全体的な印象や構成度などによって影響を受けるが,自己イメージも描画の印象評定に影響をおよぼすことがうかがわれた。
著者
土田 恭史
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.63-73, 2008

本研究は,長期の自己コントロールにともなうストレスと対処行動におけるセルフモニタリングの役割について,長期にセルフケアを続けなければならない慢性疾患患者を対象としてセルフモニタリングの認知面・行動面の違いによる影響について検討した。対象者を4つのセルフモニタリング型に分類し,セルフモニタリングの違いと,セルフケア維持に伴う心理的ストレス(抑うつ)及び対処法略との関連を検討した。その結果,高セルフモニタリング群では心理的負担感や抑うつ傾向が低いことが見出された。また,モニタリングに対する認知水準が高い群では病気との折り合いが高かったことから,セルフモニタリングによる自我関与の高まりが病気との折り合いを形成することを促進し,心理的負担感を緩和すると考えられた。
著者
土田 恭史 福島 脩美
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-33, 2006

本研究の目的は慢性疾患患者の「病気との折り合い」の構造とその影響について検討することである。糖尿病(以下DM)患者を対象に、患者にとっての病気との折り合いがどのような構造をもち、それが病気に対してどのような影響をもつのかを検討した。総合病院内科を受診したII型DM患者99名(男性59名、女性40名)に対し、TEG、CMI、筆者と臨床心理士によって作成した「糖尿病に関する意識調査」による質問紙調査を実施した。身体的変数(血糖状態)、精神症状的問題、性格、病気に対する態度、生活習慣・生活状態を説明変数とし、「病気との折り合い」を従属変数とするステップワイズの重回帰分析を行った結果、「DM安定感」、「自己管理傾向」、「治療満足度」、「罹患期間」が有意な正の説明変数として得られた。血糖状態は有意な説明変数とならなかった。慢性疾患患者にとっては、主観レベルで病気を苦痛と感じないですむことは、QOL向上につながる可能性がある。また、患者が主体的に自分自身の治療に関与することは、客観的な体調の良さに劣らず、患者に病気との折り合いを導き出すと考えられた。
著者
福島 脩美 高橋 由利子 松本 千恵 土田 恭史 中村 幸世
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-12, 2005

カウンセリング研修における、話し手・聴き手演習の効果について検討した。研究1では、小集団で話し手・聴き手演習を実施し、実施前後に感情気分評定を、体験後に感想を自由記述で求め、話し手・聴き手演習の効果について検討した。研究2では、1群に2者間相互話し手・聴き手演習を、もう1群に想定書簡法を実施し、実施前後に感情気分評定を求め、話し手・聴き手演習と想定書簡法の効果について比較検討した。その結果、話し手・聴き手演習による、肯定的感情気分の促進効果と否定的感情気分の低減効果がみられ、話し手・聴き手演習は、想定書簡法に比べて、実施前の感情気分状態が実施後の肯定的な感情効果と有意に関連していることが示唆された。また、本研究では、感情気分評定20の効果測定ツールとしての有効性が認められた。
著者
福島 脩美 土田 恭史 森 美保子 松本 千恵 鈴木 明美
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-75, 2007

カウンセリング研修参加者間の話し手・聴き手役割演習(模擬カウンセリング)において,まず個別方式(2人の間で相互に話し手と聴き手を交代)で実施し,次に集団(井戸端会議)方式(小集団内で1人の話し手に他の参加者が共同の聴き手になって順次全員が話し手となる方式)で実施し,最後に一人で想定書簡によって経験の整理を行うという3つの演習をセットにしたプログラムを開発し,その効果を体験振り返り評定と感情気分評定によって検討した。体験振り返り評定は,先行研究の参加者体験報告(自由記述)をもとに項目化し,専門家の点検と因子分析を経て,クライエント体験評定については2因子(関係性因子と効果性因子),カウンセラー体験評定については1因子(共感的傾聴成分)が同定され,3つの尺度が作成された。そして事前の感情気分評定の後,研修プログラムを構成する各方式の直後に感情気分評定とクライエント/カウンセラー体験の評定を求めた。その結果,感情効果(肯定的感情の促進と否定的感情の緩和)においても,クライエント体験(関係性と効果性)評定とカウンセラー体験(共感的傾聴)評定においても,個別方式の効果をその後の集団(井戸端会議)方式がさらに促進すること,そして想定書簡の後には幾分か低下することが認められた。この結果から,それぞれの方式の特徴と意義について考察した。
著者
土田 恭史 福島 脩美
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.85-93, 2007

認知行動的立場における行動コントロールにおいて,セルフモニタリングは行動に対するモニタリングだけでなく,モニタリングされた行動に対する認知も重要とされている。これまでの尺度は行動面のモニタリングを重視するもので,自己コントロールにおける認知的・行動的側面のセルフモニタリングを測定する尺度としては不十分なものであった。本研究では,従来の研究で検討されてこなかったモニタリングに対する認知的態度を含めたセルフモニタリング尺度の作成を目的とした。調査1で改訂版セルフモニタリング尺度および後藤アレキシサイミア尺度を元に新たなセルフモニタリング尺度を作成し,96名の対象者に実施した。因子分析の結果,「行動モニタリング(α=.854)」,「環境モニタリング(α=.768)」,「モニタリング認知(α=.779)」の17項目3因子が得られた。調査2ではこの尺度の妥当性を検討するため,自意識尺度と内省尺度との関連性について検討した。その結果,「行動モニタリング」,「環境モニタリング」,「モニタリング認知」因子はいずれも自意識尺度,内省尺度と有意な相関が認められた。以上のことより本尺度はセルフモニタリングを測定する尺度として妥当であると考えられた。