著者
住沢 佳子 福島 脩美 Yoshiko Sumizawa Osami Fukushima 目白大学大学院心理学研究科 目白大学人間学部 Mejiro University Graduate School of Psychology Mejiro University Faculty of Human Sciences
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.111-123, 2008

人型シールは,充分な面接時間がとれずとも質的に低下せず,圧迫感を与えない方法でクライエントの対人関係や対人距離感を知ることを目的とし主に学生相談の中でタックシール(住沢,2002),HRシール(Human Relation seal)(住沢,2003),そして人型シールと徐々に形を変えて導入されてきた。本研究は,クライエントによって認知された対人関係を的確に査定するため,また面接の話題を具体化する道具としても活用することを目的に開発するものである。本稿は人型シール開発のための一連の研究の1つとして人型シール同士の方向,距離,大小,上下について調べた。調査方法としては,大人と子供,好きな相手,過小評価,支配的,味方,板ばさみなどを含む事例を参加者が人型シールで表現し,表現された人型シールから,方向,距離,大小,上下の特徴を調べた。その結果,たとえば互いに好意を持つ関係を表現する場合,2人を向かい合わせに貼るという表現もあるが,近くに貼ることで表現されること,つまり,方向と距離の表現の関係が明らかになった。大小に関しては大人と子供の表現の他に大きく感じる人には大,小さく感じる人には小の人型シールが使用されることがわかった。また上下に関しては立場の強い人が上,立場の弱い人が下に貼られる傾向がみられた。また,貼られた人型シールに漫画の描き込みが多く見られ,人型シールによるクライエント理解に新たな側面を見出すことができた。The "Hitogata-seal" (person form seal) was developed as a tool of adequate assessment of perceived interpersonal relationship in the counseling situation. Also it was expected to become a interaction topic between client and counselor. This paper was one of research projects with hitogata-seal. Participant were given the brief description of two cases in which interpersonal relationship were presented, and were asked to express their perception by arranging of hitogata-seals, in direction, distance, size, and position. The results were the following : The distance was related to the direction for each other. A large seal showed a adult, and a small one expressed a child. In addition, a large seal was used also for the person whom the participant felt important or influential, and a small one as unimportant or weak. A person in strong position was arranged in upper part, and a person in weak was arranged below. A lot of cartoons were drawn on the hitogata-seal. This was able to find a new aspects to the client understanding with hitogata-seal.
著者
土田 恭史 福島 脩美
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-33, 2006

本研究の目的は慢性疾患患者の「病気との折り合い」の構造とその影響について検討することである。糖尿病(以下DM)患者を対象に、患者にとっての病気との折り合いがどのような構造をもち、それが病気に対してどのような影響をもつのかを検討した。総合病院内科を受診したII型DM患者99名(男性59名、女性40名)に対し、TEG、CMI、筆者と臨床心理士によって作成した「糖尿病に関する意識調査」による質問紙調査を実施した。身体的変数(血糖状態)、精神症状的問題、性格、病気に対する態度、生活習慣・生活状態を説明変数とし、「病気との折り合い」を従属変数とするステップワイズの重回帰分析を行った結果、「DM安定感」、「自己管理傾向」、「治療満足度」、「罹患期間」が有意な正の説明変数として得られた。血糖状態は有意な説明変数とならなかった。慢性疾患患者にとっては、主観レベルで病気を苦痛と感じないですむことは、QOL向上につながる可能性がある。また、患者が主体的に自分自身の治療に関与することは、客観的な体調の良さに劣らず、患者に病気との折り合いを導き出すと考えられた。
著者
福島 脩美 高橋 由利子 松本 千恵 土田 恭史 中村 幸世
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-12, 2005

カウンセリング研修における、話し手・聴き手演習の効果について検討した。研究1では、小集団で話し手・聴き手演習を実施し、実施前後に感情気分評定を、体験後に感想を自由記述で求め、話し手・聴き手演習の効果について検討した。研究2では、1群に2者間相互話し手・聴き手演習を、もう1群に想定書簡法を実施し、実施前後に感情気分評定を求め、話し手・聴き手演習と想定書簡法の効果について比較検討した。その結果、話し手・聴き手演習による、肯定的感情気分の促進効果と否定的感情気分の低減効果がみられ、話し手・聴き手演習は、想定書簡法に比べて、実施前の感情気分状態が実施後の肯定的な感情効果と有意に関連していることが示唆された。また、本研究では、感情気分評定20の効果測定ツールとしての有効性が認められた。
著者
福島 脩美 土田 恭史 森 美保子 松本 千恵 鈴木 明美
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-75, 2007

カウンセリング研修参加者間の話し手・聴き手役割演習(模擬カウンセリング)において,まず個別方式(2人の間で相互に話し手と聴き手を交代)で実施し,次に集団(井戸端会議)方式(小集団内で1人の話し手に他の参加者が共同の聴き手になって順次全員が話し手となる方式)で実施し,最後に一人で想定書簡によって経験の整理を行うという3つの演習をセットにしたプログラムを開発し,その効果を体験振り返り評定と感情気分評定によって検討した。体験振り返り評定は,先行研究の参加者体験報告(自由記述)をもとに項目化し,専門家の点検と因子分析を経て,クライエント体験評定については2因子(関係性因子と効果性因子),カウンセラー体験評定については1因子(共感的傾聴成分)が同定され,3つの尺度が作成された。そして事前の感情気分評定の後,研修プログラムを構成する各方式の直後に感情気分評定とクライエント/カウンセラー体験の評定を求めた。その結果,感情効果(肯定的感情の促進と否定的感情の緩和)においても,クライエント体験(関係性と効果性)評定とカウンセラー体験(共感的傾聴)評定においても,個別方式の効果をその後の集団(井戸端会議)方式がさらに促進すること,そして想定書簡の後には幾分か低下することが認められた。この結果から,それぞれの方式の特徴と意義について考察した。
著者
磯貝芳郎 福島脩美著
出版者
自由国民社
巻号頁・発行日
1978
著者
土田 恭史 福島 脩美
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.85-93, 2007

認知行動的立場における行動コントロールにおいて,セルフモニタリングは行動に対するモニタリングだけでなく,モニタリングされた行動に対する認知も重要とされている。これまでの尺度は行動面のモニタリングを重視するもので,自己コントロールにおける認知的・行動的側面のセルフモニタリングを測定する尺度としては不十分なものであった。本研究では,従来の研究で検討されてこなかったモニタリングに対する認知的態度を含めたセルフモニタリング尺度の作成を目的とした。調査1で改訂版セルフモニタリング尺度および後藤アレキシサイミア尺度を元に新たなセルフモニタリング尺度を作成し,96名の対象者に実施した。因子分析の結果,「行動モニタリング(α=.854)」,「環境モニタリング(α=.768)」,「モニタリング認知(α=.779)」の17項目3因子が得られた。調査2ではこの尺度の妥当性を検討するため,自意識尺度と内省尺度との関連性について検討した。その結果,「行動モニタリング」,「環境モニタリング」,「モニタリング認知」因子はいずれも自意識尺度,内省尺度と有意な相関が認められた。以上のことより本尺度はセルフモニタリングを測定する尺度として妥当であると考えられた。