著者
藤井 博英 山本 春江 角濱 春美 村松 仁 中村 恵子 坂井 郁恵 田崎 博一
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

現代医療には、「やまい」を持った時に生じる不安や苦悩への対処ケアが不足していると言われている。青森県地方では、それをシャーマンが補完している実態がある。本研究の目的は、シャーマンのもたらす"癒し"の実態から看護実践に還元できる内容を抽出することである。そこで、いたこのA氏に対して相談内容や、役割についてインタビューを行った。利用者は、病気治療にかぎらず、ふりかかった不幸や災いなど人生の問題場面に幅広く相談していた。それらの相談にイタコは、"口寄せ"により対処し、問題の因果応報を判断して、指示的に関わり行動化させることで"癒し"をもたらしていた。さらに、シャーマンを訪れた経験のある外来患者に対して、シャーマンがもたらす"癒し"について半構成的インタビューを行った。その結果、「対処方法を教えて欲しい」「原因が霊的なたたり、障りでないか判断して欲しい」と望み、「めどが立つ(見通し)」「前向きになれる」「やる気になる」「腹をくくる」などの心情の変化を体験していた。患者の「前向きになれる」「やる気になる」など、力を蓄え、発揮させるというエンパワーメントが行われていた。また、これらに関わる外来看護師に"癒し"について半構成的インタビューを行った。その結果、患者が「癒される」感情を<ホッとする><安らぎ><安心><和む><リラックス>などと捉えており、この対応として<傾聴的な態度><患者に寄せる関心><自己(患者)の存在の承認><その人らしい日常生活が送れるサポート>など行っていた。シャーマンの"癒し"は、ある程度行動を強制することにより「力を与える」方向に、一方ナースは、患者の心情を受け入れ保障する方向に関わっており、患者の必要としている"癒し"は、その両者を含んでいるのではないかと考えられる。
著者
水野 恵理子 坂井 郁恵 高田谷 久美子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.223-229, 2022-07-25 (Released:2022-10-17)
参考文献数
17

本研究の目的は,統合失調症者にとって一般就労がどのような意味をもっているのかを明らかにすることである。対象は,一般就労している統合失調症者12名とし,個別の半構成的面接を行い,逐語録を内容分析した。分析の結果,統合失調症をもつ就労者である自分との対峙,一社会人になることへの促しの2つのカテゴリを抽出した。一般就労は,病気を抱える就労者である自分と向き合い,誇りの再獲得をもたらすものであった。
著者
坂井 郁恵 水野 恵理子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_32-3_41, 2011-09-20 (Released:2011-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

目的:地域で生活する精神障害者の生きがいの具体的内容と特徴,生きがいに影響を与える体験を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,3年以上地域生活を続け研究に同意が得られた精神障害者17名であり,半構成的面接を実施し,得られたデータを質的に分析した.結果:生きがいの内容を示す5つのカテゴリ【他者の存在と関わり】【現在の生活への肯定的な感情】【趣味】【信仰】【仕事】と,生きがいに影響を与える要因を示す6つのカテゴリ【自覚する症状と病気】【他者による肯定的な理解と助言】【現在の生活】【あえて距離をとる対人関係】【家族との関係】【生きがいの気づきにくさ】が抽出された.結論:地域で生活する精神障害者は,自分を理解し支えてくれる他者の存在や,現在の生活への肯定的な感情,現在の趣味を生きがいとしている者が多くみられ,生きがいは普段の生活の中に多様に存在していた.また,生きがいの気づきにくさをもつ者もおり,精神障害者にとって他者の関わりは重要であると考えられた.