著者
水野 恵理子 坂井 郁恵 高田谷 久美子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.223-229, 2022-07-25 (Released:2022-10-17)
参考文献数
17

本研究の目的は,統合失調症者にとって一般就労がどのような意味をもっているのかを明らかにすることである。対象は,一般就労している統合失調症者12名とし,個別の半構成的面接を行い,逐語録を内容分析した。分析の結果,統合失調症をもつ就労者である自分との対峙,一社会人になることへの促しの2つのカテゴリを抽出した。一般就労は,病気を抱える就労者である自分と向き合い,誇りの再獲得をもたらすものであった。
著者
坂井 郁恵 水野 恵理子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_32-3_41, 2011-09-20 (Released:2011-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

目的:地域で生活する精神障害者の生きがいの具体的内容と特徴,生きがいに影響を与える体験を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,3年以上地域生活を続け研究に同意が得られた精神障害者17名であり,半構成的面接を実施し,得られたデータを質的に分析した.結果:生きがいの内容を示す5つのカテゴリ【他者の存在と関わり】【現在の生活への肯定的な感情】【趣味】【信仰】【仕事】と,生きがいに影響を与える要因を示す6つのカテゴリ【自覚する症状と病気】【他者による肯定的な理解と助言】【現在の生活】【あえて距離をとる対人関係】【家族との関係】【生きがいの気づきにくさ】が抽出された.結論:地域で生活する精神障害者は,自分を理解し支えてくれる他者の存在や,現在の生活への肯定的な感情,現在の趣味を生きがいとしている者が多くみられ,生きがいは普段の生活の中に多様に存在していた.また,生きがいの気づきにくさをもつ者もおり,精神障害者にとって他者の関わりは重要であると考えられた.
著者
岩﨑 みすず 水野 恵理子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_101-4_109, 2009-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
25

統合失調症患者の地域生活において家族の支援は重要であり,今後,高齢化する親に代わってきょうだいの存在が注目される。本研究では,統合失調症患者のきょうだいの体験を明らかにすることと,支援の方向性への示唆を得ることを目的として,きょうだいへの半構成的面接を思いと対応に注目して分析した。 長い経過を経ても,病気と患者の受け入れに対する葛藤を抱えてアンビバレントな心的態度が認められ,患者のきょうだいであることを不名誉に感じることが,他者に配慮する姿勢につながっていると考えられた。しかし,患者を抱えた負担感を持ちながらも,患者のニーズとともに,自身のニーズの充足に対処しており,体験をとおして自分の存在や生き方に新たな価値観を見出していた。きょうだいが抱えるアンビバレンスの理解と,きょうだいのニーズを的確に把握して,医療や社会資源とのつながりが保てるように支援していく必要性が示唆された。
著者
岩崎 みすず 水野 恵理子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.36-42, 2013-04-30 (Released:2017-12-28)
参考文献数
16
被引用文献数
2

本研究は,統合失調症の子どもをもつ父親へのインタビューを通して,父親の,子どもと病気への対処と病気との向き合い方を明らかにすることを目的とした。3名の父親へ,子どもの症状や日常生活の様子,子どもへの対処,家族や自身の生活などについて半構成的面接を行い,質的に分析した。その結果,父親の対処と向き合い方に関して,【家族への気遣い】と【父親としての在り様】の2つのテーマが得られた。父親は,母親とは異なる責任感をもって子どもと接していると考えられ,家族など周囲の人々と少し距離を置き,間接的に統合失調症の子どもの日常的ケアを行っていた。父親が子どもに対応していると考える程度と,母親が考える程度にはズレがあるため,父親が他の家族のかかわりをサポートする形で日常的ケアを行っていることを,妻たちに理解してもらう必要がある。また,自分の感情を表出することが少なく,専門職者ともつながりにくい傾向があるため,父親自身がケアされる場の提供が望まれる。
著者
水野 恵理子
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.26-32, 2017 (Released:2017-08-09)
参考文献数
32

【要旨】WHOの統計によると、現代は4人に1人は一生のうちに何らかの精神疾患を患う時代であり、精神医療福祉は、施設ケアから地域ケアへの移行が進められている。精神科入院患者の6割を占める統合失調症の中核症状の一つは、認知機能障害であり、様々な生活のしづらさが生じる。統合失調症はその人を圧倒する勢いをもつかのようにみなされる傾向があるが、彼らは現実的な目標や希望をもち、日々模索しながらより良く生きる努力をしている者は多い。本人の自覚が問われる病気・障害からの回復を支えるための精神科リハビリテーションの一層の充実化が求められる。
著者
羽山 由美子 水野 恵理子 岡田 佳詠 下枝 恵子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.28, pp.116-122, 2002

海外の精神看護学分野の学会動向について,インターネット検索も交えながら,ここ数年かけて筆者らが実際に参加して把握した諸状況を報告した。アメリカには4つの団体が存在し,それらはThe American Psychiatric Nurses Association (APNA),Society for Education and Reserach in Psychiatric-Mental Health Nursing(SERPN), International Soceity of Psychiatric Consultation Liason Nursing (ISPCLN), Association of Child and Adolescent Psychiatric Nurses (ACAPN)である。1999年からSERPN,ISPCLN,ACAPNが一つにまとまり,International Society of Psychiatric-Mental Health Nurses (ISPN)となって年次大会も合同で開催するようになった。特徴は学術の発展とともに政策的パワーを発揮して実践の改革に取り組んでいる点である。イギリスには独立した組織は存在しないが,Royal College of Nursing (RCN)が企画運営する学会が2つある。The Network for Psychiatric Nursing Reserach (NPNR)と, European Mental Health Nursing Conferenceで,どちらも7回の年次大会を迎えたところである。NPNRは国際学会であり,後者はヨーロッパ中心の会議である。その他は,単発でカンファレンスが開かれることはあっても,カナダ,オーストラリア,北欧など定期的に学会を開催している組織は見あたらなかった。日本には,日本精神科看護技術協会と日本精神保健看護学会の2種類の団体があり,20年の学会の歴史をもつアメリカ,10年前後のイギリスとならんで,自己研鑽に励んできたことが改めて認められた。
著者
水野 恵理子 岩崎 みすず
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.157-164, 2010-01-31 (Released:2017-12-28)
参考文献数
19
被引用文献数
4

本研究では,発症後長期経過している統合失調症の子供をもつ母親の体験を明らかにすることと支援の方向性を見出すことを目的として,12名の母親へ半構成的間接を行い質的に分析した。その結果,母親の生き方,子供への向き合い方,病気や治療についての思い,人々との閔係についての思い,母親の気持ちの支えと気がかりなことの5つのテーマが抽出された。母親は,過去,現在,これからも子供が生きていく上での伴走者としてともに生きることを覚悟していた。その背景には,親としての責務,病気になったことへの哀れみ,他の家族員への配慮があった。母親が語るこれまでのケア体験をうけとめ,それらの体験を価値あるものとして母親の中に根づかせることは,母親の生き方を支えるここになりうると考えられた。
著者
伊藤 京子 水野 恵理子 西田 正吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.28, pp.49-54, 2009-05-07

In this study, the proposal is a circular reflective interface in the experimental learning toward the growth of the group discussion. First of all, the frame of the experimental learning corresponding to the growth of the group discussion was considered, and "(A) the selection of discussion information for "Awareness"" and "(B) the use of discussion information for "identify, analyze, and hypothesize"" were made an examination point corresponding to the step of the experimental learning. "Flow of the discussion" and "remark balance" were selected as for (A), and "under discussion" and "after discussion" were selected as for (B). And, a reflective interface was proposed for group discussion. The interface was designed and developed. The evaluation experiment was conducted. The results showed that it is possible for the interface to give the participants the awareness of the growth of group discussion and to be used for the frame of the experimental learning under and after discussion. In addition, a necessary viewpoint for use was brought together by actually using the interface for the class of the graduate school.