著者
坂庭 好一
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

Shannon限界に迫る符号化方式として注目されている,LDPC(Low-DensityParity-Check)符号に関する未解決問題として,(1)出来るだけ詳細に規定された符号アンサンブルを導出し,その性能評価を効率的に行なうこと,(2)装置化を考慮した,代数的な構造を有するLDPC符号の構成法,などが上げられる.本研究では,上記の問題に対する解決策として,(1)MuIti-Edge型と呼ばれる新しい非正則LDPC符号アンサンブルの提案とその性能評価に必要な密度発展(Density Evolution)アルゴリズムの開発,(2)LDPC符号のクラスである,修正エキスパンダ符号,アレー符号に対して,ランダム性と代数的構造のバランスをとった,装置化が容易で高性能な符号の構成法,の検討を目的として行なわれ,平成18年度には(1)『対称性』と呼ぶ,Multi-Edge型非正則LDPC符号を規定する基本構造を明らかにして,Multi-Edge型非正則LDPC符号アンサンブルを組織的に記述し,これに適合した密度発展アルゴリズムを開発した(2)修正エキスパンダ符号に対する一般化最小距離繰り返し復号法を提案し,Justesen符号に類似の構成法による,線形時間復号可能でかつ漸近的に良い符号を"陽に"与えることに成功したなどの成果を得た.引き続き,平成19年度には,実際に近い環境を想定したシミュレーションを実施して,提案方式の実用性を検証し,・提案したMulti-Edge型の非正則LDPC符号アンサンブルの具体例に関して,重み分布ならびにStopping Set分布の漸近的振る舞いを求め,提案符号の有効性を確認する・提案した代数的構造を有する各種LDPC(-likeな)符号に関して,従来符号との性能比較を行ない,提案符号の有効性を確認することができた.
著者
関口 知弘 山田 功 坂庭 好一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.695, pp.19-24, 2000-03-16

非線形フィルタ、特に多項式フィルタの非線形システム同定問題・逆問題への応用が数多く報告されている。中でもボルテラフィルタは、高次統計量を利用して実現される"最小の2乗平均誤差(MSE)を達成する多項式フィルタ"として定義され、通信路の等化問題、エコーキャンセラ・音響システムの設計問題、画像処理問題等に頻出する上記問題群に極めて有効であることが知られている。しかしながら、多項式フィルタの演算量は次数に対して指数関数的に増加するため、単純な構造による近似構成が多項式フィルタの中心的な課題となっている。また、ガウス雑音の乗算が招く分散の増大はロバストな多項式フィルタの実現を本質的に困難にしている。小文では、まず、"低階数-ベクトル値-多項式フィルタ(RRPF : Reduced Rank vector valued Polynomial Filter)"を"最高次の係数行列(Dominant kernel)が低階数行列で与えられるベクトル値-多項式フィルタ"として定義する。次に、RRPFが"高次雑音の影響を低次元部分空間内に閉じ込めるロバスト性"と"演算量の大幅な削減"を同時に実現する理想的な構造を備えていることを明らかにしている。さらに、高次統計量が利用できる状況を想定し、"低階数ボルテラフィルタ(RRVF)"をあらゆる"低階数-ベクトル値-多項式フィルタ(RRPF)"の中で最小の2乗平均誤差を達成するものとして定義する。小文の主定理は、低階数ボルテラフィルタの(最適)係数行列が高次統計量から再帰的に決定されることを明らかにしており、RRVFの存在性を保証するとともに具体的な実現法を与えている。