著者
田代 良彦 宗像 慎也 杉本 起一 栁沼 行宏 小島 豊 五藤 倫敏 今西 俊介 北出 真理 八尾 隆史 坂本 一博
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.122-127, 2015 (Released:2016-02-29)
参考文献数
25
被引用文献数
2

症例は34歳,女性.開腹歴はなく,30歳時に子宮内膜症の診断を受けたことがあった.腹痛を主訴に前医を受診し,腸閉塞の診断で入院となり,イレウス管による保存的治療が施行された.小腸造影検査で回腸末端に狭窄像を認め,骨盤MRI検査では腸管子宮内膜症による小腸狭窄が強く疑われた.腸閉塞症状が軽快した後,精査加療目的で当院に紹介となった.回腸子宮内膜症に対してホルモン療法後に,腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると後膣円蓋と直腸前壁に子宮内膜症による軽度の癒着を認めた.また,回腸末端部より約20cmの回腸に漿膜の引きつれと硬化を認め,小腸部分切除術を施行した.病理組織検査では,狭窄を認めた回腸の粘膜下層から漿膜下層に子宮内膜腺および間質細胞が分布しており,回腸子宮内膜症と診断した.術後経過は良好で第9病日に退院となった.
著者
伊藤 慎吾 市川 亮介 本庄 薫平 河合 雅也 田代 良彦 丹羽 浩一郎 石山 隼 杉本 起一 神山 博彦 高橋 玄 柳沼 行宏 小島 豊 田中 真伸 五藤 倫敏 冨木 裕一 坂本 一博
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.142-143, 2014-06-14 (Released:2014-06-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

A 68-year-old woman was admitted to the hospital with lower abdominal pain. Abdominal CT revealed a long linear high-density foreign object measuring about 3 cm long, which had penetrated the wall of the sigmoid colon. Emergency endoscopy was performed, because the patient was diagnosed as having possible penetration of the sigmoid colon by a fish bone. The emergency endoscopic examination revealed a fish bone penetrating the sigmoid colon, which was removed with grasping forceps. The removed bone measured 3 cm in length and was believed to belong to a sea bream. The patient was treated conservatively without any complications. For intestinal perforation and penetration caused by a fish bone, such as in our case, endoscopic treatment may be considered as the treatment procedure of first choice.
著者
丹羽 浩一郎 佐藤 浩一 杉本 起一 伊藤 智彰 折田 創 櫛田 知志 櫻田 睦 前川 博 坂本 一博
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.1005-1011, 2013-09-30 (Released:2014-01-10)
参考文献数
14

要旨:大腸穿孔の成因と治療成績,および予後予測因子について検討を行った。過去17年間に当院で緊急手術を施行した大腸穿孔182例を対象とした。死亡例は38例(死亡率:20.8%)であった。穿孔原因別に救命群と死亡群の2群に分けて検討した。大腸穿孔の原因として憩室(44.0%),大腸癌(30.2%),特発性(8.2%)の順に多かった。憩室,大腸癌を原因とする大腸穿孔では,多変量解析でAPACHIIscoreが独立した予後予測因子であった(それぞれp=0.002,p=0.038)。憩室を原因とする大腸穿孔では,APACHIIscoreが20点以上で死亡率85.7%と有意に高く(p<0.0001),また大腸癌を原因とする大腸穿孔では,APACHIIscoreが18点以上で死亡率75.0%と有意に高くなった(p<0.0001)。各症例の重症度を評価し,治療戦略を立てる際には,APACHEIIscoreが指標になる可能性が示唆された。
著者
冨木 裕一 坂本 一博 鎌野 俊紀
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.338-346, 2004-12-22
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年わが国では大腸癌が増加しているが,その原因として食生活の欧米化により,脂肪の摂取量が増加したことが要因のひとつと考えられている.高脂肪食は肝の胆汁酸産生と分泌を亢進させ,便中胆汁酸の増加をきたす.実際に大腸癌患者の便中胆汁酸は健常者より高濃度であり,その組成も二次胆汁酸のデオキシコール酸(DCA)とリトコール酸(LCA)が多い.また,食生活の欧米化に伴い,血清コレステロールレベルの上昇も認められるようになっているが,コレステロール低値群に悪性疾患が多いことは以前より注目されている.消化管癌患者のコレステロールレベルをコントロールと比較すると,早期癌でも有意に低値を示したことから,担癌者の低コレステロール血症は経口摂取の低下や栄養状態に起因するものではなく,癌の早期から脂質代謝系に何らかの異常が生じている可能性があることが示唆された.大腸癌に関しては環境的要因が大きく作用するため,大腸癌の予防には食物や身体活動などの生活習慣の改善が重要と考えられている.しかし,それだけで予防できるとは言えないため,早い時期から定期的に検査を受けることも大切である.