著者
坂本 憲治 掃本 誠治 橋本 洋一郎 榛沢 和彦 辻田 賢一
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.648-654, 2022 (Released:2022-12-22)
参考文献数
13

2016年4月,2度の地震(震度7)が熊本地方を襲った.本震から2日後,車中泊の51歳女性が急性肺塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)により死亡し,我々は避難所巡回での深部静脈血栓症スクリーニング検診を開始した.車中泊者を中心に要入院重症VTE患者が多数発生する中,のべ136会場で4,135名に下肢静脈エコー検診を行なった.急性期検診(発災後45日間)のDVT陽性率は9.5%.予後調査で健診による3名の要入院者を同定できたが,死亡例はなかった.慢性期検診の検討では,DVT陽性率の検診時期毎の低下傾向を認めなかったが,高齢者を除くと経時的な陽性率低下が確認できた.急性期に同定されたDVTの慢性期推移を検討した結果,56%に消失が確認できた.血栓消失群における消失時期について検討したところ,49%は2ヶ月以内,87%は6ヶ月以内の追跡で血栓の消失が確認できており,発災直後からの予防啓発活動の重要性が示唆された.
著者
坂本 憲治 本多 千賀子 永山 由貴 木内 理恵 成田 奈緒子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2016, no.26, pp.595-609, 2016

<p>本研究の目的は,専任カウンセラー不在の学生相談機関の問題を明らかにし,今後の研究に示唆を得ることである.X大学保健センター相談室を対象に後向調査を行った.まず,保健センター年報や会議録をもとに年間延べ相談件数,学生の来談率,実質カウンセラー数等の推移を調べた.次に,学生相談機関充実イメージ表(福盛ら,2014)を用いて学生相談機関としての発展レベルの推移を評価した.最後に,学内関係者への面接調査を実施し,各時期の状況を把握した.X大学の学生相談室は開設以後10年間に「充実しつつある段階(充実度3)」まで発展し,相談機関としての要件を整えた(第Ⅰ期).年間相談件数は開設11~25年に「右肩上がり」の傾向を示したが(第Ⅱ期),開設27年,3年の任期付雇用導入を境に「短期増減」に転じた(第Ⅲ期).専任カウンセラーの先行研究では「右肩上がり」の後に学生相談機関の充実がみられたが,X大学では33年間を経てもなお「充実しつつある段階(充実度3)」にとどまった.その背景には,相談室内部における相談運営のありようや,学生相談室と学内他部署との関係性が関与していた.以上から,専任カウンセラー不在の学生相談機関に起こりやすい問題として(1)年間相談件数推移の不安定さ,(2)学生相談機関としての発展の停滞,(3)学生相談機関における密室性の高まりを指摘した.今後は,前向調査によってデータを蓄積し,問題の一般化を図る必要がある.</p>