著者
外井 哲志 坂本 紘二 井上 信昭 中村 宏 根本 敏則
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.791-798, 1997-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1

著者らは、究極の歩行行動である 「散歩」 に着目して、散歩者の行動や評価の実態から、快適な歩行空間が備えるべき道路特性を抽出することを目的として、福岡県田主丸町で散歩行動実態調査を実施した。本研究では、散歩距離、散歩経路として利用される道路特性、散歩行動分類と道路特性の選好状況の関係などを分析し、(1) 散歩距離は平均で約2.8kmであり、個人属性や行動分類によって大きく異なること、(2) 散歩経路として選定される道路の特性は市街地的な特性ではなく、田園的な特性であること、(3) 散歩行動分類と市街化の程度、散歩距離との間には明確な関係があること、(4) 同一経路上で1度しか現れないリンクは田園的な特徴を示し、2度現れるリンクは市街地的な特徴を示すこと、などを明らかにした。
著者
加藤 仁美 田代 英美 坂本 紘二 佐藤 誠
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

都市の外延的拡大による都市化の進行は近年地方都市圏に於ても著しく、都市と農村の境界領域である都市周縁地域はドラスティックな環境変化が展開しており、都市圏の環境問題を扱う際の最重要地域と考える。本研究はこの都市周縁地域をマージナルエリアと定義し、福岡都市圏、熊本都市圏、久留米都市圏を対象に事例研究を行ない、次の成果を得た。(1)マージナルエリアはジンメルのマージナルマンに由来する造語であり、都市と農村の接点・境界にあり、異質な社会と文化の狭間にあって、両者の対立と共存、葛藤と同化のダイナミズムが展開している地域であり、そのダイナミックな相互作用を通して問題を克服し止揚していく責極性に意義がある。(2)近年、都市と農村の関係はこの境界性としてのマージナルエリアから、コアとマージンという一極集中構造に変容しつつあり、農林漁業の後退による広大なマージンの創出は、環境保全にとって危機的事態である。(3)伝統的な農村集落では、農業を営むことを通じて、生産基盤はもとよりその背後の自然環境から生活空間に至るまで、共同的かつ自律的に保全管理する構造が存在する。兼業化・混住化は〈集落保全〉と呼ぶこの全体構造の変容を余儀なくし、環境保全のための新たな主体の形成が要請されている。(4)3つの都市圏の相対的位置は一極集中の入れ子構造を浮き彫りにしており、マージナルエリアの責極的意義の回復と、周辺市町村の自立性の回復が求められている。(5)都市化をコントロールする現行法制はマージナルエリアのような重層的生活空間には不充分であり、住民の地域形成力を活用するような支援装置も考慮されてよいと思われる。(6)今後は、環境的・文化的ストックの把握と、それに基づいた環境保全と環境計画の指針を得て、事例研究から得られた知見を基礎とした政策課題の追求が必要である。環境をテーマとする研究には学際的な研究方法の確立と国際的視野も要請されていると思われる。