著者
宮田 晃志 坂東 寛 合田 光寛 中馬 真幸 新田 侑生 田崎 嘉一 吉岡 俊彦 小川 淳 座間味 義人 濱野 裕章 石澤 有紀 石澤 啓介
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集 第42回日本臨床薬理学会学術総会 (ISSN:24365580)
巻号頁・発行日
pp.3-P-R-2, 2021 (Released:2021-12-17)

【目的】てんかんおよび双極性障害の維持療法に適応を有するラモトリギンは、副作用として重篤な皮膚障害が現れることがあり、死亡に至った例も報告されたことから2015年に安全性速報で注意喚起がなされた。ラモトリギン誘発皮膚障害は、血中濃度の急激な上昇が関与しており、代謝経路に関与するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)阻害作用を示すバルプロ酸との併用でリスクが高いことが知られている。しかし、UGT阻害作用を示す薬剤はバルプロ酸の他にも睡眠薬、鎮痛薬、免疫抑制薬など多数存在するにも関わらず、それらの薬剤併用によるラモトリギン誘発皮膚障害への影響は不明である。本研究では、医療ビッグデータ解析を用いてUGT阻害作用を示す薬剤がラモトリギン誘発皮膚障害の報告オッズ比に与える影響を検討した。さらに、徳島大学病院の病院診療情報を用いて、併用薬によるラモトリギンの皮膚障害リスクの変化を検討した。【方法】大規模副作用症例報告データベース(FAERS:FDA Adverse Event Reporting System)を用いて、ラモトリギンとの併用により皮膚障害報告数を上昇させる薬剤を探索した。さらに徳島大学病院診療録より、ラモトリギン服用を開始した患者を対象とし、ラモトリギンの投与量、併用薬、皮膚障害の有無などを調査した。【結果】FAERS解析から、UGT阻害作用を示す医薬品のうち、ラモトリギンとの併用により皮膚障害リスクの上昇が示唆される薬剤として、バルプロ酸(ROR: 2.98, 95%CI: 2.63-3.37)、フルニトラゼパム(ROR: 5.93, 95%CI: 4.33-8.14)およびニトラゼパム(ROR: 2.09, 95%CI: 1.24-3.51)が抽出された。徳島大学病院診療情報を用いた後方視的観察研究の結果、ラモトリギン服用が開始された患者の内、20%程度で皮膚障害が認められ、フルニトラゼパム併用患者では皮膚障害発生頻度が上昇する傾向が認められた。【考察】フルニトラゼパムおよびニトラゼパムは、UGT阻害作用を示す薬剤であることから、ラモトリギンの血中濃度に影響し、ラモトリギンの皮膚障害リスクを上昇させている可能性がある。また、睡眠薬であることから精神科領域で併用する可能性があり、睡眠薬の選択や併用時の副作用モニタリングに注意を要すると考えられる。
著者
坂東 寛
出版者
徳島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

ラモトリギンは、抗てんかん薬および双極性障害の再燃再発予防薬として幅広く使用されている。一方で、副作用に重篤な皮膚障害があり、安全性速報で注意喚起がなされた。申請者は医療ビッグデータ解析により、ラモトリギンの皮膚障害リスクを上昇させる薬剤を見出した。本研究の目的は、候補薬剤の併用によるラモトリギン血中濃度および皮膚障害発現への影響を電子カルテ調査により明らかにするとともに、in vitroおよびin vivo実験により基礎的知見を集積することで、薬剤間の相互作用を明らかにし、適正で安全な薬物療法に寄与することである。