著者
坂東 浩司
出版者
東海大学文学部
雑誌
東海大学紀要 文学部 (ISSN:05636760)
巻号頁・発行日
no.15, pp.218-230, 1971-06
著者
坂東 浩司
出版者
北海道東海大学
雑誌
北海道東海大学紀要. 人文社会科学系 (ISSN:09162089)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.107-119, 1988

日本固有の事物や日本の文化的特徴を有する事柄の英訳法は, 文章の種類やその用途によって訳出法は異なるが, 大体次の六つの方法が考えられる。(イ)類似事物の英語相当語を代用する。(口)英語相当語に'Japanese'を冠する。(ハ)説明的表現にする。(二)日本語をそのまま英語化する。(ホ)日本語と, 英語相当語または説明的表現を併置させる。(へ)和英合成の複合語にする。本稿では, これらの英訳法の特徴を概説したうえで, LafcadioHearnの物語文学作品に焦点を絞り, それらの作品中に散見される日本文化に関する語彙が上述のどの方法によって英訳されているかを考察した。考察にあたっては, Edward G.Seidensticker訳による川端康成の小説『伊豆の踊子』, 『雪国』, 『千羽鶴』の三作品を中心とした他の翻訳者たちによる英訳法との比較考察をおこなうことによって, Hearnの特異点を浮き彫りにさせた。その結果, 彼の物語文学における英訳法は他の翻訳者たちのそれとは異なり, 随筆や論考における英訳法と同様の手法を用いているという結論を導くことができた。これは, Hearnが作家であると同時に研究者であるため, 彼にとっては物語文学が随筆や論考などの一連のジャンルの著作と同様に, 広義の日本研究の一環であり, 日本人の精神的特性を究明し, それを英米人に紹介するという彼の主要テーマの延長線上にあるためである。実際の創作過程において, 彼が日本の風俗・習慣や日本的色彩の濃い語彙を積極的に作品中に採り入れて英訳を試みているのも, こうした彼の執筆姿勢の反映であると見ることができると論及した。