著者
斎藤 幸恵 山本 篤志 太田 正光 有馬 孝禮 内海 泰弘 古賀 信也 門松 昌彦 坂野上 なお 山本 博一
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.25-32, 2015-01-25 (Released:2015-01-29)
参考文献数
15
被引用文献数
1

伝統技術による檜皮採取が剥皮木の木部性質を変化させるか否か明らかにすることを目的として,檜皮採取前後のヒノキ木部ヤング率,セルロースミクロフィブリル傾角(MFA)について検討した。同一林分のほぼ等しい環境に生育する>69年生ヒノキペア5組を選定し一方から檜皮を一度採取し他方を対照木とした。採取年およびその前後に形成された計<18年輪について放射方向に連続的に試料採取し,同一の母細胞から形成された試験体を作製,ヤング率とMFAの変化を年輪毎に平均し時系列で比較した。剥皮・対照木の個体差を除くため,ある年に形成された年輪の測定値と前年輪の測定値の差を,その絶対値の総和で割り標準化した「変化率」で比較した。その結果,檜皮採取に起因した明瞭な変化は認められなかった。熟練原皮師による形成層を傷つけない方法による檜皮採取は少なくとも,環境や遺伝的要因による変動を上回る木部性質の変化は及さないと結論づけられた。
著者
斎藤 幸恵 山本 篤志 太田 正光 有馬 孝禮 内海 泰弘 古賀 信也 門松 昌彦 坂野上 なお 山本 博一
出版者
The Japan Wood Research Society
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.25-32, 2015

伝統技術による檜皮採取が剥皮木の木部性質を変化させるか否か明らかにすることを目的として,檜皮採取前後のヒノキ木部ヤング率,セルロースミクロフィブリル傾角(MFA)について検討した。同一林分のほぼ等しい環境に生育する>69年生ヒノキペア5組を選定し一方から檜皮を一度採取し他方を対照木とした。採取年およびその前後に形成された計<18年輪について放射方向に連続的に試料採取し,同一の母細胞から形成された試験体を作製,ヤング率とMFAの変化を年輪毎に平均し時系列で比較した。剥皮・対照木の個体差を除くため,ある年に形成された年輪の測定値と前年輪の測定値の差を,その絶対値の総和で割り標準化した「変化率」で比較した。その結果,檜皮採取に起因した明瞭な変化は認められなかった。熟練原皮師による形成層を傷つけない方法による檜皮採取は少なくとも,環境や遺伝的要因による変動を上回る木部性質の変化は及さないと結論づけられた。
著者
岡野 竜馬 赤尾 健一 藤原 三夫 坂野上 なお
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.154-172, 1991-12-20

本研究では, 素材供給者および素材需要者両方の経営行動の分析を通じて, 京都の素材市場構造を明らかにした。分析結果は, 第一に, 素材生産業者数の減少とその雇用労働者の高齢化が進行しているが, まだ彼らは地域内の素材生産を担うだけの経営能力を有しており, その中心的位置を占めること。第二に, 原木市売市場は集出荷時力を増大させており, 素材流通過程において素材生産業者との分業体制を確立していること。そして第三に, 素材需要者としては, (1) 買方数は多いものの多様な樹材種の素材を小量づつ需要する地元京都府の製材業者と, (2) 買方数は少なく仕入れ樹材種も限定されているものの, 素材を安定的にしかも大量に仕入れる奈良県桜井市をはじめとする府外の製材業者 (および転売業者) がみられる。そして, 地域産材の流通のためには後者の存在が不可欠となっている。全国的傾向とは異なり, 先進林業地である北桑田郡周辺で近年, 素材生産量が維持されてきたのは, このような流通体制が維持されているからである。とはいえ, 経済的に合理的で効率のよい木材生産・流通, 加工体制を整備し, 国内の森林資源の活用を図るという課題は, 依然残されている。