著者
斎藤 幸恵 山本 篤志 太田 正光 有馬 孝禮 内海 泰弘 古賀 信也 門松 昌彦 坂野上 なお 山本 博一
出版者
The Japan Wood Research Society
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.25-32, 2015

伝統技術による檜皮採取が剥皮木の木部性質を変化させるか否か明らかにすることを目的として,檜皮採取前後のヒノキ木部ヤング率,セルロースミクロフィブリル傾角(MFA)について検討した。同一林分のほぼ等しい環境に生育する>69年生ヒノキペア5組を選定し一方から檜皮を一度採取し他方を対照木とした。採取年およびその前後に形成された計<18年輪について放射方向に連続的に試料採取し,同一の母細胞から形成された試験体を作製,ヤング率とMFAの変化を年輪毎に平均し時系列で比較した。剥皮・対照木の個体差を除くため,ある年に形成された年輪の測定値と前年輪の測定値の差を,その絶対値の総和で割り標準化した「変化率」で比較した。その結果,檜皮採取に起因した明瞭な変化は認められなかった。熟練原皮師による形成層を傷つけない方法による檜皮採取は少なくとも,環境や遺伝的要因による変動を上回る木部性質の変化は及さないと結論づけられた。
著者
八木 久義 酒井 徹朗 大橋 邦夫 山本 博一 門松 昌彦 堺 正紘 有馬 孝禮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究によって、文化財修理用資析調査及び需要予測、高品位材の市場調査及び供給能力の予測、フィールド分布調査を整理した上で、分布台帳を作成するとともに、必要資材量について検討し、檜皮の剥皮実験を行った。その結果、1.文化財建造物の保存にとって修理技術者の育成と修理用資材の確保が不可欠であること、2.建造物文化財は、既指定数が増加傾向にあり、修理件数は必然的に増加すること、3.修理用資材を木材に限定した場合、その需要に対して重要な材は、樹種では、ヒノキ、スギ、マツ、ケヤキ、クリであり、材質等では大径材、高品位材、特殊材であること、4.一般市場に出回る木材は、規格材の生産に止まり、文化財修理に必要な木目の細い木目の詰んだ材は既に確保が困難な状況となっていること、5.大径材等については、天然林において修理用資材を採取出来る立木の確認が必要であり、これらの立木を育成できる森林を確保し、そのための育林方法の確立を図る必要があること、6.大径木のフィールド分布調査によると文化財修理用資材の安定的確保と言う観点からみて、大学演習林では十分な資源量とは言えないこと、7.供給サイドからはアカマツが資源として厳しい状況にあること、8.修理用資材の供給源の確保や整備を行うためには、修理用資材に求められる形質を明らかにし、立木の状態で選別できる基準を設定する必要があること、9.大経木のフィールド分布調査の対象を国有林や公有林に広げる必要があること、10.文化財の修理用資材確保を目的とした備林を設定する必要があること、11.文化財修理の資材調達の困難さの実状を社会的に明らかにし、森林所有者とともに、林業、木材業界全体の協力体制を大学演習林が率先してモデルを構築することが必要であり、それらを基礎に大学演習林を中心にして地域の関係者との体制作りへと進むべきであること、が明らかになった。