著者
山本 健 坪川 恒久
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳磁図を用いて意識・記憶・痛みによる脳活動の変化を観測し,その結果を脳波に応用することにより,周術期にベッドサイドで使用することができるモニタリング手法を開発することを目指した.MRIまたは脳磁図装置の中で被検者を全身麻酔により無意識状態として観察することは倫理委員会の許可が得られなかったため,睡眠による意識消失状態での観察をおこない睡眠時紡錘波,θ波,δ波の発生部位を明確にすることができた.記憶に関するモニタリングに関しては,記憶形成時,想記時ともに記憶に特徴的な脳の反応を捉えることができなかった.痛みに関しては,扁桃体や海馬,島皮質などに特異的な反応を見出すことができた.
著者
坪川 恒久
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.218-219, 2016-03-01

亜酸化窒素(笑気)は,最も古くから使われている全身麻酔薬であり,鎮痛作用,鎮静作用を併せもつ。しかし,近年,亜酸化窒素を使用する機会は大きく減少している(レミフェンタニルの登場でとどめを刺された感がある)。ビタミンB12,葉酸の代謝阻害によりミエリン鞘の合成を障害するし,閉鎖腔への析出も一部の疾患では問題になる。しかし,亜酸化窒素は無味無臭で緩徐導入に適している。亜酸化窒素の最小肺胞濃度(MAC)は104%と鎮静作用は弱く,血液/ガス分配係数が0.47とデスフルランと同等であり(213ページ表1参照),すみやかに吸収,排泄される。そのため,高濃度で投与することになり,薬物動態学的には興味深い現象を引き起こす。亜酸化窒素を使いこなすことで,吸入麻酔の幅が広がる。また,鎮痛作用もN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体を介していて,オピオイドとは異なることから,術中のワンポイントとしての使い方もある。まだまだ捨てたもんじゃない。
著者
坪川 恒久
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.497-507, 2006 (Released:2006-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

Awake OPCABは, 高位胸部硬膜外麻酔を用いて挿管せずに, 自発呼吸と意識を維持したままOPCABを行う周術期管理方法である. 高位胸部硬膜外麻酔は, 交感神経遮断により心仕事量を抑え, 限局性の冠動脈拡張作用をもち, 心筋保護的に作用するなど, 虚血性心疾患を有する患者には有益な面を多くもつ. 一方で, ヘパリンを使用した手術のため硬膜外血腫形成が懸念され, 硬膜外膿瘍や局所麻酔薬中毒にも注意する必要がある. 自発呼吸を維持することの利点は, 挿管を必要としないことと, 心拍出量および脳血流量の維持が期待されることである. 逆に欠点としては, 気胸や誤嚥の可能性があり, 経食道エコーを使うことができないことがある. 意識を維持することの利点は, 脳灌流および神経学的合併症のモニターとして優れていることである. いずれの要素に関してもエビデンスの蓄積はまだ不十分であり, 今後の検討が必要である.