著者
埜中 正博 淺井 昭雄
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.254-260, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
25

脊髄髄膜瘤は妊娠早期に行われる胎生期神経管の閉鎖が何らかの理由で障害され, 開いたままになってしまうことで生じる奇形である. 脊髄病変の修復と水頭症に対する治療は出生後から乳児期にかけて行われるが, この時期に治療が完結するわけではない. 特に脊髄病変の修復術後の癒着が脊髄係留を引き起こし, 既存の膀胱機能障害の悪化, 下肢の運動障害や変形, 痛みが生じる例が存在する. 脊髄係留解除術は一部の症例には有効であり, 特に痛みについては術後症状が改善する割合が高いため, この点に焦点を当てて報告する. 脊髄髄膜瘤患者の長期予後を改善させるためには, 脊髄係留の症状を適切に管理する必要がある.
著者
文山 誠友 三木 陽平 大西 克彦 小枝 正直 登尾 啓史 埜中 正博
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.181-182, 2019-02-28

内視鏡下経鼻的手術は,脳下垂体腫瘍摘出するために鼻腔内に鼻腔鏡と手術器具を挿入し,蝶形骨洞(副鼻腔)及びその奥に存在するトルコ鞍を切開し,脳下垂体の底部から腫瘍の摘出を行う.この術式の利点としては開頭手術と比較した際に患者への負担が軽減されることである.一方,術者に対しては高度な技術が要求される.そこで,本研究では術者の負担軽減のため内視鏡下経鼻的手術におけるナビゲーションシステムの開発を検討している.本稿では,その中で内視鏡カメラ先端位置推定手法の検討を行った.実際に手術で用いられている鼻腔鏡を基に擬似内視鏡の作成を行い,作成した擬似内視鏡とOpenCVをベースとした軽量なARライブラリであるArUcoマーカを利用したカメラの先端位置推定の検討とシステム試作を開発した.
著者
山崎 麻美 埜中 正博
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.642-649, 2009
参考文献数
19
被引用文献数
1

2000年の「児童虐待の防止等に関する法律」の成立を契機に,わが国でも小児虐待に対する社会的関心が高まってきた.その中で,最も致命的で予後に大きく影響するのが,頭部外傷である.Shaken baby syndrome(SBS:揺さぶられっ子症候群)という言葉が有名になり,虐待による頭部外傷の総称として使われることもあるが,正しくは,non-accidenntal tramatic brain injury(nonaccidental TBI),あるいはinflicted traumatic brain injury(ITBI)である.すなわち,虐待による頭部外傷の受傷機転は,shaken(揺さぶり)だけでなく,直達衝撃(叩く,落とす,投げる),やそれらが複合したものと考えられている.虐待の診断には,打撲痕・熱傷・骨折など全身チェックに加え,頭部MRI検査は有用であり,眼底検査は必須である.半球間裂から円蓋部にかけて,あるいは小脳テントに沿って存在する急性硬膜下出血が最も多くみられる.ITBIの死亡率は15〜38%で,生存者の30〜50%が障害を持ち,正常に回復する率は30%といわれ,その転帰は非常に悪い.自宅に戻った時に繰り返される率は31〜43%である.従来から中村の血腫1型として報告されてきた家庭内の軽微な外傷による網膜出血を伴う急性硬膜下血腫が,虐待の範疇に入るのか,虐待とは別のclinical entityとして考えるのか,いまだ議論のあるところである.