著者
那須 高志 小林 渓紳 大堀 正明
出版者
Saitama Physical Therapy Association
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.40-44, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
18

【はじめに】大腿骨近位部骨折の術後患者における歩行自立度を予測する因子と,そのカットオフ値を調査することとした。【対象および方法】大腿骨近位部骨折を受傷し,手術を施行された40名において術後14日目の歩行が自立した群としなかった群で比較した。また歩行自立度を目的変数とし,年齢と荷重率と荷重時痛を説明変数とし,ロジスティック回帰分析を実施した。さらに影響を与えている説明変数に関してはROC曲線からカットオフ値を算出した。【結果】非自立群は自立群に比し荷重率が低く,荷重時痛が高かった。また術後14日の歩行自立度に影響を与えているものは荷重率で,そのカットオフ値は72.3%であった。AUCは0.86であった。【考察】荷重率は歩行自立度に影響を与えており,その予測能は高かった。以上のことから,術後7日目の荷重率を測定することで,術後14日目の歩行自立度を予測できる可能性が考えられた。
著者
斎藤 勇哉 Peter A. Wijeratne 鎌形 康司 Christina Andica 内田 航 明石 俊昭 和田 昭彦 堀 正明 青木 茂樹
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
日本磁気共鳴医学会雑誌 (ISSN:09149457)
巻号頁・発行日
pp.2023-1790, (Released:2023-05-25)
参考文献数
28

Corticobasal syndrome (CBS) and progressive supranuclear palsy (PSP) are sporadic atypical parkinsonian disorders associated with 4-repeat tauopathies. These neurodegenerative conditions closely overlap in their clinical information, pathology, and genetic risk factors ; therefore, it is difficult to accurately diagnose CBS and PSP. Recently, an unsupervised machine-learning technique, called Subtype and Stage Inference (SuStaIn), has been proposed to reveal the data-driven disease phenotypes with distinct temporal progression patterns from widely available cross-sectional data. To clarify the differences in the temporal white matter (WM) degeneration patterns between CBS and PSP, this study applied SuStaIn for fractional anisotropy (FA) in regional WM, which was sensitive to WM degeneration, based on cross-sectional brain diffusion MRI (dMRI) data. We obtained dMRI data from 15 healthy controls, 26 patients with CBS, and 25 patients with PSP. FA was calculated after fitting the diffusion tensor model to the corrected dMRI data for susceptibility and eddy-current induced geometric distortions and inter-volume subject motion. SuStaIn was applied to the cross-sectional regional WM tract FAs to identify both the disease subtypes and their trajectories with distinct WM degeneration patterns. To assess the performance of SuStaIn, the classification accuracy and sensitivity for CBS and PSP were calculated. SuStaIn revealed that the CBS degeneration started from the fornix and stria terminalis (FSTs) and corpus callosum (CC), followed by the posterior corona radiata (PCR), posterior thalamic radiation (PTR), and cerebral peduncle (CP), and subsequently extended to the cingulum. Finally, it reached the superior cerebral peduncle (SCP) and corticospinal tract (CST). In contrast, the PSP degeneration started from the SCP and cingulum, followed by the CST, and subsequently extended to the FST and CC. Eventually, it reached the PCR, PTR, and CP. Accordingly, SuStaIn classified CBS and PSP with 0.863 accuracy (sensitivity : CBS, 0.885 ; PSP, 0.840). The results suggested the utility of SuStaIn for classifying patients with CBS and PSP and identifying temporal WM degeneration patterns in patients with CBS and PSP.
著者
那須 高志 小林 渓紳 宮崎 涼太 大堀 正明
出版者
Saitama Physical Therapy Association
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.25-27, 2022 (Released:2022-06-04)
参考文献数
11

【はじめに】大腿骨近位部骨折を呈し,人工骨頭置換術または骨接合術を施行後,早期に術後7日目の荷重時痛を予測する因子を検討した。【方法】当院にて手術を施行された大腿骨近位部骨折26名,人工骨頭置換術12名と骨接合術14名であった。調査項目は基本情報の年齢・手術時の出血量,血液生化学検査のCRP・CK・Hbの術後3日以内のピーク値とした。荷重時痛は術後7日目の最大荷重時の痛みをNRSを用いて評価した。【結果】人工骨頭置換術群は骨接合術群よりも有意に出血量が多かった。疼痛と各因子の関係性は,人工骨頭置換術群は出血量に強い正の相関が,骨接合術群はHbに中等度の負の相関がみられた。【考察】人工骨頭置換術は展開が大きいため創外出血を反映する出血量が,展開の小さな骨接合術は創内出血を反映したであろうHbが荷重時痛と相関を認めたと考えた。
著者
上田 周平 鈴木 重行 片上 智江 堀 正明 水野 雅康
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.BaOI2019, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】頭頚部の運動は環椎後頭関節を中心とする頭部の運動と下位頚椎を中心とする頚部の運動から規定される(Hislop H.J.2002)。頭頚部のアライメントの相違は咽頭、喉頭などに形態的差異をもたらし嚥下機能に密接に関与すると報告されているが、頭頚部の関節可動域(以下ROM)を頭部と頚部に分け嚥下機能との関連性を検討した報告はみられない。我々は第45回本学術大会において施設入所中の50名の高齢者を対象に誤嚥性肺炎の既往の有無で頭頚部のROMを比較し、複合(頭部+頚部)屈曲には差はないが、誤嚥性肺炎群では頭部屈曲ROMが低値であることを報告した。そこで本研究は、嚥下機能の変化に伴い複合屈曲と頭部屈曲のROMにどのような変化が見られるのかを明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は嚥下障害でリハ依頼のあった者のうち、才藤らの嚥下障害の臨床的病態重症度分類(以下class)で4以下の障害を有し、急性期の脳血管障害、腫瘍などによる通過障害、臥位で頭部が床面に接しない円背の者を除外した36例(男性20例,女性16例,平均年齢84±8歳)とした。リハ開始時と最終時に嚥下機能はclass、改訂版水飲みテスト、食物テストを指標として評価した。また頭頚部機能は頭部屈曲と複合屈曲のROM、舌骨上筋機能グレード(以下GSグレード)、相対的喉頭位置(吉田.2003)を評価した。リハ開始時と比較して最終時に嚥下機能の評価指標のいずれかが1ランクでも改善が見られた者を改善群とし、それ以外の群(不変・悪化群)との2群に分類し、頭頚部機能を比較した。なお入院期間中は全例PT、STによる介入を行った。ROMの測定肢位はベッド上臥位とし、他動運動にて最大角度と可動範囲を測定した。頭部屈曲の最大角度は外耳孔を通る床からの垂直線と外眼角と外耳孔を結ぶ線とのなす角(A角)の最大値、可動範囲は最大角度に開始肢位でのA角を加えた角度とした。複合屈曲の最大角度は肩峰を通る床との平行線と肩峰と外耳孔とを結ぶ線とのなす角(B角)の最大値、可動範囲は最大角度から開始肢位でのB角を引いた角度とした。測定にはデジタルカメラを用い、カメラが被検者と平行になるように三脚に固定して撮影を行った。その後データをPCに取り込み画像解析ソフトImage J(NIH)を用いて角度を算出した。統計学的手法は群内の比較には対応のあるt検定、Wilcoxonの符号付順位検定、2群間の比較には対応のないt検定、Mann-Whitneyの検定を用い、危険率5%未満を有意水準とした。【説明と同意】対象者またはその家族には研究の主旨を十分に説明し、研究に参加することへの同意を得た。また本研究は所属機関の倫理委員会の承認を受けて行った。【結果】最終評価後の嚥下機能は改善群18例、不変・悪化群18例であった。両群間で基礎データ(年齢,性別,リハ開始時と最終時Barthel Index,脳血管疾患既往の有無,入院からリハ開始までの日数,入院期間,リハ日数)に差を認めなかった。群内の比較は改善群では頭部屈曲の最大角度と可動範囲、複合屈曲の最大角度と可動範囲に有意な増大を認めた。不変・悪化群では複合屈曲の最大角度と可動範囲、GSグレードに有意な増大を認めた。2群間の比較では最終評価時の頭部屈曲の最大角度と可動範囲、リハ開始時と最終評価時のGSグレードが改善群で有意に高値であった。【考察】頭頚部機能として評価した相対的喉頭位置は群内、群間ともに差を認めなかった。この指標は吉田らが脳卒中患者を対象に検討を行っている指標であり、今回のような高齢なADLの低い者では両群とも高値を示しており、嚥下機能を反映しないことが考えられた。GSグレードにおいては改善群では群内の変化は認められなかった。不変・悪化群では有意な増大を認めたが、リハ開始時、最終評価時ともに改善群が不変・悪化群と比較し有意に高値を示しており、先行研究と同様に舌骨上筋群の機能が嚥下運動に影響を与えることが示された。ROMに関しては改善群では複合屈曲、頭部屈曲ともに改善を認めたが、不変・悪化群では複合屈曲のみ改善を認めた。頭頚部屈曲の効果には舌圧の増加、嚥下後喉頭蓋谷残留の減少、喉頭閉鎖不全の代償などが報告されているが、報告者により複合屈曲、頭部屈曲が混在している状況である。しかし今回の縦断調査の結果から治療における頭部屈曲へ対する介入の必要性は明確になったと考える。【理学療法学研究としての意義】高齢嚥下障害患者の嚥下機能改善の為の介入を行ううえで、また悪化させないように維持するうえで注目すべき頭頚部機能として頭部屈曲ROMがあげられることが示唆された。