著者
金澤 悠介 朝岡 誠 堀内 史朗 関口 卓也 中井 豊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.141-159, 2011 (Released:2012-01-31)
参考文献数
41

本稿の目的は,エージェント・ベースト・モデルの方法の特徴を明らかにするとともに,この方法を用いた研究が社会学の中でどのように展開されてきたのか/されうるのかを議論することである.最初に,エージェント・ベースト・モデルの方法的な特色を,数理モデル分析や計量分析という既存の社会学の方法と比較を通じて,明らかにする.次に,社会学において,エージェント・ベースト・モデルを用いた研究がどのように展開されてきたのかを,社会秩序の生成と社会構造の生成というトピックを題材に確認する.最後に,社会学の重要なテーマでありながら,エージェント・ベースト・モデルを用いた既存の研究ではいまだ未探索となっている領域について議論する.
著者
堀内 史朗
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.51-66, 2011 (Released:2012-01-31)
参考文献数
40
被引用文献数
1

様々な対立を潜在的に孕む人々が,その対立を乗り越えて仲良く暮らすためには何が必要なのか?その条件を明らかにするため,互いに異質なエージェントが緩やかな集団を形成するエージェント・ベース・モデル(ABM)を作成した.モデリングに際して,隣接者との違いが閾値より大きいとエージェントが移動を続けるシェリングモデル(Schelling 1971)と,複数の特性それぞれについて複数の構成要素をもった隣接者同士が相互作用するアクセルロッドモデル(Axelrod 1997)を参照した.シミュレーションの最終時刻までに達成された最も大きい集団をコミュニティと定義し,どのようなエージェントの活躍の下に巨大なコミュニティが成立するかを調べた.分析の結果,特性の数F と構成要素の数Q の比Q/F が低いと,僅かな構成要素の一致で隣接エージェントと集団を形成しようとする「丁重」なエージェントが大きなコミュニティ形成に貢献する.Q/F の値が高いと,構成要素が一致するエージェントとの集団形成を求めて「移動」するエージェントが大きなコミュニティ形成に貢献する.またシミュレーション時間が長いほど,移動するエージェントが活躍する領域が増えることがわかった.この結果は,人々の異質性が高いときにこそ,集団間を移動する「よそ者」がコミュニティの形成に貢献すると示唆する.人間類型としてのよそ者に付与されてきた「地域社会を客観的な世界と結びつける」という理論的位置づけを,本稿はABM によって裏付けた.
著者
森野 真理 堀内 史朗
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

岡山県英田郡西粟倉村において、現在の小規模林家の森林管理の状況と管理にかかわる問題について調べた。中には篤林家もいるが、近い将来管理放棄は一層進むことが示唆された。その背景には、これまで指摘されてきた経済的な問題だけでなく、立地特性や自然災害への脆弱性など複合的な要因があった。将来の担い手としては、血縁者の可能性は極めて低かった。受け容れには問題もあるが、Iターン者やボランティアなどのよそ者が管理の担い手として期待される。