著者
中井 豊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-36, 2004-03-31 (Released:2008-12-22)
参考文献数
12

本研究では、「ある様式が大規模に普及する」という意味の熱狂ではなく、「ある様式と類似の様式が連続して普及し続ける」という意味の熱狂現象に注目する。そして、様式の採用に敏感なエージェントや慎重なエージェントから成る人工社会を準備し、熱狂現象を構成するとともに、熱狂が生まれるメカニズムを抽出する(以下、「熱狂の生成モデル(Genesis Model of Enthusiasm)、略してGEモデル」と呼ぶ)。結果は、様式の採用に敏感なエージェントのグループが発生することがきっかけとなり、社会に熱狂的な雰囲気が生まれてくることが分かった。そして、現実の社会現象(少年非行の歴史)に着目し、敏感なエージェントのグループ化と同型の現象が少年非行の歴史の中にも見出されることを示し、GEモデルに対する了解を深める。
著者
中井 豊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.345-358, 2000-10-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
16
被引用文献数
3

流行には、1960年以降3回あったスカートの流行や、幕末以降4回あった新宗教ブームなど、「ほぼ同一の様式がある程度周期的に普及と沈滞を繰り返す循環型」の流行現象が存在する。 このような循環型流行現象の原因としては、従来いくつかのメカニズムが提案されていたが、本研究では「社会の気質」が周期的に変化している可能性に注目し、石井モデルを拡張したモデルを立てて、気質の周期的な変化が自律的に生じることがあるかどうかを検討した。 具体的には、石井モデルにおける流行採否戦略の社会的分布を社会の気質と解釈し、それを学習によって変化させるモデルを立ててシミュレーションを行った。その結果、あるパラメーターにおいて、採否戦略の周期的な変動と、それに伴うアイテムの流行の周期的な変化が見出された。 更に、採用に敏感な者同士のクラスターの発生と消滅が、この変動を駆動していることが分かった。
著者
小池 心平 中井 豊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.293-307, 2014 (Released:2016-07-10)
参考文献数
33

「共有地の悲劇」以来,コモンズ管理は社会的ジレンマとして位置づけられ,フリーライダー問題と利害関係者による自主管理の可能性が議論されてきた.しかし,日本社会におけるコモンズ管理の現状は,人口減少や高齢化により利用者が減少しコモンズが放棄されてしまう新たな問題に直面している. 本稿では,公共財供給ゲームにおける非参加戦略を用いて,コモンズ管理においてフリーライダー問題を内包しつつ過疎化によりコモンズが荒廃する状況を定式化した.また,地域活性化に協力的な移住者に着目し,移住者と地域住民がコモンズ管理の枠組みの外で地域資源を活用する地域再生事業のモデルを提示した.フリーライダーと過疎化の問題を同時に解決しうる地域再生事業の条件を整理し以下の点を明らかにした.共同事業の収益性に関わらず,少数の移住者と多数の地域住民による共同事業だけがコモンズの維持と過疎化対策に寄与する.地域住民への公的補助の増額は移住を促進するが,地域内で移住者をフリーライダーに変え,再び共有地の悲劇が生じる.
著者
金澤 悠介 朝岡 誠 堀内 史朗 関口 卓也 中井 豊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.141-159, 2011 (Released:2012-01-31)
参考文献数
41

本稿の目的は,エージェント・ベースト・モデルの方法の特徴を明らかにするとともに,この方法を用いた研究が社会学の中でどのように展開されてきたのか/されうるのかを議論することである.最初に,エージェント・ベースト・モデルの方法的な特色を,数理モデル分析や計量分析という既存の社会学の方法と比較を通じて,明らかにする.次に,社会学において,エージェント・ベースト・モデルを用いた研究がどのように展開されてきたのかを,社会秩序の生成と社会構造の生成というトピックを題材に確認する.最後に,社会学の重要なテーマでありながら,エージェント・ベースト・モデルを用いた既存の研究ではいまだ未探索となっている領域について議論する.
著者
中井 豊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.345-358, 2000
被引用文献数
1

流行には、1960年以降3回あったスカートの流行や、幕末以降4回あった新宗教ブームなど、「ほぼ同一の様式がある程度周期的に普及と沈滞を繰り返す循環型」の流行現象が存在する。<BR> このような循環型流行現象の原因としては、従来いくつかのメカニズムが提案されていたが、本研究では「社会の気質」が周期的に変化している可能性に注目し、石井モデルを拡張したモデルを立てて、気質の周期的な変化が自律的に生じることがあるかどうかを検討した。<BR> 具体的には、石井モデルにおける流行採否戦略の社会的分布を社会の気質と解釈し、それを学習によって変化させるモデルを立ててシミュレーションを行った。その結果、あるパラメーターにおいて、採否戦略の周期的な変動と、それに伴うアイテムの流行の周期的な変化が見出された。<BR> 更に、採用に敏感な者同士のクラスターの発生と消滅が、この変動を駆動していることが分かった。
著者
中島 聡子 中井 豊 古宮 誠一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.147-156, 2005-01-15

近年,市民活動が活発化してきている.市民活動とは自発的で営利を目的にしない市民による活動を指し,ボランティア活動をはじめ,NPO,NGO,自治会など幅広い活動が含まれる.活動の一般的な定義に「継続性」が含まれるが,法や制度に規定されない自由な活動を継続させる要因については十分な検討がなされていない.そこで本論文では,市民活動に関する質的調査の結果を基にエージェントベースシミュレーションを実施し,活動の継続要因に関する考察を行った.その結果,(1) 活動参加者の行動が内集団びいきである,(2) 活動参加者が活動者仲間から内的報酬を得る,という2 要因が,活動の継続に影響を及ぼす可能性が示唆されたと述べている.