著者
山下 舞琴 堀田 佐知子 長島 俊輔 東條 千章 若村 智子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1_19-1_28, 2018

本研究の目的は,冬の日照時間が短い地域に住む高齢者の冬と夏の睡眠に関連する要因を明らかにすることとした。京丹後市高齢者大学の受講生149人に,質問紙調査(睡眠:ピッツバーグ睡眠質問票,気分:感情プロフィール検査,他)を冬と夏に行い,分析した。夏の睡眠時間は,冬に比べ有意に短く,睡眠困難の得点が高い傾向があり,さらに夏の活気と疲労の得点は有意に高かった。冬に会話を毎日する人の割合は,夏に比べ有意に少なかった。重回帰分析の結果,外出頻度,疲労,精神疾患などが冬の睡眠に,会話頻度,緊張-不安,消化器疾患などが夏の睡眠に,影響を与えていた。降雪地帯であったが,冬の日常的な外出が,よい睡眠を導くための具体的な指針の一つとして示唆された。また,冬に疲労が,夏に緊張が強い人には,睡眠障害も念頭においてかかわる必要があるかもしれない。このように,冬と夏によって適切な睡眠の指導が異なる可能性が示された。
著者
大島 理恵子 堀田 佐知子 近田 敬子 鵜山 治 Rieko OSHIMA Sachiko HORITA Keiko CHIKATA Osamu UYAMA 兵庫県立大学看護学部 実践基礎看護講座看護病態学 兵庫県立大学大学院看護学研究科修士課程看護病態学専攻 園田学園女子大学人間看護学科 兵庫県立大学看護学部 実践基礎看護講座看護病態学 Nursing Pathobiology College of Nursing Art and Science University of Hyogo Graduate School of Nursing Art and Science University of Hyogo Department of Human Nursing Sonoda Women's University Nursing Pathobiology College of Nursing Art and Science University of Hyogo
出版者
兵庫県立大学看護学部
雑誌
兵庫県立大学看護学部紀要 = University of Hyogo College of Nursing art and Science bulletin (ISSN:13498991)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.51-61, 2006-03-15

本研究の目的は、「まちの保健室」を訪れる地域住民の睡眠の実態を調査するとともに、睡眠相談の活動方法を検討することである。研究協力者はH大学「まちの保健室」に来訪した男女102名(平均年齢55.9歳)で、質問紙調査を行った。また、個別睡眠相談を利用した女性17名(平均年齢60.9歳)には、アクチウォッチを用いた個別相談と介入を行いその反応について分析した。得られた結果は以下のとおりである。1)質問紙調査の判定で睡眠が良好だった人は49.0%、要注意の人は21.6%、不眠の疑いがある人は29.4%で、「まちの保健室」に来訪した人の約5割は、睡眠に関して何らかの問題や不満を抱えていた。2)個別睡眠相談来訪者の主な相談内容は、寝つきが悪い、中途覚醒がある、いびき、ほてり、自己の睡眠の測定などで、「不眠の悩みを相談しやすい状況をつくる」、「介入のきっかけの一つとしてアクチウォッチのデータを用いる」、「来訪者と共に生活の仕方を振り返る」、「眠れていることや良い生活習慣等できていることを認める」、「睡眠に関する知識・情報を提供する」などの介入を行った。3)個別睡眠相談を利用した17名のうち7名に、1ヶ月後以降の睡眠や生活の様子について聞き取り調査を行ったところ、「自分の睡眠を知ることによる安心感」、「自分の行動を認める」、「睡眠に対する関心の高まり」などの、視点や考え方の変化がみられた。また、7名中3名には睡眠が改善したという発言があった。睡眠相談は相談に来る人を待つスタイルであるが、今後は集団を対象とした睡眠衛生教育など、より積極的な介入も必要であると考える。「まちの保健室」睡眠相談で、アクチウォッチを用いながら個別の生活に合わせた介入を行うことにより、来訪者の睡眠に対する考え方や生活行動に変化が現れ、睡眠が改善する効果があることが示唆された。The purpose of this study was to investigate the sleep status of the local residents who visited the "Neighborhood Health Station" and to examine the action method used for sleep consultations. The study volunteers consisted of 102 persons (average age: 55.9 years) who visited the "Neighborhood Health Station" established by H University. The investigation was carried out using questionnaires. Seventeen females (average age: 60.9 years) received individual sleep consultations using an Actiwatch and interventions were made. The results were then analyzed. Results 1) According to the questionnaire data, 49.0% were classified as good sleepers; 21.6% as marginal; and 29.4% were suspected of being insomniacs. About 50% of those who visited the "Neighborhood Health Station" had some issues or dissatisfaction with their sleep. 2) The main topics raised by individuals during sleep consultations were their difficulty in falling asleep, waking up in the middle of the night, snoring, hot flashes and also how to get advice on how to monitor their own sleep patterns. We conducted interventions such as a) creating an environment where visitors can freely discuss their insomnia problems, b) making use of the Actigraph's data as one way of initiating intervention, c) examining clients' lifestyles and having them reflect on this with the support of the counselor, d) acknowledging that a good sleep and good life habits are being achieved, and e) providing knowledge and information about sleep". 3) Of 17 visitors who had individual sleep consultations, seven were chosen for further interviews regarding their sleep status and lives at more than one month after the initial consultation. We witnessed changes in the visitors' viewpoints and thinking, such as a) feeling assured by understanding their own sleep, b) acknowledging their own actions, and c) increased interest in sleep. Moreover, three out of the seven claimed that their sleep had improved. These sleep consultations were relied on waiting for clients to simply come in; however, in the future, we think that more active intervention will be necessary, such as conducting sleep health classes for groups. Intervening, in accordance with individual lifestyles by using the Actiwatch at the "Neighborhood Health Station" consultations, suggests that the clients' ideas about sleep and lifestyle were modified and such interventions were effective in improving sleep.
著者
宮島 朝子 堀田 佐知子 大島 理恵子 若村 智子 近田 敬子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,健康レベルの異なる在宅高齢者を対象に,生活環境と生活リズムの実態を把握し,それらの関係性を「人間-環境系」の視点から分析することを目的として,平成14〜16年度の3年間にわたって行った。調査は2つの方向で進めた。一方は病院から在宅への環境移行に伴い,「在宅療養者」の生活リズムや心理・社会的な側面がどのように変化していくかを追跡した調査である。対象者の選定はH県内のリハビリテーション系病院の回復期病棟に依頼し,同院を退院した男女4名を対象として調査を行った。その内1名については,月1回1週間のデータ収集を行い,退院後4ヶ月間にわたる経過を追うことができた。もう一方は「在宅高齢者」,即ち自宅で健康的な生活を送っている高齢者の,生活リズムの実態を把握した調査である。対象者はH県立看護大学の「まちの保健室」の来談者の内65歳以上の男女9名と,A町睡眠を通じた健康づくり支援事業において,睡眠に関する個別支援が必要とされた8名の計17名を対象とした。これらの調査をもとに,報告書冊子は「在宅療養者」では,以下の3つの方向からまとめた。第1は4ゲ月間にわたってデータ収集を行った在宅療養者1事例について,病院から在宅への環境移行に伴う生活リズムの実態を分析し考察した。第2は同じ対象者が遭遇した住宅改修に焦点を当て,看護の視点からの改修に対する提案をまとめた。第3は同じ対象者とその介護者の夜間睡眠と心身機能の実態を分析し考察した。これらの研究を「人間-環境系」の視点からまとめると,環境移行に伴う在宅高齢者の生活リズムは身体機能の回復により徐々に整ってはいくがばらつきがあること,障害受容など心理的な側面の回復には時間を要し療養生活の初期に継続した支援が必要であること,介護をする家族は療養者の生活リズムに影響を受け十分な睡眠がとれていないことなど,生活環境と生活リズムは相互に影響を受けあっていることが把握できた。本研究の成果から示唆された諸課題について,今後さらに研究を発展させていきたい。