著者
森田 健 津村 有紀 若村 智子 福田 裕美
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、健康で快適な生活を確立する上で重要な食事内容と受光履歴の関係を、メラトニン分泌リズムを代表とするサーカディアンリズム及び睡眠への影響の観点から明らかにすることを目的とした。33名の男子大学生被験者を、高・低トリプトファン朝食と日中の高・低照度光環境を組み合わせた4グループに分け、それぞれの条件下で5日間過ごした場合の、メラトニン挙動と睡眠評価を比較した。高トリプトファン食の朝食と高照度光環境は、夜間のメラトニン分泌挙動に大きく影響し、分泌量の増加又は分泌位相の前進が示唆された。この事は、サーカディアンリズムを是正し、睡眠障害を始めとする健康問題の解決につながる可能性を示すものである。
著者
山下 舞琴 堀田 佐知子 長島 俊輔 東條 千章 若村 智子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1_19-1_28, 2018

本研究の目的は,冬の日照時間が短い地域に住む高齢者の冬と夏の睡眠に関連する要因を明らかにすることとした。京丹後市高齢者大学の受講生149人に,質問紙調査(睡眠:ピッツバーグ睡眠質問票,気分:感情プロフィール検査,他)を冬と夏に行い,分析した。夏の睡眠時間は,冬に比べ有意に短く,睡眠困難の得点が高い傾向があり,さらに夏の活気と疲労の得点は有意に高かった。冬に会話を毎日する人の割合は,夏に比べ有意に少なかった。重回帰分析の結果,外出頻度,疲労,精神疾患などが冬の睡眠に,会話頻度,緊張-不安,消化器疾患などが夏の睡眠に,影響を与えていた。降雪地帯であったが,冬の日常的な外出が,よい睡眠を導くための具体的な指針の一つとして示唆された。また,冬に疲労が,夏に緊張が強い人には,睡眠障害も念頭においてかかわる必要があるかもしれない。このように,冬と夏によって適切な睡眠の指導が異なる可能性が示された。
著者
柴田 真志 若村 智子 柴田 しおり
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の主たる目的は、起床時体温低値児童の日常身体活動量、就寝時メラトニン量、体温日内リズムなどの特性について検討することであった。本研究で明らかになった主な結果は、次の通りである。1)朝型夜型得点は、早寝早起きや身体活動量と相関関係が認められた。2)身体活動量が多い歩数高値群の体温日内リズムは、起床時と就寝時に差がなく、昼が有意に高かったが、一方歩数低値群は、起床時が昼および就寝時に比べ低値であった。3)日歩数と就寝時メラトニン量の間には、有意な正の相関関係が認められた。4)日歩数とΔ体温値(起床時体温-就寝時体温)の間には正の相関関係が認められた。したがって、日歩数が高値であるほど、起床時に比べて就寝時の体温が低く、睡眠導入が容易であると推察された。5)起床時体温低値児童の夜間体温変動を観察したところ、一般児童に比べ、夜間最低体温時刻が朝方に後退していることが認められた。6)夏の体温(全対象者の平均値)は、冬に比べて起床時、昼および就寝時ともに高かった。冬の日歩数が夏に比べて8,000歩ほど低下した児童もまた同様な傾向であった。しかしながら、冬の日歩数が夏に比べて増加した上位11名(4,500歩ほど増加)の児童では、冬の起床時体温の低下が抑制され、夏と有意な差は認められなかった。以上のことから、日常身体活動量は、体温の日内リズムに影響を及ぼす可能性が示唆された。低い身体活動量によって、就寝時メラトニン量が低値で、就寝時体温に十分な低下が見られず、夜間最低体温時刻が朝方に後退した結果、起床時体温が低値である可能性が考えられた。
著者
米田 守宏 大石 正 村松 加奈子 若村 智子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

(1)屋外において、被験者を用いて背中を太陽光(紫外線)曝露する場合と衣服により紫外線防護する場合を比較することにより、紫外線の影響について検討した。3時間の紫外線曝露グループでは、NK細胞の活性が低下しIL-6が増加するなど免疫系への影響が認められた。太陽光曝露中では、交感神経を優位にさせ、曝露終了後には体温の放熱がより高くなり、紅斑が有意に高くなった。同様の実験を香港において香港人を被験者として実施し、日本人と香港人の結果を比較検討した。(2)人工的条件による紫外線の影響を知ることを目的として、被験者実験を行った。バイタライトを光源としてUVカットフイルムの有無による効果について免疫機能、自律神経系、主観的評価に関して計測した。本実験では、免疫系や自律神経活動には有意な差は認められなかったが、夜間の睡眠構造の分断化が認められ、生体への影響が伺われた。(3)ヘアレスマウスを用いて紫外線が動物の活動や体温リズム、免疫器官、内分泌器官へ与える影響について検討を行った。光強度が小さいため免疫器官や内分泌器官への影響は明瞭ではなかったが、活動リズムに関しては、紫外線が活動を抑制し、リズムが明瞭になる傾向が認められた。(4)日本(奈良)と香港において屋外の紫外線(UVB,UVA)量、全天日射量の経時的観測を行ない、取得データからその季節変動を調べた。UVB、UVA,全天日射量は1.7〜4,1.1〜1.7,1.2〜2.1倍だけ香港が高かった。これら放射量と緯度、オゾン量等との関係を調べた。(5)UV強度法測定装置を用いて衣料用布の紫外線防護性を評価した。UV透過率に及ぼす測定条件の検討、および、布構造の影響(厚さ、重さ、空隙率)に関する検討を行った。光ファイバ型紫外/可視分光器を用いた装置を試作し、各種繊維素材からなる白色布および染色布の分光透過率および分光反射率を測定した。
著者
宮島 朝子 堀田 佐知子 大島 理恵子 若村 智子 近田 敬子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,健康レベルの異なる在宅高齢者を対象に,生活環境と生活リズムの実態を把握し,それらの関係性を「人間-環境系」の視点から分析することを目的として,平成14〜16年度の3年間にわたって行った。調査は2つの方向で進めた。一方は病院から在宅への環境移行に伴い,「在宅療養者」の生活リズムや心理・社会的な側面がどのように変化していくかを追跡した調査である。対象者の選定はH県内のリハビリテーション系病院の回復期病棟に依頼し,同院を退院した男女4名を対象として調査を行った。その内1名については,月1回1週間のデータ収集を行い,退院後4ヶ月間にわたる経過を追うことができた。もう一方は「在宅高齢者」,即ち自宅で健康的な生活を送っている高齢者の,生活リズムの実態を把握した調査である。対象者はH県立看護大学の「まちの保健室」の来談者の内65歳以上の男女9名と,A町睡眠を通じた健康づくり支援事業において,睡眠に関する個別支援が必要とされた8名の計17名を対象とした。これらの調査をもとに,報告書冊子は「在宅療養者」では,以下の3つの方向からまとめた。第1は4ゲ月間にわたってデータ収集を行った在宅療養者1事例について,病院から在宅への環境移行に伴う生活リズムの実態を分析し考察した。第2は同じ対象者が遭遇した住宅改修に焦点を当て,看護の視点からの改修に対する提案をまとめた。第3は同じ対象者とその介護者の夜間睡眠と心身機能の実態を分析し考察した。これらの研究を「人間-環境系」の視点からまとめると,環境移行に伴う在宅高齢者の生活リズムは身体機能の回復により徐々に整ってはいくがばらつきがあること,障害受容など心理的な側面の回復には時間を要し療養生活の初期に継続した支援が必要であること,介護をする家族は療養者の生活リズムに影響を受け十分な睡眠がとれていないことなど,生活環境と生活リズムは相互に影響を受けあっていることが把握できた。本研究の成果から示唆された諸課題について,今後さらに研究を発展させていきたい。