- 著者
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塚本 栄美子
- 出版者
- 佛教大学歴史学部
- 雑誌
- 歴史学部論集 (ISSN:21854203)
- 巻号頁・発行日
- no.7, pp.19-36, 2017-03
17世紀後半にイングランド、オランダ、ドイツ語圏などヨーロッパ各地にフランスから離散した改革派信仰難民たちのなかには、最初の亡命地にとどまったものもいれば、さらに大西洋を渡り南北アメリカ、あるいは南アフリカへと渡っていったものもいた。世界史上、彼らが、ディアスポラ先の社会や歴史にいかなる影響を与えたのかという問いは古くて大きな問題である。その答えとして、ある時点から「ホスト社会の発展に貢献」したという言説が実態にかなっているか否かとは別に、広く語られるようになる。とりわけ、大量のユグノーを受け入れたドイツ諸領邦、なかでもブランデンブルク・プロイセンではその傾向が強くなる。こうしたイメージは、ユグノー自身が記した歴史叙述が出発点となっており、彼らのアイデンティティの核をなす集合的記憶の重要な要素となっている。本稿では、その核となる物語を提供した歴史叙述とユグノーたちのおかれた状況の変化を対応させながら、彼らの集合的記憶の形成を概観し、今後の課題を提示する。フランス系改革派信仰難民(ユグノー)集合的(集団的)記憶ベルリン