著者
原田 敬一
出版者
佛教大学歴史学部
雑誌
歴史学部論集 = Journal of the School of History (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
no.8, pp.19-38, 2018-03

第七師団歩兵聯隊の上等兵が、従軍中に書き続けた日記の翻刻。氏名不詳。召集まで北海道焼尻島警察分署に勤務していた警察官。従軍中に伍長に任じられ下士官となった。記録の期間は、一九〇四年一一月一三日大阪港を出発し、奉天会戦などに参戦し、一九〇六年二月一八日三台子から「凱旋ノ途」につき、二八日神戸港に着くが上陸許可されず、三月三日室蘭港に入港、市民数十万人の歓迎を受け、帰国。一六日増毛に入港して、故郷の歓迎を受ける一八日までの日誌である。休戦協定以後の隊内娯楽の記述は珍しく、また講和成立に対する聯隊長と兵士の差が面白い。今回は、二回連載の前半部になる。日露戦争従軍日記歩兵聯隊乗馬歩兵隊第七師団
著者
青山 忠正
出版者
佛教大学歴史学部
雑誌
歴史学部論集 = Journal of the School of History (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
no.10, pp.43-56, 2020-03

慶応三年十二月九日、「王政復古」の政変が起きた。これにより、「摂関幕府等廃絶」が宣言され、公家・武家双方の旧制度が廃止されたのである。この政変については、薩摩藩及び長州藩の主導によるとの印象が、一般的には強いようだが、現実の政局運営においては、必ずしも有力とはいえないような諸藩の勢力が、多数意見を形成し、政局の動向を根底の部分で規定していた。本稿では、このような諸藩の見解を公議ととらえ、新発田藩を事例として、政局との関わりを明らかにする。公議王政復古新発田藩京都留守居窪田平兵衛
著者
門田 誠一
出版者
佛教大学歴史学部
雑誌
歴史学部論集 = Journal of the School of History (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-18, 2018-03

本論では魏志倭人伝にみえる魏から卑弥呼に下賜された物品のうち、「五尺刀」について、漢代を中心とした鉄刀の銘文に尺の単位で表現される類例から、五尺刀の長さを推定する。また、刀銘には吉祥句などが記され、佩用する者を寿ほぐという目的があるとともに、史料・文献から臣に対する寵愛や死後の追悼の際に下賜され、匈奴に対する事例に示されるように蛮夷に対して与えられた。刀剣の長さである尺寸に関しては、漢代から南北朝にかけて、尺を単位とし、文化・教養に依拠したいわば人文的類型の表現であり、尺刀が官吏の用いる文房具的な利器であるのに対し、七尺刀が軍事的権威や個人の勇武を可視的に表徴し、五尺刀は佩刀としては一般的なものではあるが、南北朝期の歌謡にも所有が切望されることがみえ、南朝・梁では有銘の五尺刀そのものの発現が吉祥とされた。このように五尺刀を含む刀剣は、吉祥句を銘すことによって佩用者を寿ほぎ、あるいは有銘の五尺刀そのものが祥瑞であり、また、これを黄金ともに下賜品することは漢代以来の系譜を引くことを示した。五尺刀卑弥呼魏志倭人伝銘文刀剣