著者
丁吉之 寺田努 塚本昌彦
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.2-9, 2014-07-02

ウェアラブルコンピューティングシステムは様々な状況下での利用が考えられ,システムを取り巻く環境は頻繁に変化する.そのため,システムを利用しているユーザの行動,および周囲の環境と使用する情報提示デバイスの組合せによっては,ユーザの情報支援の認知に影響を及ぼす可能性がある.例えば,屋外でディスプレイを使用しているときに周囲が明るくなると表示が見づらくなるというように,ユーザの作業の妨げになったり,場合によってはユーザを危険に晒す恐れがある.そこで筆者らの研究グループでは,システム障害時にユーザが装着しているデバイス同士が直接データ通信を行うことで情報支援を継続し,システムの信頼性を確保する手法を提案してきた.本研究では,ウェアラブルコンピューティング環境の例として着ぐるみ装着者支援システムに提案手法を導入し,HMD,スピーカ,振動モータの3種類の情報提示デバイスを実装した.また,ユーザの行動,周囲環境と提示デバイスの組合せと情報提示の認知度との関係を調査した.
著者
双見京介 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.4, pp.1-8, 2013-03-07

自分の髪の毛を自分自身で散髪することは難しい.伸びた髪を散髪する場合には美容室や理容室,床屋といった専門家のいる場所へ行くのが一般的である.しかし,髪質も顔も趣味も異なる専門家に各個人が抱く髪型の悩みや理想のイメージを伝えることはうまくいかないこともある.こういったことに対する不満や,その他の好奇心や目的によって自分で散髪したいという欲求,動機が生じることがある.しかし,本研究でヘアセルフカットと呼ぶこの行為を実行するためには,技術面や環境面においていくつかの課題が存在する.本研究では,ヘアセルフカットを現状の道具や環境でおこなった場合に課題となる 「目では見えない範囲の映像の取得」 に重点を置き,自分の目では見えない範囲をカメラで撮影し,その映像を見ながらヘアセルフカットを行うシステムを提案する.評価実験により提案システムの有効性を確認した.
著者
磯山直也 ウォーリー木下 出田怜 寺田努 塚本昌彦
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.168-179, 2014-09-12

本稿は,参加型演劇YOUPLAYの概要,システム構成,公演を通じての考察について報告する.YOUPLAYとは,一般の参加者が演者となり,決められた物語の中で役を演じる舞台となっている.舞台は床一面壁一面に映像が投影されており,舞台の天井にカメラを仕込んだり,参加者がセンサを身に着けることによって,映像や音声がインタラクティブに変化し,参加者は物語の中に没入して演じることができる.YOUPLAYはこれまでにYOUPLAY Vol.0(03/20–24,2013)とYOUPLAY Vol.1(11/16–24,2013)の2度,大阪梅田のHEP HALLにてそれぞれ全40公演ずつ行なっており,参加者の様々な反応を見ることができた.参加者からは自由記述のアンケートも得ており,「楽しかった」「またやりたい」などといった感想が多く見られた.
著者
寺田努 岡崎辰彦 塚本昌彦
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1386-1393, 2014-07-02

現在,着ぐるみはテーマパークや様々なイベントで頻繁に利用されている.着ぐるみは仮想キャラクタを現実世界に登場させる役割をもつため,着ぐるみ装着者は扮したキャラクタらしく振る舞うことが重要となる.しかし,着ぐるみは体の大きさが人間と異なっていることが多いため,着ぐるみ装着者が周囲にある障害物を避ける際に装着者自身と着ぐるみの大きさの違いを意識しなければならず,直観的に障害物を避けることが困難である.そこで本研究では,着ぐるみ装着者のための拡張現実感を用いたオブジェクト拡大提示に基づく障害物回避手法を提案する.この手法を用いることで,装着者は装着者自身と着ぐるみの大きさの違いを意識せずに周囲にある障害物を自然に回避できる.評価実験の結果から着ぐるみ装着者が障害物を避ける際に提案システムは有効であると確認できた.
著者
奥川遼 村尾和哉 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2014-MBL-71, no.16, pp.1-8, 2014-05-08

近年,健康意識の高まりを背景に自転車を利用する人が増えており,特にスポーツとしての自転車の利用に対する関心は年々高まっている.サイクルスポーツにおいて高いパフォーマンスを発揮するには,競技用自転車特有のペダリングスキルが要求される.サイクルスポーツでは回転数が高くかつ回転速度の揺らぎが小さいペダリングが理想とされているが,メトロノームの音を用いた従来のトレーニング方法では単位時間あたりの回転数を一定にすることはできるが回転速度の揺らぎについては評価できない.サイクルスポーツ熟練者のペダリング技術は長時間のトレーニングによって形成されるため,初心者が一定で揺らぎが小さい回転速度でペダリングする技術を習得することは容易ではなく,イメージを共有しにくいため指導も困難とされている.そこで本研究では,聴覚情報による引き込み効果を利用して,ユーザがペダリングの回転速度を一定にすることを意識することなく,半無意識的にペダリングを誘導することで,サイクルスポーツ初心者のペダリングスキルの上達を支援するシステムを設計および実装する.実装したシステムを用いて行った実験の結果,従来のケイデンス計で回転数のみを提示した場合と比較して回転速度の分散値が 3 つの提案手法でそれぞれ 46.7%,68.6%,58.8%減少したことから,提案システムによって非サイクリストのペダリングスキルが向上することを確認した.
著者
磯山直也 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2013-HCI-153, no.6, pp.1-8, 2013-05-17

近年,インタラクティブシステムのためのユーザ行動認識手法が多数提案されている.情報提示システムがインタラクティブになることで,観客はシステムを自らの体で経験して楽しむことができ,システム提供者もより豊かな表現をすることができる.ユーザ行動には様々なものがあるが,システム設置の制限などの理由により,既存のシステムは特定のアクションの認識に特化しているものがほとんどである.本稿では,平面に複数の加速度センサを装着することで,行われたアクションの位置や強さを認識する手法を提案する.小型の加速度センサのみでシステムを構成することにより,デバイスが目立たずに,汎用的に設置することが可能である.これまでに2度の長期的なメディアアートでの使用を通じて,提案手法の有用性を確認した.
著者
片山拓也 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.6, pp.1-6, 2013-03-06

近年,携帯電話や電子メールの普及に伴って手書きの機会が激減したことで,人々が自らの漢字力低下を実感するようになった.コンピュータでは,読みが分からない文字の入力を補助する機能として,手書き文字入力システムが開発されている.しかし,それらはいずれもポインティングデバイスを用いたシステムで,文字入力デバイスとして最も普及しているキーボードは読みが分からない文字の入力をサポートしていない.そこで,本研究では,キーボード上で指を滑らせて行うストローク操作を用いることで,キーボード使用時に漢字検索が行えるシステムを提案する.提案システムは,ストローク操作と文字入力操作を自動で識別する機構,ストローク操作によって入力された形状を認識する機構を備えており,認識されたストローク形状を元に入力漢字を推定する.被験者実験を行った結果,提案システムのアルゴリズムによってストローク形状の認識が有効に動作することを確認した.
著者
渡邉拓貴 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2013-UBI-39, no.9, pp.1-8, 2013-07-24

ウェアラブルコンピューティング環境では,装着型センサを使った状況認識に注目が集まっている.一般的に用いられるセンサは加速度センサやマイクだが,前者は複数のセンサのデータを統合するために通信を行う必要があり,後者は音のみに頼っているため実際にそのユーザが関係している音なのかが分からない.そこで本研究では,超音波によってユーザの行動,周囲に居る人,現在居る場所などの情報を取得し,ボイスレコーダなどの音声記録に埋め込む手法を提案する.ユーザはマイクと超音波を発する小型スピーカを装着し,これらの距離を表す音量の変化と,ジェスチャの速度を示すドップラー効果を利用してジェスチャを認識する.また,環境や人に超音波 ID を発信する小型スピーカを装着することで,ユーザがどこにいたか,近くに誰がいたかという情報も同時に記録する.これにより,会話音等の環境音,ジェスチャ,ユーザのいた場所,会った人物のデータすべてがマイクのみで記録できる.提案手法では他者による環境音が無い場合,平均 86.6% の精度で認識でき,他者から発せられる環境音がある場合,平均 64.7% の精度で認識できた.
著者
片山拓也 村尾和哉 寺田努 塚本昌彦
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.901-908, 2011-06-30

近年のコンピュータ小型化に伴い,ウェアラブルコンピューティングに関する注目が高まっている.ウェアラブルコンピューティング環境では,携帯性や装着性の観点から小型の入出力デバイスが望まれる.一般に,コンピュータへの入力デバイスとしてはキーボードが広く普及しており,多くのユーザがキーボードの入力に慣れ親しんでいる.しかし,ウェアラブルコンピューティングのためのキーボードの単純な小型化は,キータッチのしやすさなどのユーザビリティに影響をあたえるので限度がある.そこで本研究では,ユーザが既に体得しているキーボード入力の能力を活かすために,既存のキー配列をそのままにしながらキーボードを左右に分割し,どちらか一方のみを装着して用いる手法を提案する.提案手法では,単語の切れ目毎にキーボード半分の打鍵情報から入力単語を推測する.提案手法を用いることで,従来のキーサイズと入力動作を最大限に保ったままキーボードの大きさを半減できる.
著者
磯山直也 寺田努 塚本昌彦
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.7, pp.1-6, 2012-07-07

近年,インターネットの普及等により情報過多が問題視されており,適した情報をすぐに取得することや重要な情報を見落とさないことが困難になっている.一方,ウェアラブルコンピューティングシステムへの注目とともに,ユーザの行動や状況を認識し,状況に合わせて適切に情報を提示する手法が数多く提案されている.このようにユーザはいつでもどこでも情報を閲覧することが可能となってきているが,提示情報以外の情報取得を補助することや,実世界上の偶然的な出来事に気付くことのできるようなシステムはこれまでに存在していなかった.本研究では,先行する事柄が後の事柄に影響を与えるというプライミング効果を利用し,ユーザの関心事に関連する視覚情報を常時閲覧させることにより,無意識的に特定の情報に気付きを与えるシステムを提案する.本稿ではまず,聴覚情報を取得することに対する視覚情報の補助的効果について予備調査を行なった.予備調査の結果から視覚情報を与えることによって,聴覚情報取得において影響があるユーザがいることを確認した.また,ユーザが関心事に関する視覚情報が得られるよう,画像や動画を提示するシステムを実装した.