著者
塩川 佳伸 李 徳新 山村 朝雄
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

劣化ウランは全世界で120万トンを超える膨大な保管量があり、その有効利用法の開発は重要な課題である。ウランはIII価とIV価、V価とVI価の組み合わせにおいて電極反応が可逆であることは、アクチノイド固有の化学的性質である。このことを利用すれば、実用化しているバナジウム電池を超えるエネルギー効率を持つレドックス,フロー電池の構築が期待できる。平成15年度にはエネルギー効率の理論的検討を進め、バナジウム電池では、正極反応VO_2^++4H^++e^-→VO^<2+>+2H_2Oは酸素の脱着を伴う遅い内圏反応であるため、電流密度70mA/cm^2での充放電サイクルにおいてエネルギーの16%が活性化過電圧により失われる。これに対してアクチノイドでは両極反応は高速であり、活性化過電圧によるエネルギー損失はネプツニウムの場合2%にとどまる。実際に、ネプツニウム電池を製作して充放電試験を行い、エネルギー効率の高さを実証した。平成16年度には、ウラン電池セルを実際に構築し、U(V)を正極液、U(IV)を負極液とするウラン電池の動作を確認し、展示用モーターの回転に十分な電圧・電流を得られることが確認できた。その一方で、放電状態におけるウラン(V)錯体、充電状態におけるウラン(III)錯体の濃度は数時間程度の半減期で自然に減少し、ウラン錯体の安定性が十分とは言えないことも明らかとなった。そこで、平成17年度には、ウラン(V)およびウラン(III)錯体の検討を進め、半年を超す半減期をもつウラン(V)錯体溶液を調製することに成功した。また、ジアミドを配位子として有するウラン(III)錯体の調製に成功し、溶液中のIII価状態の半減期11時間の間に、U(IV)/U(III)の電極反応の検討を行うことに成功した。
著者
白崎 謙次 門傳 陽平 山村 朝雄 塩川 佳伸
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集 2005年春の年会
巻号頁・発行日
pp.461, 2005 (Released:2005-05-24)

我が国の原子力発電から派生する劣化ウランの量は膨大であり、高速増殖炉のブランケット燃料として保管されているが実用の見通しは立っていない。核的性質以外の用途による有効利用法の開発は重要な課題である。軽アクチナイドは構造変化のない2組の可逆な酸化還元対を有しており、電池活物質として用いることによりエネルギー効率の高い電池の構築が期待できる。我々は劣化ウランについて、電力貯蔵用レドックスフロー電池の活物質としての利用を検討している。放電状態のウラン電池の正極溶液はウラン(V)溶液であるが、ウラン(V)は不均化反応によりプロトン存在下において不安定であるため、非プロトン性溶媒を用い研究している。安定なウラン(V)を得ることは、電池の高い容量維持性と容量回復性を実現する上で重要であるが、酸化状態の安定性についての知見はほとんどない。そこで、ウラン(VI)錯体の電解還元により調製したウラン(V)溶液を用い、分光学的手法により経時安定性を観察し半減期により評価した。