著者
塩谷 惇子
出版者
清泉女子大学
雑誌
清泉女子大学紀要 (ISSN:05824435)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.61-85, 2002-12-25

キリスト教は世界平和に貢献できるのだろうか。宗教そのものに問題はないかという問いが、アウシュヴィッツを経験したヨーロッパのキリスト教徒にとって深刻な問題であることをイスラエルに滞在中私は感じ取った。現在、世界平和の大きな焦点の一つである中東の政治状況をみると、10年前には、ユダヤ教とキリスト教の歩み寄りが積極的に行われていたかのように見えたことが、やはり表面上の動きにすぎなかったのかと思わざるを得ない。1993年9月にはノルウェーを仲介としてイスラエル・パレスチナ和平交渉が成立した。その年の12月末には歴史上はじめてイスラエルとバチカンとの間に国交が回復した。その頃、私は研究休暇でエルサレムのラティスボン・ユダヤ教研究所に滞在していた。翌1994年2月の初め、エルサレムで「現代社会と科学技術の挑戦に直面するユダヤ教徒とキリスト教徒の国際大会-世俗社会における宗教的リーダーシップ」(The International Jewish/ Christian Conference on Modern Social and Scientific Challenges-Religious Leadership in Secular Society)が開催された。この大会には世界96カ国から約500名が集まったが、私は傍聴人としての参加がゆるされ、そこでユダヤ教各派、キリスト教各派のリーダーの話に接することにより、諸宗教間対話の必要性を痛感した。