著者
増田 佳苗 赤木 剛士
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.23-29, 2021-01-01 (Released:2022-01-01)
参考文献数
26

「性」は動植物を問わず,遺伝的多様性を維持するための根幹機構である.しかし,動物に代表されるような画一的な性決定システムとは対照的に,植物は,祖先型である両全性から系統独立的に何度も性の成立・逸脱を繰り返してきた.植物の遺伝的な性に関する研究は100年以上に及ぶが,性別決定因子はまだ数えるほどしか発見されておらず,その制御機構や進化過程も多くが謎に包まれている.いまだ黎明期にある植物の性決定研究であるが,そのシステムの多様性のなかにあって,植物特異的な性質や歴史から垣間見える「一般性」も確かに存在するようであり,本稿では,植物性決定因子の発見に関する最新の知見の中から,その多様性を駆動する仕組みについて考える.
著者
増田 佳苗
出版者
岡山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

作物の性表現は栽培・育種において考慮すべき最重要形質の一つである.カキ属の野生二倍体種は画一的な性別を示す, 一方で, 六倍体の栽培ガキはこの性表現に揺らぎを持ち, 雌花・雄花両者の着生や両性花の派生が見られる. しかし,この性表現の不安定性を統御する遺伝的・環境的要因はこれまで全く理解されておらず, 本研究ではその機構解明を目指す. 本研究は,多様な性表現を制御する技術開発を目標とするだけではなく, 同時に, ゲノム倍化が駆動する性の揺らぎの進化過程を明らかにするものである.